2
何でこの青年は
今迄オレに声を掛けて来た人間には、腹に抱えた物が似通っていた。
明らかに家も家族もない“可哀想な少年”であるオレに対する同情。
そんな“可哀想な少年”に対して、整った服、あたたかな家、やさしい家族が居る事に対する優越感。
“可哀想な少年”に声を掛ける事で、「私ってやさしい!」という自己満足に浸りたいという欲求。
だけど青年からそうした企みは一切感じられない。
慈善事業を
慈善事業の団体様だったら、もっと胡散臭い言葉を掛けてくるし、薄っぺらい笑顔を貼り付けている筈だ。
だとしたら、何で?
見ての通りオレが金なんて持っているワケもないし、わざわざ話し掛けるメリットなんてないだろうに。
「次はオレから質問。良いかな?」
1度気になってしまっては、もう、無視出来なかった。
一応質問の許可を取れば、青年は深いグリーンの両眼を軽く見開いて驚きを露わにした後、やれやれと言わんばかりに肩を竦める。
呆れられたかな、と一瞬思ったけど、そうじゃなかった。
「へぇ。だんまりを決め込んでいたから
やだやだと言わんばかり調子で言い放つ青年に、オレは思わず内心でツッコんだ。声に出さなかっただけ褒めてもらっても良いと思う。
だって此の青年、どこからどう見ても、少なくとも
100歩譲って童顔なだけでハタチは迎えていたとしても、10歳以上離れているなんて事はなさそうだ。
……これ以上オレの頭上に疑問符を増やさないでほしい。
とは言え黙り込んでいて疑問が解決するワケもないし、オレは青年から拒否の返事がなかったのを質問の許可と判断して、切り出す事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます