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でも両親の思惑はどうあれ、雨風凌げて、食事に困らない生活というのは其れなりに恵まれていたんだろう。
別に裕福な家庭だったワケじゃない。だけど明確に捨てられてから、オレの生活は正に一変したんだから。
雨風を凌げていた屋根はない。
食事は自分で何とかする他ない。
オレの服は簡単に汚れたし、ゴミを漁る事を覚えるのも早かった。
両親が家に置いてくれた数年は、オレから純粋さを確かに奪っていた。だって其の頃には両親に捨てられた事は、別に絶望でも何でもなくて。
ああ、遂に此の日が来たんだな、とさえ思った程。
だから、両親に捨てられた、死のう、とは思わずに、空腹の本能に任せてゴミだって漁っていたんだと思う。
そんな生活を、見た目にはまだまだ少年といった年齢のオレがしている所為で、不要な同情を買ってしまった事については不愉快この上ないけど。
そう。
今でも同情は金を貰ってもされたくないし、自己陶酔の道具にされるのも御免だ。
この生活を始めたばかりの時は、今では何も感じないけれど、通行人から投げられるどんな感情にも、どんな視線にも
だから。
オレは眼前の青年を、じっと見つめる。
好感を抱く事なんて、此の青年が正真正銘、初めてである。
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