当時のオレについて語るのなら、“まだまだ子供だった”と言うのが1番適切だろう。今は年を重ねて、世間一般には子供とされる年齢でも、それなりに分かっている事がある。

 でも当時のオレは何も分からなかったから、自分で自分の首を絞める様な真似も平然とやってのけていた。


「自分で言うのも変な話だけど。オレの外見は凄く整ってるみたいでさ。その整い方が“度を越してる”って言われたんだ。人間を堕落させる魔のモノみたいだ、って」


 今ではサキュバスやインキュバスに代表される魔物の類をよく知っているし、悪魔は人の油断を誘うため、取っ付き易い見た目をしていたり、判断を鈍らせるように整った顔を見せるというのも知っている。

 だけど其の時のオレは知らなかった。だからオレが笑ってみせるだけで周囲の大人が怯えているなんて、夢にも思うワケもなく。


「それと此れもまた、自分じゃ言い難い話だけど頭の出来も凄く良かったんだって。其の年不相応っぷりに誰かが言いました。コイツは悪魔か何かと契約しているに違いないって」


 これもまた、今なら分かる理屈だ。

 悪魔の類と契約を結んで莫大な能力を得た人間は居るらしいし、悪魔はそうした“蜜”をちらつかせては人間に破滅をもたらすと恐れられている。

 少し頭が良いだけなら自慢の息子にもなれただろうに、子供だったオレは匙加減さじかげんを物の見事に間違えてしまったのだ。


「だけど子供と言うよりはガキだったオレは、そんな事に思い至れなかった。もう少し歳喰ってれば、歳相応の振る舞いっていうのを覚えて、それなりに自制出来たんだろうけどさ。周りが後ろ指指すほど出来が良くても、所詮其の時のオレは2歳くらいのガキだったんだよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る