Ⅱ.魔のモノの子供

 普通の人型。

 とは言え、其れにしては少し青年の纏う威圧感は凄い。

 偉そうにしているでないのに、周りの人間が何歩か退いてしまう様な、ともすれば頭さえ下げてしまいそうな。

 そんな威圧感がある。


「オレはね、親から見捨てられたんだよ。普通の家に生まれて、普通に暮らして、普通に死ぬ。でも其れは、生まれた瞬間に破綻した。オレは普通から“大きく逸脱”してたみたいでさ」


 その威圧感をオレは悟ったから。

 だから自分で言っておきながら、どこか妙にも思えた。

 此の人の前では、オレの過去なんて子供騙しに過ぎないんだろう。


 生まれ故郷と呼べる様な場所で、住人全員はオレの持つ物を怖がった。

 でも其れ等は、此の青年を前にすれば容易にかすんでしまう子供騙しなのだと、理由も無く、根拠も無くオレはただ、そう“感じた”んだ。

 さっき此の青年は、オレが雪の中ぼろぼろの服を纏って、道端で蹲っている理由を「選択肢は幾つか浮かぶものの、決定打に欠ける」と語っていたけど、本当は全部分かっていそうだ。

 其の決定打さえ持っていそう。


 そう思ってもオレは、話すのを止めようとは思わなかった。

 自分の身の上話をして同情を買いたいワケじゃない。同情なんて御免だ。金を貰ったって受け取りたくない。


 ただ、そう。

 単純に、此の人が気になったんだ。

 掛けられる言葉全部無視していたし、興味も無かったのに。根負けする事だって無かったのに。


 オレを根負けさせた此の人の事が。


 だからもう、目の前の青年がオレの事情を知っているかどうかなんて、如何でも良かったのかもしれない。

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