15
15
「………………、眠ってたか。」
「起こしちゃったみたいですね。」
「俺、いま、夢見てたわ。未来から小学生がやって来て、お仕置きたら、なんたら、夢みたいなこと言い始めて……。」
「……それって、僕のことじゃないでしょうか。」
「・・・あれっ、夢じゃないのか。……そーか、そーか……子孫君、久し振り。」
「昨日も来たんですけど。」
「そうだったかな?ふーーーん、んんんん……」
「……ご先祖さん、ご先祖さん! 眠ちゃったんですか?」
「……、お、おう。寝てたか・・・。副作用も老化には勝てんってことか。」
「大丈夫ですか?ここんとこずっと、元気ないみたいですけど。」
「ああ、さすがに体力もほとんどない……気力だけで生きてるようなもんだ。その上、気になってることが・・・・・・・・」
「………ご先祖さん!」
「えっ、あああ。」
「また、寝ちゃったかと思いました。」
「そ、そうか。で、なんだったかな?」
「気になってることがあるとか……」
「ああ、それだ。………………、あのよお、一つ、あやまっといた方がいいんじゃないかって、思ってることが、あるんだわ。気にしてなかった、わけでもないんだが……、仕事が楽しくて……」
「?」
「めんどくさいことは、考えないようにしてきたからなあ、ここんところずっと。……俺が百%悪い、ってわけじゃないとは、思うんだが……やっぱ、責任は俺かな?……すまん。」
「何ですか、急に改まって。」
「お前達の生活が、変わらないのって、もしかしたら、俺の子がいないから、じゃないか、って気がするんだ。俺、結局結婚しなかっただろ。・・・・・・ん?待てよ。そーか、そうすりゃいいんだ!子孫君!」
「な、何ですか。ヒキガエルが踏みつぶされた時みたいな、大声出して。」
「・・・ん?ヒキガエルが?何だそれ?」
「……、えっと、比喩です。合ってますか?」
「…………、そうか、国語、勉強してるんだ。嬉しいぜ。……お前の人生にもちゃんと時間が流れてるんだな。」
「いい成績とって、パパとママが帰って来たら、びっくりさせるんです。」
「そうか、いい子だな、お前は……」
「ご先祖さん、それで、さっき何て言おうとしたんですか?」
「お?ああ、そうだった!・・・いいか、俺の最後の頼みだ。よーく聞け。……昔の俺に、会いに行け。……友枝さんがいい。あの頃の、俺に、会え。友枝さんに振られてから、俺は、仕事人間一直線だった気がする。……だから、あの頃だ、あの頃しかない。」
「友枝さんて、トモちんって呼んでね、って人ですか?」
「そうだ、そのトモちんさんだ! とにかく俺に会って、……結婚しろ、と、言うんだ。お前が言うことに、耳なんか貸すんじゃない、ってな。……やっちまうんだぞ、ってな。い、いいか、お前たち子孫全部の、未来が、かかってるんだ。とにかく説得しろ。やっちまいさえすりゃあいいんだ。分かったか?……何が何でも……何でも、やっちまえと。」
「やっちまうって、結婚をやっちまうんですね。」
「……うーん、同じような、違うような……お前に説明するのは、ちょっと難しい……………」
「……ご、ご先祖さん!」
「……………………うん?やあ、子孫君、久し振り。どうかしたのかね?」
「結婚やっちまえって、ご先祖さんに言いに行けって。」
「・・・そ、そうだ!急げ。子供ができなきゃ、お終いなんだ。」
「結婚って、子供と関係あるんですか?」
「・・・へっ?お前、今、なんつった?」
「結婚と子供は関係あるのか、って。」
「……大ありだろ。お前、どうやって、生まれてきたよ。パパとママが、だな……頑張ったから、じゃねえか。」
「はい、そうだと思います。一所懸命働いて、お金貯めて、コーノトーリに頼んで、」
「コーノートーリ?……何だそれ。」
「子供を連れてきてくれるんですよ。」
「は?ば、馬鹿か、お前。コウノトリが、何で、人間の子供を連れてくるんだよ。……鳥だぞ、鳥。小学生か、お前は。あっ、小学生だった。」
「馬鹿にしないで下さい。コーノトーリが鳥じゃないってことくらい知ってます。
・・・政府機関です。
・・・子供が欲しい大人が、預金残高証明書を添えて申請すると、子供を届けてもらえるんです。男か女か、希望する方を。そのシステム名がコーノトーリって言うんです。」
「は?へ?ほ?……ジャ何か、お前の、パパとママは、むにゃむにゃとか、しないのか?」
「なんですか、むにゃむにゃって。
・・・僕、前に、ママに頼んだんです。弟が欲しいって。そうしたら、誰にも言っちゃ駄目よっ、て言って、このシステムのことを教えてくれたんです。お金がないといけないんだって。家はお金がないから、コーノトーリに頼めないんだって。それに、パパも最近疲れてて、次は無理みたい、って言ってました。ご無沙汰とか何とか。ご無沙汰ってなにかな?」
「あは??ひ?はははははっはははっっははーーー。くっ。くくくく・・・ぐっ、げ、げええええ。」
「ご先祖さん、どうしちゃったんですか!顔、紫色ですよ!大丈夫ですか?」
「……い、いい、から。は、ハ、ヤク……行ケ!」
「は、はいっ!」
(了)
未来から来た小学生 @say37
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます