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「はーー、すまんな。もう働けん。」

「おしっこ、どうなってます?没頭してないと……」

「毛布まくってみてくれ。管がな、俺の大切な、といっても、全然、活躍しなかったんだが……、大切なアレん中に、管が入っててな、で、そいつが、ベッドの下の袋と繋がってるんだわ。だから垂れ流しでも大丈夫、ってわけ。お前、律儀に、毎日リング磨きに来てくれるけど、ほんと、もういいぞ。この老いさらばえた体じゃ、どんなに中毒状態になっても、大して関係ない。その上、抗ガン剤と痛み止めの点滴してるから、なにも感じてない。だから、来なくていいぞ。」

「僕、夏休みなんです。だから、ずっと来られます。」

「……そうか。ありがとよ。パパとママはどうなった?」

「連絡とれないので分からないんですけど、たぶんまだ、あと半年くらいは、戻れないんじゃないかと思います。」

「お前も小2で大変だなあ。すまんね、こんな先祖で。」

「いいえ、気にしないで、子孫のために頑張って下さい。」

「頑張って、って、これ以上、どうすりゃいいんだ。」

「分かりません。でも確かなのは、僕たちの生活に、何の変化もないってことです。なんでかなあ。ご先祖さん、本当に頑張りましたよね。」

「ああ、長いようで、短い人生だったが、悔いはない。我ながらよく生きた。お前が来てくれて、本当によかったと思ってる。養子にしたいくらいだ。」

「でも、何で、変わらないんだろ。」

        

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