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「最近、俺はナポレオン、と呼ばれておる。」
「何ですか、ナポレオン、って。」
「1日3時間しか寝なかったと言われている、フランスの英雄だよ。エジソンとも言われている。」
「発明王ですね。」
「違うだろう、子孫君、もう少し話の流れを読みたまえ。エジソンも1日4時間しか寝なかったと言われている。」
「ご先祖さんも、それくらいしか寝てないんですか?」
「それがだな、2時間も寝てないと思う。仕事が面白くてたまらん、というのもあるし、全然眠くならん。」
「……それって、もしかして、」
「そうだ、そのもしかして、だ。つまり、」「つまり、」
「「副作用!!」」
「って、わけだ。朝五時には、重役室に行って、隅から隅まで掃除をする。拭き掃除も欠かさずする。秘書が飾ってくれた花を活け直す。水も2日に1度換える。」
「こまめなんですね。」
「うーーん、何しろ時間が余ってしょうがないんで、華道を習った。剣山が尻にくっついてるから、立て膝で。ついでに茶道と香道と、ソーシャルダンスと日舞と、落語ってのもやったな、おっと、手品もだ。そう言えば全部知ってるんだったな。毎日会ってんだから。他に何かないかね。例えば、未来で流行ってるものとか?」
「フラフープ、かな?」
「フラフープ?なんじゃそりゃ。」
「丸い輪っかで、お腹の」
「それは知ってる。なんでフラフープなんだって、ことだよ。」
「なんでって、何ででしょうねえ。貴重な運動源だからかな。普通は、クロスワードパズルとか、ジグソーパズルとか。夜9時には国中の電源が切られて寝なきゃいけないから、完成するまでに時間がかかるので、長持ちして楽しいって、人気なんです。あと、運動系だと、ビー玉とか、けん玉、ベーゴマなんかが、定番ですね。」
「運動系って、なんで、そんなちまちましたヤツなんだ?」
「えっとですね、運動場が、ものすごく狭いんです。この時代と比べると。」
「なんで狭いんだよ。地球が擦り減っちまったとか?」
「人口が多すぎるんです。」
「ふーーん、人口問題ってのは、今の時代にもあるけどな。で、300年後の地球の人口はどのくらいなんだ。」
「4523億人です。」
「ええっ!4500億越えかよ!……、あのさ、お前ずっと昔、姉ちゃんいるって言ってたよな。」
「ええ。」
「親が2人だから、子供も2人いなくちゃとか、なんとか。」
「はい、それが?」
「国家の基本とか。」
「はい、でも、それは僕の推理ですけど。」
「推理って?」
「だって、大人2人に、子供1人だったら、次の代には人口半分になっちゃうじゃないですか。だから大人1人につき、子供も最低1人って、決まってるんだろうなって。」
「そーなるか?言われてみれば、そうだという気がしないでもないが……。だが、じゃあ何で、人が4500億人もいるんだ?減るよりも増える方を心配すりゃいいのによ。国家も。」
「そこんとこは難しくて、僕にもよく分かりません。でも、兄弟は多い方がいいですよね。」
「ああ、そう思うぜ。俺は一人っ子で随分寂しい思いをしたからなあ。もっとも、子孫君、お前が来てからは別だ。お前は俺の弟だ。ずいぶん歳が離れちまったけど。」
「僕も欲しいんですよね、弟。でも、うち、貧乏だから……。」
「……、そうだよなあ、分かるぜ。子供が2人いて、貧乏だったら、そりゃあ、3人目は考えるわな。……って、ごめん、俺、悪いこと聞いたわ。忘れてくれ。」
「いいですよ、別に気にしてません。ご先祖さんが頑張ってくれたら、僕にも弟ができるんですから。」
「おい、子孫君! ホントーーに、今度こそ、俺は、お前達子孫のために、頑張りたくなった。もうこれからは、一睡もせん。信じてくれ! だから、お前達も、俺を信じて、頑張ってくれたまえ。パパママにもそう伝えてくれ、二人でガンバレ!ってな。」
「お願いします。絶対弟が欲しいんです!」
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