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「これか。」
「はい。」
「どうするんだ。」
「えーとですね・・・・」
「なんだ、そりゃ?」
「説明書です。」
「説明書?今までそんなのなかったじゃねえか。」
「今回のは特別なんです。」
「特別って?」
「まだ開発中の製品なんです。」
「新製品ってわけか。」
「いいえ、まだ実験段階、ということです。」
「げっ、てことは、俺はモルモットか。」
「モルモットってなんですか?」
「実験に使う、ねずみみたいなヤツだよ。」
「ご先祖さんは、人間じゃないですか。」
「もののたとえ、比喩だ。とにかくだな、まだ人間には使ったことがないっちゅうことだな。」
「はい、おそらく。」
「ビンボーなお前が、何でそんな装置を持ってるんだ。」
「パパが、ちょっと、借りてきました。」
「借りてきた?」
「そ、そこは、どうでもいいじゃないですか。パパ、ものすごーく喜んだんです。ご先祖さんが、ようやく、自分からやる気を出したって。だからこのチャンスをものにしなきゃいかん、と、張り切って。で、ちょっと、借りて来ちゃったんです。」
「お前も、苦労するなあ。分かった、それ以上は聞かん。さっさと始めてくれ。」
「はい。えーと、まず、このキャップを外して・・・あれ、随分たくさんあるなあ。」
「ほんとだ、俺も手伝ってやるよ。この針から、一つ一つキャップを外せばいいんだな。それにしても、痛そうだな。ちょっと、嫌な予感がするぞ。」
「キャップをとったら、台に刺していく、っと。」
「こうか?」
「いえ、太くて丸い方を穴に差し込むみたいです。尖った方が上です。」
「うーーん、どっかで見たことがあるような。」
「・・・出来ました。えっと、名前は、お仕置きケンヤマ。」
「それは、ケンザン、って言うんだと思うぞ。コイツを俺に刺すのか。」
「いいえ、違いますね。針の方を尻側にして、お尻に当てろ、って書いてあります。そうすると自然にくっ付くみたいです。」
「座れないじゃん。ということはだな、いつかのラケットと同じタイプだな。おれさあ、そろそろ体力下り坂じゃん、それ、辛いんだよなあ。」
「ごめんなさい、でも、これしかないんです。」
「あれ、でもさあ、今まで、お前、お仕置きするヤツ持って帰ってたよな。こいつは、俺のとこに置いてっていいのか?・・・ってことは、俺が隠しちまうとか、自分のモンにしちまうとか、そんなことも出来るってわけだ。・・・・・・・・・あっ、そーか。がははは、がっははっはは、ついに俺様の天下だ。こいつを使って、今度は俺様が、お前にお仕置きをしてやろう、子孫君。」
「・・・本気で、そう思ってます?」
「ん?いや、そう言えば、自分に使う気満々なんだけど……」
「でしょ。これって、えーと、マゾ専用、ってあります。マゾって、ご先祖さんのことですよね?」
「マゾ専用か。俺はマゾではない。だがな、今俺はめっちゃ、マゾに燃えている。恐ろしいくらいにだ。いいからよこせ。俺はやるぞ!」
「……」
「あれっ、てことは、お前もう来なくていいんじゃね?向こうで、金持ちになるの待ってろよ。」
「えーーーとですねえ。そうはいかないみたいです。説明書によると、毎回、リセットボタンを押す必要があるようです。」
「いい。それも我が輩がやっておいてやろう。」
「それがですね。・・・あの、それお尻からはがしてもらえますか?」
「・・・・あれ、ヘンだぞ。手が動かん。」
「やっぱり。付けるのは本人でも可能だけれど、はがすのは、お仕置きをする人じゃないとダメだって書いてあります。それと、これ、二十時間バージョンらしいです。さすがパパ、超強力なのを選んでくれたみたいです。・・・なに?なに?リセットボタンを押さないと、暴走する危険がある?そーか、それで、まだ発売されてないんですね。」
「暴走!?そりゃ困る。分かった。子孫君、大変だろうが、これからも、毎日来てくれ。」
「はい、もちろんです。」
「で、だな。こいつの、副作用ちゅうのは、何かね。」
「ちょっと待って下さいね。」
「待つ、待つ。三分間待つ。」
「あれええ、書いてません。」
「書いてない?」
「はい。」
「ってことは、ないってことかよ。」
「分かりませんが、それはないと思います。お仕置きシリーズは、必ず副作用がある、ってパパが胸張ってました。」
「胸張ってって、そんなこと自慢げに言われてもなあ・・・」
「・・・ま、いいじゃないですか。じゃ、さいなら、頑張って下さいね。」
「おい、って、行っちまったか。ところで、剣山の効能は、と。……あれ、鳥肌立ってきたぞ。さぶ、っていうか、ぞわ、っていうか。何かものすごくいやなんだけど・・・・、座れねえし。」
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