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「まあ、かわいい。お名前は?」

「子孫君て言うんだ、俺が名付けた。」

「シソン、くん?中国の子ですか?」

「いや、正真正銘の日本人。な?」

「他人に、未来のことを話してはいけないことになってますので。」

「ん?……そうか。もしかして、未来は必ずしも明るくないってことかな?子孫君。だがな!俺は今夜はめっちゃ明るいぞ。ネオンが一杯だぞ。目の前がチカチカするぞーい。」

「・・・さっき一回来たんですよ。でも、ご先祖さん、いなかったでしょ。」

「おう、すまん、すみません、すみます、と。」

「もしかして酔っぱらってませんか。」

「おう、酔っぱらってますよーーーだ。やっぱ、酒はいいなあ。お前のせいで、全然飲めないから、すぐ酔っぱらっちまうんだよなあ。えーと、この人が、水上さん。友枝さん、とも言う。ご覧の通り、絶世の美人だ。」

「お世辞は、やめて下さい、課長。もう!」

「お世辞じゃないよ。なあ、子孫君。美人だろ。そう言えば、お前もハンサムだな。血筋ってやつかもよ。うひひひひいい。」

「チスジ?ちすじ、ですか?」

「課長、笑い方、ヘンですよ。なんか昼間と別人みたい。会社では、課長、独身男性ナンバーワンなのに。仕事も、男性としてのミ・リョ・ク・も。……でも素顔は、意外と軽いんですね。」

「そーー、そーーーとーー、軽いですねえ。ほんとーーは。だけどねえ、この子孫君がうるさくてねえ。で、重くなっちゃったんですよ。いや太らない体質なんですけねど。脂肪がウンチになっちまうんで。ははは。」

「ご先祖さん、酔っぱらってもいいですけど、今日も、ちゃんと、あれを……」

「あっ、そうか。いやーー、あのさあ、子供には言いにくいことではあるんだが、実はだね、今日は、何というか、別のあれを、だね、しなきゃならんというか。人間ていうか、大人って、ほら、もっと色々やらなきゃならんことがあるでしょ。子孫君のパパとママだって……」

「ダメです!怠けてる暇なんてないんですから!あの、水上さん、って言いましたっけ。」

「はい。トモちんって呼んでね。」

「はい。それでですね、申し訳ないんですけど、そろそろお引き取りいただけないでしょうか。」

「?」

「ご先祖さんと二人で、しなきゃいけないことがありますので。」

「二人で?」

「はい。毎晩、やってることなんです。」

「毎晩、やってる?……、もしかして、……しりとりとか?」

「いいえ。」

「ふーーん。シソン君って、課長とどういう関係なの。」

「……」

「子孫ってヤツだよ。俺の子孫。」

「子孫?課長の子供?」

「いやあ、子供って言うか、子供の子供って言うか、そのまた子供の子供の……」

「・・・見損ないました!帰ります!」

「えっ、あれ?友枝さん?俺、何か、変なこといいましたかぁ?」

「行っちゃいましたね。さて、じゃあ、いつものヤツを。」

「行っちゃいましたって。おい、ま、待てよ。俺はだな、今夜よーーーやく、友枝さんをだな。……友枝さーん、……ひぇえ、もひかひて、ほんとに帰っちゃった?ともちーーーん!」

「じゃ」

「痛て。にゃんか、可笑しくなってきたぞ。ひひひひいいいい。悲しいはずなのになあ。ひひひひいいいい。」

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