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「ボーナス、新人中で最高。イエーイ、ピース。何か買ってやろうか。」
「ありがとうございます。じゃあ、シュークリームをお願いします。前から憧れてたんです。」
「どらやきでなくていいのか?」
「何ですかそれ?」
「うーん、丸いカステラみたいなヤツで、間に粒あんが入ってて、甘くて美味いおやつだ。皿に山盛にしてだな、パクパク食べる。」
「ごめんなさい、僕、アンコだめなんです。カスタードクリーム派なんで。」
「つまらんヤツだな。どこまで行っても、型に、はまらん。」
「型?なんですかそれ?」
「何でもいい。分かった、シュークリーム・バニラービーンズたっぷり入りを買って置いてやろう。その代わり、今日はペンだこなしだ。」
「だめです。毎日やらなきゃ、のたうち回ることになりますよ。」
「のたうち?」
「言いませんでしたっけ?」
「初耳だ。」
「そうでしたか。大変失礼しました。これって、続けてるうちに、中毒になるんです。」
「チュードク?」
「はい。ないと、苦しくてのたうち回っちゃうんです。」
「ってことは、何かい、麻薬みたいなモンかい?」
「そうですね。マヤクって学校では教えてくれないのでわからないのですが、パパがそんなこと言ってましたね、僕がここに来る役に決まったときに。休ませちゃならない、間があくと体が欲しがる、一種のマヤクだから、とか。お仕置きって、そう滅多にはしないじゃないですか。だから普通なら、どうってことないんですけど、毎日連続でやるとまずいみたいで。」
「まずいって、おいおいおいおいおい、勘弁してくれよーーーー。俺は麻薬中毒患者なのかよーーーーー」
「そういうことですかね。でも、お仕置きシリーズには、別の能力もあるんですよ。よく思い出してください。ご先祖さんって、暗記科目苦手だったでしょ。」
「よく知ってるな。」
「一応、ご先祖さんに会う前に、下調べしましたから。中学2年生まで、スカートめくりしてたとか。」
「そ、そんなことはどうでもいいだろ。」
「で、社会科の成績、いつも2か1。特に歴史は毎回1でしたよね。で、大学受験の時、どうでしたか?」
「そりゃあ、日本史・世界史は、俺の得点源……。」
「でしょ。お仕置きピンセットをずっと使ってるとですね、自然と記憶力がアップするんです。体質が変わるっていうか。」
「麻薬中毒患者になる代わりに、記憶力がアップするってか?」
「そうです。そうしてその能力は、あとになっても消えないんです。」
「そう言えば、俺、会った相手の名前とか全部一発で覚えるんだよな。歩く名刺フォルダって、社内じゃ有名なんだぜ。」
「でしょ、でしょ。」
「じゃあ、ラケットは。」
「太りません。」
「太らない?」
「はい、余分な脂肪を燃焼させ、燃焼できない分は、ウンチとして出される、って聞きました。」
「ウンチとして?脂肪を?だから便器の中で、ぷかぷか浮くんだな、俺のウンチ。」
「お仕置きペンは、ハゲません。」
「ハゲない!なんだそりゃ。あんまり嬉しくないぞ、その取引。」
「そんなことないですよ。ご先祖さん、植毛する費用を稼ごうとして、詐欺で捕まるんですから。」
「うーん、確かにハゲはいやだ。だけどな、たかがハゲ程度で詐欺までするかな、俺?」
「その点は、僕にも理解できません。『入れ込んじまった』って、ご先祖さんは言ってましたけど。どういうことかな?」
「入れ込んじまった?それ未来の俺が言ったのか?」
「ええ、でも、まあ、いいじゃないですか。ハゲなくなるんだから。」
「OK 分かった。了解。でも、もうペンはやめてくれ。もっと、御利益のある副作用がいい。例えば女に持てるとか。そう、フェロモン増強能力がある、とか。」
「・・・・持てる、ってたしか、前にも言ってましたけど、それって、そんなに大切なことなんですか。」
「そりゃあ、大切に決まってるだろ。人生で一番って、言ってもいいくらいにな。まあ、小学生にゃあ分からんだろうが。」
「分からないのなら言わないでください。はい、終わりました。今夜も頑張って下さいね。あっ、それからシュークリームもよろしく。」
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