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「感謝してるぜ。」
「でしょ。でもよく頑張りましたね。僕も、毎日来たかいがあるってもんです。262回、大変でした。」
「お前が来てから、そんなになるのか。それにしても、なんでお前、いつもすぐ帰っちまうんだ。折角のご先祖様なんだから、ゆっくり腹を割って話したって、罰は当てないぜ。」
「僕だって忙しいんです。いいですか。何回ここに来なきゃならないか、分からないんですよ。こうやって、262回通ったから、大学に受かったようなものの、この先、また怠け癖が出て、勉強しないかも知れない。そうしたら、ろくな会社に就職できないでしょ。」
「おい、おい、これからも来るってことか?勘弁してくれよ。な、1ヶ月でいいからさ、飲み会とか、合コンとか、ナンパとか、デートとか、むにゃむにゃとか・・・」
「何ですか、それ?よくわかんないですけど、ダメです。」
「わかんないのにダメなのか?」
「そうです。ご先祖さんが考える事って、全部禁止です。」
「ご先祖さん、って。そう言えば、俺たち、お互いの呼び方決めてなかったな、長い付き合いなのに。」
「長くなんかありません。まだ3日目です。」
「3日?」
「はい、来るのに30秒、ここで1分、帰るのに30秒。合計2分、掛ける262回で、524分、8時間と44分。無駄話もちょっとしてるので、今までの合計はだいたい9時間30分くらいになります。僕一応、この仕事、平日は1日4時間することにしてるので、今日で3日目です。」
「ふーん、そうか。お前の方は3日しか経ってないのか。って、お前、小2で、かけ算も割り算も出来るのか!」
「生まれるとすぐ、スリーピングプリズンに入れられるんです。」
「スリーピング?」
「プリズン。寝てるうちに、勉強の基本をマスターする機械がある所なんです。」
「睡眠学習機だな。」
「この時代ではそう言うんですか。」
「お前の時代ほど高性能じゃないだろうけどな。そんなら、その機械を持ってくれば、お前が毎日来なくたって済むんじゃないか?」
「無茶言わないで下さい。三千人の子供を同時に教育する超巨大マシンなんですから。」
「それは残念だったな。でだな、なんで、すぐ帰っちまうんだ?」
「さっき言ったでしょ。何回来なきゃならないのか分からないんですよ。だから、できるだけ滞在時間は短くしたいんです。」
「で、これから先も来ると。」
「はい、未来の僕たちの生活が変わるまでは、毎日やって来ますよ。」
「はー、それっていつまで?」
「そんなこと、僕の方が聞きたいですよ。ってことで、つまみます、はい。」
「おーーー、相変わらず痒いぞーーーー。」
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