第9話 閑話 ペスカside

 明日は、お兄ちゃんと異世界デートだ~。一年前から計画していた、時空間移動を明日行うんだよ。あ~、久しぶりのルクスフィアだ~! と言っても楽しい事ばかりじゃないんだけどね。

 どのみち私が生前やり残した事を片付ける為に、一度は戻らなきゃいけなかったんだし。


 そこで考えたのは、お兄ちゃんも連れてっちゃお~って事。

 パパリンの事は大丈夫、どうせいつも出張だし。問題はお兄ちゃんだよ。私が突然いなくなったら、すご~く心配するだろうし、帰って来たらすご~く怒るし。

 連れて行くのは危険だけど、お兄ちゃんと離れるのはすご~く寂しい。


 そもそも、お兄ちゃんは何であんなにゴンゴンぶつんだろ。そのせいで、身長があんまり伸びなかったんだよ。きっとそうだよ。

 シルビアのお腹から生まれたんなら、もっと背が高くて、おまけにボンキュッボンになるはずだったのに、生前とあんまり変わんないじゃない。

 くそ~、いつかお兄ちゃんが、私のお風呂を覗きたくなる位、ボンキュッボンになって、見返してやるんだから~。


 私は記憶と経験も持って転生したから、勿論生まれて直ぐの記憶はある。

 中身は大人でも体は赤ちゃんだし、おしっこしておむつを取り替えてもらうなんて貴重な体験もした。赤ちゃんだからって意志疎通は出来るよ、念話を使ってね。

 そんなこんなで、シルビアと一緒に慣れない日本って異世界を、頑張って生き抜いてきた。


 転生したのは良いけど、困ったのはシルビアも私も、日本の知識が全くないって事だよ。

 言葉も知らなければ、文化も生活習慣も全く異なる、完全なる異世界での生活だもん。不法入国者にならない位は、多少魔法を使ってしのいだけど。正直、確実な生活の保障が欲しかったよ。


 そんな時に出会ったのが東郷遼太郎、今のお父さん、略してパパリン。

 何でも女神様から、ある程度事情を聞いていたみたいで、すんなりと養って貰える事になったの。


 その時は心底助かったと思ったよ。でもパパリンは、シルビアのおっぱいに釘付けになってたからな~。お兄ちゃんもおっぱい星人だったらやだな。


 しばらくは、シルビアと二人で生活してたんだけど、あの子も帰してあげないといけないし。

 ちょっと困ってた時に、パパリンに連れられて、初めて家に行ったんだよ。その時に、お兄ちゃんとの感動の出会いを果たしたの。

 間違いなく、一目惚れだね。つい、見とれちゃったよ。お兄ちゃんから差し出された手と笑顔は、一生忘れないね。


 私は小さい頃にいじめられる事が多かったの。

 髪や目の色が違うからね。子供なら、仕方ないよ。だからって、子供相手に魔法を使う訳にいかないしね。そんな時に助けてくれるのは、いつもお兄ちゃんだったの。 

 お兄ちゃんは単純で、すぐ怒るしゴンってするけど、私のヒーローだよ。出張でいつも家に居ないパパリンに代わって、いつも私の面倒を見てくれたの。

 嬉しかったな~。大好きだよ、お兄ちゃん。

 私は、貴族の家に生まれて、違う貴族に養子に出されたの。家族と過ごす時間より、メイド達や使用人達と過ごす時間が多い生活をして来たんだ。

 生前はそれが当たり前だと思って来たけど、お兄ちゃんと暮らし始めて、家族の温かさがわかるようになったよ。


 シルビアはどうしたって?

 あの子は、今の家で暮らし始めて二年位で帰ったよ。あの子は色々向こうでやる事あるしね。


 思えばシルビアには向こうでもこっちでも、色々世話になったね。

 転生する時は、「ペスカ様の行く所は、必ず着いて行きます」なんて言って母体になってくれたし。

 帰るときも「ペスカ様が心配です。帰るなんてとんでも有りません」なんて、相当ごねたけどね。

 今は、クラウス君と一緒に私のいなくなった後を盛り立ててくれると良いな。


 この世界に来て驚いたのは、科学技術の進歩ね。

 誰もが魔法を使わず光を出したり、火を使ったり、物を冷やしたり出来るんだよ。威力はともかく、武器も便利そうなのが多いね。便利と言えば車や飛行機は、すっごいね。


 まぁ科学技術の発展で生じた問題も色々学んだし、そっくり真似るつもりは無いけどね。

 私だって、人の考えている事を読み取ったりしながら、テストの成績上げてたから、人の事はあんまり言えないけどさ。

 お兄ちゃんには内緒ね。絶対叱られるから。


 そんなこんなで当日がやって来ました。予想通りお兄ちゃんの荷物チェックが入ります。怪しいものは入ってないよ。


 いくら頭の固いお兄ちゃんでも、玄関を開けたら森の中で、帰る方法もわからなかったら焦るだろうね。お兄ちゃんのビックリする顔が目に浮かぶぜぃ!

 さぁ出発! そんで、ごめんなさい。


 はい、想像以上でした。

 驚きすぎて私が困る位だよ。でもあんなに大声で怒鳴らなくても良いと思うの。

 流石お兄ちゃんなのは、やっぱり私を庇うようにして戦うのよね。ちょ~カッコイイよ、お兄ちゃん。


 ただ、トラブルって常に付いて回るのね。

 よりによってマンティコアが出るなんて。そんな時に限って私のマナは、時空間移動魔法で、ほぼすっからかんだし。まぁ撃退位は出来るかなって思ってたけど、ここでもお兄ちゃんがやってくれました。私を庇って怪我した時には、かなり焦ったけど。


 お兄ちゃんがマンティコアと戦う姿は、超カッコ良かったの。

 私の頭の中には、某ゲームの戦闘テーマが、迫力のサウンドで流れてます。おっといけない、うっとりしている場合じゃ無かったよ。ちゃんと、サポートもしたよ。

 ほんとだよ。

 

 その後も大変だったよ。

 お兄ちゃんに気付かれ無い様に、こっそり念話でクラウスに連絡して、後始末を頼んだり。

 お兄ちゃんにすっごく叱られたり。色々喋らされたり。

 お兄ちゃんは、ちょろいから、適当な説明でも納得してくれるけどさ。


 何にせよ、お兄ちゃんが無事で良かったよ。でも何か嫌な予感はするね。

 お兄ちゃんを怪我させて、ただで済むと思わない事だね。いつかこの落とし前はきっちりつけさせて貰うよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る