第19話 澪は〇〇?

 夏も過ぎて、9月下旬。暑い。

 体育祭も総合優勝、テストもまた学年1位。俺的にはいい2学期のスタートだ。

 そして、とある木曜日。

「これ誰がやったんですか~?」

「んーにゃっ、にゃっ、にゃーん」

『か、可愛い...』

善子に善子の枕に穴を開けのがバレて問い詰めるとしらばっくれるおみやちゃんを見てキュン死寸前の俺と善子と愛。足つって善子にへばりつく光。

「この演技力皆無なのがいいなぁ...あぁ、可愛い」

「まぁ光は一昨日私のプリン間違えて食べて私が問い詰めたら演技力皆無でしらばっくれてたわよね?」

「お、おい!!お前それ言わない約束だったろ!!それに次の日ちゃんと同じやつ買っただろーが!!!」

その後もおみやちゃんの産まれたての写真やボールで遊ぶおみやちゃんを見て癒されまくる俺達。

「そういえばいつメンには1匹猫がいるよな?」

『あぁ...』

確かに、いる。三国ヶ丘澪っていう世界で1匹しかいない品種がいる。

「彼氏としてはどうなんですか?」

「あやつは猫だわ」

まじで澪は猫系だ。俺が教室で本を読んでると横から本と顔の間ににゅっと顔を出してきたり構って欲しすぎて顔とか腕とか胴とか脚とかに抱きついてきたりボール見たら遊び始める癖があってバスケめちゃくちゃ上手くなってるし猫みたいに可愛いし癒しがあるしえっちだし...え?と、とにかく猫要素が揃いすぎている。

「そろそろ帰ってくるんじゃない?」

ガチャっ。部屋のドアが開いた。

「Anois~(アイルランド語でただいま)」

そう、いつメン唯一の猫。それは月詠神。

『お前ちゃう!!!』

「ファッ!?」

「なんでお前なんだよ...」

「あぁもう!!計画狂ったじゃないの!!」「どないしてくれんのこれ」

「やっぱり取り柄はおっぱいだけですか...」

「なんで帰ってきただけでこんな言われなあかんの!?あ!?」

カンカンに怒る神姬に事情を説明する善子。

「なんやねんそういうことかいや...」

『そうなんです』

「一旦家帰ってからこっち来るって言ってたからもうそろそろ来るはず」

ガチャっ。部屋のドアが開いた。

「ただいマンドリルーペンチューペットンガリコーーーーン」

. . . 。澪が帰ってきた。

『来たぁあああああああ!!!!』

「ファッ!?」

やっと本命が帰ってきた。やっとだやっと。何秒待った事か。ということで円陣を組む澪以外の俺達。

「どーします?」

「アタシ写真とか動画で見たことあるんだが...猫って身体柔らかすぎて猫、液体説ってのをよく見るんだ...」

「よっしゃ、お風呂入らせよか!!」

『おけぇい!!!』

「あ、あのー」

『澪』

「はいっ」

『お風呂入ってください』

「えっ、え、ええの?先入って」

『どうぞ』

 ということで検証1、"澪猫は液体なのか...?"。

澪にはお風呂に入ってもらった。俺達いつメンは澪の入ってるお風呂の入口の前にいる。

「検証1つ目ですが、猫は液体ってよく言いますよね?」

『うんうん』

「じゃあ今澪さんは猫ならば今湯船に溶けてるってことになりますよね?」

『なるほど』

澪は今、湯船に浸かってふうーーーっときもとよさそーーーにしてる。

「じゃあ遼さん、入ってください!!」

「あ、俺が入るのね」

風呂のドアをノックした。

「澪~?入るよ~?」

「えっ、遼?おん、え、ええよ?」

ガチャっと風呂に入った俺と愛。湯船に浸かってる澪。

「えっ、居るじゃん」

「だね」

「な、なんよ」

湯船に浸かってる谷間が綺麗な澪猫。

「でも待って、猫ってほとんどおお風呂苦手なのになんで湯船にいるの?」

「確かに...ってことはあれより下は溶けてるのね...」

「立証だね!!」

澪が困惑してるのに気付いた俺。

「あ、ごめんねみーちゃん。急にお邪魔して」

「みーちゃん!?」

「じゃ、失礼するね」

そう言ってお風呂から出た俺と愛。

「...え...?」

 検証2、"澪猫は「ボール」を見ると遊ぶのか?"。

澪が風呂から上がって部屋に入った。ウチ以外のいつメンはコンビニに行ってるため部屋には誰もいない。その代わりに部屋の真ん中に何も入ってないダンボールが転がってた。なんやこれ、潰しとけや...いや、ちょっと待てよ?

 10分後。

「ええ...?」

コンビニから帰ってきた俺達。あれ、澪はベッドで猫みたいに寝てる。澪が遊ぶように置いてたダンボールがテープ止めされてる。しかもフタに「開封厳禁」って澪の達者な字体で書いてある。ジャンケンして光が開けることになった。

「なんでだよ...」

カッターで端から刃を入れてスライドした瞬間だった。

「パン!!!!!!!」

「きゃああああっ!!!!」

光が珍しく女の子の声を出した。中を見ると割れた風船がある。その音で起きた澪。

「ん、何今の」

「澪おおおおおお!!!!」

「うわああああ!!」

絡み始めた。

「説立証だね」

「ですね」

 検証3、"澪猫は授業中時寝るのか?"。

次の日。猫はよく寝るしボーーっとする。それがまた可愛らしい。澪猫はどうなのか?1限目の数学。

「zzz...」

ガッツリ寝てる。2時限目、英語。

「zzz...」

3時限目、地理。

「zzz...」

4時限目、保健。姫島の授業。

「zzz...」

この授業も寝てる澪。

「おーい彼氏、起こしてやってくれ」

「へい」

澪はなかなか起きないが授業中は割と睡眠が浅い。ということで鼻にティッシュつんつんさせた。

「へっ、あっ、へぅああっくしょん!!!!!!えっ?」

起きた。

「ほら澪、授業中ですよ」

「もーーー!!!!!」

めちゃくちゃ恥ずかしがりながら俺の事叩いてくる。この前は船の汽船を流してめちゃくちゃしばかれた。

 検証4、"澪猫の身体能力は...?"。

5.6時間目の体育。

「猫は身体能力凄いだろ?」

『うんうん』

「それを検証したいのだが...」

今日の授業はバドミントン。相手からのコーナへのスマッシュをスライディングしながらレシーブしたり女子とは思えないフットワークで色んな球を取りまくる。でもやっぱり澪といえば...。

"パァァあああん!!!!"

『おおお~』

澪のジャンピングスマッシュ、俺の中の通称新快速が炸裂。

「猫ってスマッシュあんなに早かったっけ?」

「アタシ達のハートへのスマッシュは速いがな...なんてな」

. . .  。

「どうしたのよ光?大丈夫?今日調子悪いじゃない。早退する?保健室の先生に診てもらったら方がいいんじゃない?119番しよっか?ん?」

「せんでええ!!!」

「もしもし、はい緊急です」

「アタシは正常だ!!!!!」

 そして学校を終えて俺の家。

「猫系女子は3種類あるんよ。子猫、飼い猫、野良猫系。澪猫は誰がどう見ても飼い猫系やろ?」

『うんうん』

澪はまじで猫系の中でも飼い猫系女子だ。ほんとに飼い猫。エサあげないと死んじゃう。

「善子が寝てる時おみやちゃんって起こしに来たりするん?」

「あ~たまにありますよ。お腹に乗ってきたり鳴きながら顔ぽんぽんしたり舐めてきたり。たまに布団に潜って寝てる事もありますね」

「じゃあ澪猫はどーなるんやっちゅーのが今回の検証」

 検証5、"澪猫は主が寝てる時どう起こすのか?"。

「zzz...」

「本当に寝たフリしてんだよな...?」

「フリとはお前ませんねぇ」

今、俺は寝たフリをしている。そして光達は神姬の家にいて澪猫はお風呂に入っている。澪猫には「俺の家から神姬の家でゲームすることになったんだ。遼は今寝てるからお風呂上がったら神姬の家に一緒に来てくれ」と光から告げている。つまり澪猫がお風呂から上がって俺の部屋にログインしてフリーズしてる俺をどう起動させるのかというのを俺のスマホにビデオ通話を繋げて画面越しにモニタリングしている。少々内容が強引な気がするが果たして...と思っていると澪猫が部屋にログインした。

「遼~、えっ?寝とるやん」

「zzz...」

「んーー...嘘やろ~」

澪猫が誰かに電話をかけた。

「なんだ?」

光にかけたようだ。

「遼寝とるんやけど~」

「起こせ」

「いやぐっすり寝と」

「起こせつってんだろ」

「へい」

そう言って電話を切ると澪猫は俺をゆらゆらさせる。

「遼~起きて~」

「...」

やばい、笑いそう。

「強引に起こしたり叩いたり蹴ったりしないんですね」

「それめっちゃ思った」

「その辺しっかりしてるのね...点数が高い」

「遼ぉ~」

「んっ」

変な声が出てしまった。澪猫がゆさゆさしてきた。しかし俺はまだフリを続けてる。

「zzz...」

「んー...どうしよ」

困ってる。その後も数分間揺らしたり起きろーって言ったりで荒いことはしてこない。そう、澪は割と優しい...はずだった。

「んーーー...こーなったら...」

『ん...?』

今度はなんだ...?その時だった。

「ボォーーーーーーー!!!!!」

「!?!?!!!??!!??」

めちゃくちゃ跳ね上がった俺。澪が自分のスマホで汽船を鳴らしやがった。やられた...。

「起きた~♡」

「な、なんだよ...」

「前ウチに汽船流して起こしたやろ!!」

「あ、す、すみません...」

仕方なく起きて神姬の部屋で夜遅くまでゲームした。寝起きはまじで最悪だった。

 そして、次の日。

「さぁ、今回最後の検証ですが...」

「この検証は俺が個人的に試したくてですね...。猫って遊んで欲しい時とかすぐよってくるじゃないですか」

『うんうん』

「それに自分が気付かなかったら「ねぇねぇ」ってグイグイ来るじゃないですか」

『うんうん』

今回で澪猫の最後の検証。その内容は...。

「澪猫を無視し続けたらどうなるのかっていう」

それを聞いた途端ちょっと引く神姬、引き笑いする愛、びっくりする善子、バカでかいくしゃみする光。

「んんー、おみやちゃんにしたことないですね...」

「いやお前中々エグいことするな...」

「まぁ、仲悪くならない程度でね?」

「もちろんさぁ~」

それはやめといた方がいいんじゃないかと言う善子、程々にね?という愛、今日のお買い得の品があるかどうかを確認してる神姬、最近目が悪くなってきてコンタクトはめてる光。

 ということで神姬達には近くのスーパーへ買い物に行ってもらって俺の家には俺と澪猫しか居なくなった。澪猫はトイレに行ってる。俺の部屋に入ってきてから検証開始。

 検証6、"澪猫を無視し続けたらどうなるのか...?"。

「ふー、あれ?神姬らは?」

澪猫が帰ってきた。俺はスマホを見てる。

「遼?」

「...」

無視し続ける俺。

「聞いとんか、コラ」

「...」

ほっぺをぷにぷにしてくる澪猫。笑いそうになったが無視し続ける俺。ここで俺は目を落とすと澪がめちゃくちゃ気に入ってる俺がプレゼントしたクマの人形があった。それをおみやちゃんの時みたいに可愛がり始めた。

「んー、可愛いなぁ~」

「はっ、え、ちょ、遼~」

澪が焦り始めて俺の腕を掴んでゆさゆさしてくる。いつもなら自分の頭の良さを活用して色々と筋の通ったことしか言わない。しかし今回は違う。珍しく澪が語彙力皆無なのだ。それにめちゃくちゃ焦ってる。...なんか罪悪感が芽生えてきた。

「なぁ!!遼!!」

「ねー、可愛いですねー」

「むーー!!」

澪が怒ったのか俺の肋を擽り始めた。これはウチの勝ちやろ!!って顔の澪。

「楽しいですねーーっ、いやー可愛いですねー」

「う、嘘やろ...!?」

しかし俺は無表情。まぁ、かなり来てて今にも笑いそうだが。

「うぅ...。遼...、なぁ、こっち見てや...」

泣きそうな顔で俺の顔を覗く澪。やばい...もう...いいかな?まじで澪が可哀想になってきた。くまのぬいぐるみ抱いてる俺を殺したくなってきた。俺なんてことしてんのよ、なんか俺も泣きそうになってきた。

「なぁ...遼ぉ...なんで無視するんよ...なぁ...っ...遼ぉ......」

「澪ーーーー!!」

もう耐えれなくなって澪に抱きついて頭を撫でまくる俺。

「ごめん、ごめんね...ごめんよ澪...ごめんね、ほんとにごめん。澪...ごめん」

澪の顔を見るとプクーっと顔を膨らまして涙目になりながら怒ってる。

「もー...なんやねん!!ほんまにびっくりしたやんけ...!!」

「ごめんね...これはただの検証で...」

「もー!!...検証?」

「うげっ」

『ただいま~』

神姬達が部屋に入ってきた。

「お、見て。なんかやっとる」

「何や検証て」

「あ、いや、その、えー...」

「遼~検証結果は~?」

「ちょ」

「...あ?」

『えっ』

澪の顔が怖くなった。抱いてる手を振り払われた俺、びっくりしてる神姬と善子と愛、部屋に入ろうとして足の小指をぶつけて痛がってる光。

「なんや...最近ウチの風呂勝手に入ってきたりみーちゃん呼ばりして?え?挙句の果てにこれかいや...あぁ!?」

『ひっ...』

わなわなと怒ってる澪。

「み、みみ澪さん落ち着いてください」

「これは澪が猫かどうかっていう検証なんだよ」

「ウチが猫かどうか...んなもん遠の昔に猫て分かっとることやろボケェぇぇえええ!!!!!」

『うごぉおおおおお......!!!!』

「お前ら全員死刑じゃぁああああああ!!!!!!」

 ...この日から3日間、まじで澪は俺の口を聞いてくれなかった。




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