第5話 夏休み 後半
ガタン...ゴトン...。8月15日、晴れ。俺達いつメンはとある所に向かっている。そのとある場所について列車から降りる。ブロロロローーーニィイイン!!!ディーゼルエンジン全開で駅を発車する列車。. . . . . 。
『いぇええーーええい!!!!!!』
気が狂ったように喜ぶ俺達。
「やっと来たぜぇ!!!」
「念願の...」
『北比布駅ぃいいい!!!!!!』
そう、俺達は今北海道のJR宗谷本線の北比布駅という所に居る。
「次の列車は何時ですか!?」
「次は...18時!!!!!」
「現在の時刻は...14時半!!!!」
『いぇえええええええい!!!!!』
北海道の夏は寒そうかと思えばそうでもなくて暑さのせいとここに来れたという嬉しさでテンションがおかしい。いやぁ、にしてもいい景色だ。周りには建物はあまりなくて田んぼしかないのどかな風景が広がっている。俺達はさっき新幹線で北海道に着いた。光と神姬がこの旅行を夏休み入る前から計画していて2泊3日の間にとりあえず適当に北海道を巡っていくと言う旅行だ、とりあえず。駅ノートに俺達が来た記念の書き込みをしてから本来ならこっから暇になるのだが俺達はそうじゃない。
「だーるまさんがこー」
「死ねぇぇぇええええ!!!」
べちぃいいん!!!!!!!光の背中に季節外れのもみじが澪によって刻まれた。
「うぎゃあああああ!?コラ待たんかい澪おおお!!!!!」
駅横の田んぼ道でだるまさんがころんだをやり始めた。この通り普通のだるまさんがころんだをする訳がなく背中を強く叩いたり100mくらい離れてだるまさんがころんだしたり競歩鬼ごっこしたり列車が通過する時は駅のホームで横1列に並んで運転手に向かって敬礼したり...え?高1の癖にお前らは何してるんだって?そもそも世間の高一のレベルが高過ぎるんだよ。
「えっとー、今僕達は北海道にいまーす」
「いまーす」
「いえーい」
俺のスマホを付けた自撮り棒を持って動画を撮っている。
「ほら、進行せな」
「えっ...んー、じゃあ......」
ちょっとグダグダだけど20分くらいの動画を撮った。どんな動画?いつもよりちょっとまともな動画。
次の日の夕方。札幌に来るとお祭りなのか人がいっぱいいる。調べると盆祭りらしい。俺達いつメンは屋台で晩御飯を買って近くのベンチで食べていた。
「なんあれ」
澪が指さす方向見ると屋台に人が並んでいる。あー3つある5段の重そうな缶のタワーにボールを当てて倒した本数に合わせて景品が貰えるゲームか...。皆全力で投げてるけどそこまで倒れてない。しかも1回500円って...まぁ祭りってそんな簡単なもんじゃ無いよね...。
「えっ、一等...」
澪の目が変わった。よく見ると一等はめちゃくちゃ売れてる入手困難なゲーム機とカセットのフルセットだった。俺の親が結構前に注文してくれててもう少ししたら届くくらいのまぁまぁレアで高価なゲーム機のセットだ。
「ちょっとやってみるわ」
『えっ』
澪がその列に並び始めた。俺達は横から見ることにした。そして誰も一等を取れずに澪の番になった。
「見とけよ見とけよ〜!!」
「ほい、頑張ってね〜」
おじさんから渡された3つのボール。すると澪の表情が一変した。3回投げる練習をして第一投目。俺達や並んでる人や周りの人も刮目している。
「おっと、大きく身体を反らしながら左手を上げてジャンプしました!!(善)」
「第一投目...投げた!!!(光)」
勢いよくボールを投げて球は一直線に缶にバコーーーーーン!!!...何ですか今の。何か缶に入った炭酸が破裂した時みたいな音を周りに響かせながらスタっと澪が着地した。いや、普通にボール投げて怖いおじさんの家の窓ガラス割った時でもこんな音しないよ!?モワモワしてた煙が晴れたその屋台の中にはさっきまで「倒してみろや〜」みたいな感じで余裕ぶっこいてた3つの缶のタワーが全て無くなっていた。何と1発で全て倒してしまった。おかげで屋台も一瞬でボロボロで横に座ってたおじさんは椅子から落ちている。
「流石だ...」
「だね...」
「アイツ元々中学の時にバドミントンの全国大会優勝してて「なにわの新快速」って言う異名が付くくらいスマッシュが速いんだ...今のがそれだ」
「それに小学校の時は空手してて足もめちゃくちゃ速かったわね」
「なるほど...無敵なのか」
周りからは拍手が湧いて澪は一等のゲーム機を獲得した。流石なにわの新快速...なめたらあっかーんー。
...そして色々と適当に、とりあえず適当に周りに回っての旅館。この日は海の見える旅館に泊まった。俺は先に温泉に行って神姬達が温泉に浸かってる間ジュースを飲みながら夜の北海道の海を部屋のベランダから眺めていた。
「1人で眺める海はどないですか」
「それはいと美しゅうて候」
ドアがガラッと開いてお風呂上がりの澪が俺の横に座ってきた。
「早かったね」
「え、あ、あ〜ウチ熱いお湯長い間浸かるん苦手やねん」
「なるほど」
海を見ながら普通の雑談をする俺と澪。安定して俺の手を握っている。もう慣れた。ただ今回は少し違う。身体を俺に寄せて密着している。
「な、なんか...遼の横居ったら安心するわ」
「えっ、そ、そう?」
「よう分からんけど.....安心するわ」
ちょっと嬉しさと照れを交えた表情でそう言う澪。初めて言われたな...そんな事。しかもさっきからなんか様子が変だ。何か言いたそうな顔をしてるけど恥ずかしくて言えないみたいな顔をして下を向いている。会話が途切れて3分くらいした時だった。
「...あ、あのさ」
「え?」
俺の左手を両手でぎゅっと握りしめて持ち上げる。
『遠ざかる〜溢れた夢帰れない人並みに〜』
「あ、帰ってきた」
「えっ...」
ガラッとドアが開いて壊れかけのRadioを歌いながら光達が帰ってきた。急いで俺の手を下ろして離す澪。
「遼さ〜ん、澪さ〜ん、乾杯しましょ!!」
「はいはーい、澪、行こ?」
「...うん。せ、せやね」
なんか悔しそうな顔をする澪。しかし俺は一切聞けずで神姬達の所に行く。
『かんぱーーーい!!!!』
とりあえず2日目の夜を記念して乾杯して皆と盛合う。そして旅行の後は皆で花火をして夏を終えた。
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