第4話 頼れる彼氏
「あのさ、なんでクラスとか外出してる時はカッコつけてんのか知らないけど猫みたいに冷たそうに人に接してるのに、私の前で私にだけ犬みたいにグズグズなるの?」
私は彼に思い切って質問した。
すると來は―
「普通に考えて男が外でぐずぐずしてたらダサいだろ。それに彼女に甘える彼氏ってかっこ悪すぎ。でも彼女に嘘、偽りの姿を見せるのも俺は嫌い。だからせめて2人の時は素直でいる。そんだけ。」
だとさ。
うん、その気持ちは嬉しい。でも、せめて話す時くらいスマホいじるのやめたら!?
まぁもうこういう人なんだなってわかったから別にいいんだけど。
それにしても普通なら彼女の前でかっこよく見せたいとかじゃないの?
人それぞれなのはわかるけど、彼女にメソメソしてる姿をよく晒せるな。女性の私でも彼氏の前で泣き顔晒すなんてできないよ。
來の心情を知れたところで私は家に着いた。
來の引越し先の家は私の家をまだ先に行ったところらしい。驚いた事に意外と近かった。
來と話しながら帰ったからだろうか。家に帰りついた頃はもう夜が深く、お風呂、食事を済ませて布団に入ったらひどい眠気に襲われた。
來におやすみのLINEを送った。
寝る前にふと考えたんだけど、來はなんで私とこんなに付き合っていられるんだろう。
普通、可愛い子とイケメンが付き合うもんでしょ。なんで私?
この前ゲーセンで私を使い終わったんなら、もう別れちゃえばいいのに。
一応彼は今のところ約束を守り続けている。むやみに体に触れてくる事はない。どうやら本当に体目的ではなさそう。
そう考えているうちに私は深い眠りについていた。
―最近、目覚めてからよく思うことなんだけど、來と出会ってからしっかり寝れてる気がしない。別に彼のことを考えてとかじゃないよ。でもよくわからないけど朝の目覚めがすごく悪い気がする。
そんな事を言ったところで、もう寝る時間もなく、いつも通りに身支度をすませて学校へ向かった。
学校につき、教室に向かっていると、遠目から見てわかる程の数の女子が私のクラスの前に群がっている。
絶対昨日の來の事だ。でもこうなる事は覚悟してきた。とはいえあの数を目の当たりにすると、やはり少しは足がすくむ。でも行くしかない!
クラスに向かってくる私に気づいた女子達は一斉に私に駆け寄ってきた。
そして彼女達は私に―
「川嶺さんは來君と付き合ってるんだよね??どうやって來君を捕まえたの?川嶺さんに來君ってどうなの?ねぇ!」
と迫ってきた。相変わらず女子ってめんどくさくて、とんでもないほど恐ろしい生き物だと痛感する。まぁ私もそうなんだろうけど。
「え、えっと…」
あ、やばい。言葉が出ない。
どうしよう…
「俺が付き合ってって頼んだの。こいつにはお前らにわからないだろうけどすごくいいとこあるから。だからそこ、通してやってくんない?」
教室の入口で質問攻めにされている私に1人の声が飛んできた。
この声は來の声…。
まさか來に助けられるなんて思わなかった。
女子達は來に、川嶺さんにあって私にないものって何なのと口々に質問していた。
來は呆れたように
「言うわけないだろばーか。ただ、もう茉莉に俺のこと聞かないで。そうするくらいなら俺に直接聞きに来い。まぁお前らなんかの質問に答えないと思うけど。あ、茉莉に余計な事したやつはわかってると思うけど、相手が女だからって手加減はしないから。」
と言って自分のクラスに戻って言った。
あそこまで言われるとさすがに何も聞くことができなくなったのだろう。
女子達は散っていった。そしてそれから私の元にも来る事はなかった。
放課後、來と昨日のように校門から帰る。
「あ、あの、來ありがとう。」
なんだか借りができたけど、実際本当に助かった。
あの時、來が来てくれなかったら私はあのまま固まっていたか、下手したら怖くてその場で泣き崩れていたかもしれない。
「別に。あのさ、それよりも今からうち来ない?今日誰も居ないから。」
…それは來からの突然の誘いだった。
時刻は6時過ぎ。いくら彼氏でもまだお試しだし、誰も居ない男の家に上がるのはいかがなものか。
ここは断るのが健全だよね。
「え、い、いやさすがにそれはやめとくよ。」
「今日せっかく助けてやったのにー。いいじゃん別に。」
そう言われてしまうと断るわけにはいかない。できた借りは返さないといけない。
体に触れないという約束はしてあるし、今までだって來はしっかり守ってきてくれたから大丈夫かな。
「わ、わかった。その前にちょっと親にLINEさせてね。」
お母さんに友達の家に遊びに行ってくるとLINEをして私は來の家に向かった。
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