第3話 転校生
「れいなー。私彼氏できたの。すぐに別れると思うけど。」
「へーよかったね。」
怜奈はいつも冷たい。今も私の電話聞いてるの?って感じがする。でも昔から一緒にいるからなのかわからないけど、その冷たさの中に優しさを感じる時もあるの。だから友人関係がここまで続いてきているんだと思う。
「彼氏って今日のあの男?」
「あら、珍しいね。怜奈が食いつくなんて!」
いつもは私の事情に首を突っ込んだりしない怜奈が珍しくこの話題に興味示している…。これは絶対に私の弱みを握ろうとしているかなにかだな。
そう思う根拠はないけど、野生のカンってやつかな。
「そうなの!でもあの來って人さ、謎が多すぎて、なんか人前だとすんごいかっこつけてるくせに、私の前になるとグズグズ泣き出すんだよ?しかも無駄に可愛かったりするし…」
「ふーん、そうなんだ。」
ほら、こういう事は全く興味を示さない。
この夜の寝る前にする怜奈との電話は不定期で訪れる私の毎日のストレス発散タイム。怜奈は首を突っ込んでこないからこそ、何かと話しやすかったりする。
―時計の短針と長針が仲良く12で揃ったところで私たちは寝ることにした。
電話を切ったあとに來からLINEが来ていた。
『今日僕が泣いてたこと…絶対に誰にも言わないで?』
時すでに遅し。怜奈に言った後にそんな事言われても困る。
『ごめん、親友にちょっと言った。でも興味なさそうだったから大丈夫。』
私は嘘はつきたくない。
『…言っちゃったんだ。僕がちゃんと言わないでって先に言わなかったのが悪かったね。』
『うん、そうだね』
そしておやすみなさいスタンプを送って1日が終わった。
いや、終わらせた。
―朝、いつものように母の声で起された私はご飯を食べ、鏡の前で髪を整え、服に乱れがないかチェック。薄いメイクを行って急いで家を出る。
家から学校までは自転車で15分ほどで割と近い。
学校に着くや否や、得体の知れない生徒達のざわつきが聞こえてきた。
いつもはこんなにザワザワしていないのに…
クラスについた私は同じクラスの友人の
かなりのイケメンらしい。
私にはイケメンの単語だけでその人物が誰なのか推測できた。
うちのクラスの女子だけじゃなく、他のクラスの女子達も一斉にその転校生のいるクラスに走り出し、窓から身を乗り出して転校生を眺めている。
「まりー!あの転校生マジでイケメンだよ!?まりも見なよ!絶対惚れるよあれ!」
「確かにあれはイケメンだけど…」
「だけど?」
「人は顔じゃないよ!」
「えーなに真面目なこと言ってるのよー!実は内心付き合いたいとか思っちゃってるんでしょー?」
ごめん幸千。あれ、私の彼氏だわ。しかも惚れてないのに彼氏だわ。
朝のSHRの始まりを告げるチャイムが鳴ったのにも関わらず人だかりは絶えない。先生が生徒達をしている軽く叱ったところで皆クラスに戻っていった。
SHRで來の紹介があったのだろうか。私はクラスが違うから何もわからないなー。いや別に彼氏だから知りたいって訳じゃないけど、素性を知らないとさー。
來が転校したクラスはどうやら怜奈と同じクラスだったようなので怜奈から内容を聞いた。
隣町の高校から転校、部活は弓道をやっていたらしい。
あの雰囲気で弓道はわからないでもない。
休み時間、來の周りには男女問わず人が集まりいろいろな話をしていた。
―が、來は本を読んだりスマホを弄りながら頷いたり、一つ返事で返すだけ。
あんな無愛想なやつの何がいいの!
あれに友に達ができたら私には100人くらいできるんじゃない?
いや、バカで運動音痴でブスな私にはさすがに100人は無理か…ってそれはどうでもいいの!
とにかく、なんで來は私の前ではグズグズなダメダメ彼氏のくせにクラスの中とか外ではあんなにかっこつけてるのよ!!
私はスマホを取り出して、來にこっそりLINEをした。
『今日一緒に帰れる?聞きたいことあるんだけど。』
少々時間が経ってから、來からの返事が返ってきた。
『え!一緒に帰ってくれるの?やったー!僕、帰りのSHR終わったら茉莉のクラスに迎えに行くね!!』
へー、まぁ一応優しいところはあるんだ。
『わかった、ありがとう。』
そして約束の時間。私のクラスの方が先にSHRが終わり、彼がやってきた…のだが…
なんか周りにいっぱい女子がいるんですけど!?
きっと他の男子からしたらあれ絶対羨ましい状況だろうなってくらい女子に囲まれてこっちにやってくる。
やばい、逃げなきゃ。と思った私だったが、また一歩出遅れてしまった。逃げようとした瞬間に私のすぐ後ろに大名行列は来ていた。
先頭にいる來は私の肩を掴んで
「遅くなっちまうから、早く帰るぞ。」
と一言だけ私に言ったあと、周りにこの前のゲーセンと同じように
「こいつが俺の彼女なんでこいつと帰りまーす。それじゃさようならー。」
と言って私の手を引いて歩き出した。
周りにいた女子はポカーンと口を開け、その場から動けていない様だった。
あーあ、この人なんの躊躇もしないで言ったよ。絶対に明日、私に対していろんな人から質問が来るな。
校門を出たあたりで私は來に思い切って質問した。
「あのさ、なんでクラスとか外出してる時はカッコつけてんのか知らないけど猫みたいに冷たそうに人に接してるのに、私の前で私にだけ犬みたいにグズグズなるの?」
さぁ、なんて返ってくるのか楽しみだ。
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