傘の花(掌編)

 その日は曇り空だった。灰色の雲に手が届きそうなほど低く、タメ息がまとわりつくような雨模様。


 ――心が弾むおまじない、かけてあげるね。


 そこに現れた小さな泡吹きさんは、持っていた小さな筒を吹い上げた。


 ぷくぷくぷくぷくぷく……。



 中空に舞い上がった泡が雨に当り弾けて落ちる。


重い雫、

軽い雫。


その雫を受ける大地にはとりどりの花が咲いていく。花弁に弾かれた水が奏でる音楽は優しく、まとわりつくため息をふわりとほどいた。


想い雫、

駆るい雫。


――さあ、雨がやむよ。七色の虹が出たら、おまじないの完成だ。



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