第7話 言えない気持ち
初めての彼氏はバイト仲間のジュン君だった。
ジュン君は同い年だけど、バイトでは私より少し先輩で失敗ばかりの私をいつも影で助けてくれていた。
同い年なのにテキパキと仕事をこなすジュン君はかっこよく見えたし、何より優しかった。
私とは違う学校に通っていて、共通の友達もいなかった。
初めて優花とは関係のない男性に好きになってもらえた事が嬉しかった。
この人なら大丈夫。
この人は私の事を好きになってくれたんだから。
当時の私は自信に満ち溢れていた。
彼氏ができて私の毎日は大きく変わった。
元々バイトは夏休み期間だけのつもりだったが、もっとジュン君との時間が欲しくて学校が始まってからもバンバンシフトを入れた。
優花は私に彼氏ができた事を自分のこと以上に喜んでくれた。
今までは優花の話を聞いてばかりだったが、彼氏ができてからは立場が変わり、私の話をいつも優花が聞いてくれた。
代わり映えのない、くだらない惚気話ばかりだったのに優花はいや顔一つせず、嬉しそうにニコニコしながら聞いてくれて、それがまた嬉しかった。
バイトにもすっかり慣れ怒られる事も無くなり、優しい彼氏と優しい親友がいる、人生で一番幸せな時間を過ごしていた。
しかしその頃の私には一つ大きな悩みがあった。
付き合って一か月程経ったものの、私はまだジュン君に優花のことを話していなかった。
二人でいると当然学校生活の話になり、お互いの友人の話をすることはあったが、私はいつも適当にはぐらかし、優花の話はしない様にしていた。
それがジュン君にも優花にも嘘をついている事になる様な気がして気分が重かった。
話したく無かった訳じゃない。
私の自慢の親友のことをジュン君にも知ってもらいたかった。
でも今までバイト先で何となく伏せてきた話題なだけに、今更切り出しにくく話せないままだった。
そんな時だった。
「ねえ、今度私もジュン君に会ってみたいな!一回ちゃんと紹介して!」
優花からジュン君に会わせてほしいと頼まれたのは。
少し悩んだが、良い機会だと思い双方を紹介する事にした。
優花が純粋に私の彼氏がどんな人か会って確かめたい、と思ってくれている事はすぐに分かったし、ジュン君にもいつまでも優花の事を話さないままではいられないと思った。
優花の撮影がお休みの金曜の放課後、三人で会う事になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます