第6話 初彼
高校生になってからも私達の仲が崩れることは無かった。
大きな高校だったから、周りに人が一気に増えて毎日が慌ただしかった。
制服に身を包んだ優花は雑誌の中から出てきたモデルそのものだった。
学校中の注目の的だったことはもちろん、この頃から優花は読者モデル活動を始めた。
二人で買い物に行った時、人気ファッション雑誌の読者モデルにスカウトされ一気に人気モデルの一人になった。
元々ファッションが好きだった優花はモデルの仕事が大好きになった。
学業と撮影の両立は難しかったが、忙しいながらも毎日が楽しそうだった。
放課後も休日も一緒に過ごすことが多かった私達だったが、優花は撮影で忙しくなり中々時間が合わなくなっていった。
一人の時間が増えた私は心機一転、アルバイトを始めてみることにした。
あれは確か高一の夏休みだった。
選んだのは駅前のファミレス。
初めてのアルバイトは想像していたよりずっと大変だった。
元々器用じゃない私は店長に怒鳴られてばかり。
それでもバイト仲間やお客さんと話をするのは楽しくて、何とか続けていけた。
何より優花がいない環境で何かをするのには今までにない新鮮さがあった。
バイト仲間達と休憩時間にくだらない話で笑い合う時、ふと
「この人達は優花のことを知らないんだ」
と、頭によぎる事があった。
当たり前のことかもしれないが、
「森山優花の親友の矢田部幸」
としてではなく
「バイト仲間の矢田部幸」
として接してもらえる事が新鮮で、嬉しく感じた。
優花は人気読者モデルとして地元では有名だったが、私はあえてバイト仲間達には自分が優花と知り合いであることは伏せる様にしていた。
優花の隣にいる事が嫌になったわけじゃない。
気持ちは昔と何一つ変わっていない。
ただ、「優花のおまけ」ではなく「矢田部幸」として居る事ができる場所を失いたく無かった。
バイトにも慣れてきた夏休みの終わり、バイト仲間の一人が告白してきた。
この夏、私は人生で初の彼氏ができた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます