第3話:透明

待ち合わせの少し前に来たつもりだったのにユウキが先に来てベンチに座っていた。


カズハ「早いね?」


ユウキ「時間合わせたら12:45着の電車しかなくてさ」


カズハ「そっかゴメン」


ユウキ「あ、別にいいよ」


カズハ「じゃあ行こうか」


駅から徒歩15分のところに市の美術館がある


今日の展覧会は複数の画家とイラストレーターの作品を展示してあって作風もばらばら


ユウキ「こういう展覧会のほうが色々見れていいよね」


カズハ「そうだね、みんな好みが分かれるからね・・・」


ユウキ「色の使い方がはっきりしている方が目を引くのかな?」


カズハ「う~ん、目立つのは間違いないけど、難しいよね」


ユウキ「濃い色を並べるのって技術がいるよね・・・そう思ってるからか、どんどん淡い色合いになっていくきがする・・・」


カズハ「あ~それはあるね、でもユウキの色使い好きだけどな・・・」


ユウキ「そう?ありがとう、でもできた物がイメージと違うことがよくあるよ」


カズハ「私もそんなんばっかだよ」


そんな会話をしながらほぼ貸し切り状態の美術館を見て回りました。


・・・これはデートっていってもいい状態のような気がするけれど・・・


イラストレーターの展示スペースに来た時


ユウキ「なにこれ・・・すごいね」


カズハ「うん・・・どうやっているんだろう?」


そこに並んでいた絵は光と影の使いかたがきれいで見とれてしまいました。


ユウキ「たぶんペイントソフトのエフェクトを使うと出来るのだろうな・・・」


カズハ「そうなの?」


ユウキ「あ、スマホで見れるから一通りみたら休憩コーナーでみせるよ」


カズハ「あ、うん、お願い」


いままでの美術的な感覚で見ていた絵とは全くの別物でした


カズハ「こんなのが描けるんだね・・・」


ユウキ「うん、風景の透明感とか奥行きとか全然違うね・・・」


カズハ「私もこんな絵を描きたいな・・・」


砂浜に少女の人影があって空と海が広がっている絵の前で2人で時間を忘れて見とれていました。


休憩コーナーでユウキがスマホで動画を見せてくれました。


液晶ペンタブでラフスケッチをかいて人物を描いて風景をかいて色を入れ始める作業からは常識を覆されました。レイヤーという層をつかって絵を重ねているらしいのですが、絵の描き方の概念を崩された感じです。


ユウキ「ここから影と光を足して仕上げてるみたい」


カズハ「・・・・・・」(言葉がでない)


ユウキ「すごいよね、スマホの小さな画面で最初見たときは意味がわからなかったけど、大きな絵になっているとこんなにきれいにみえるんだから」


カズハ「もう一周回ってもいい?」


ユウキ「え?」


カズハ「展覧会」


ユウキ「ははは、いいよ。私も見たいかな・・・」


カズハ「イラストレーターってオタク向けの絵を描く人だと思っていたけど違うのね・・・」


ユウキ「そんな風に思ってたんだ?」


カズハ「世間一般的なイメージだと思うよ」


ユウキ「・・・そうかも」


カズハ「でしょ?」


ユウキ「でも背景専門の人もいるらしいからね・・・色々だと思うよ。」


カズハ「そうなんだ・・・」


砂浜の絵が印象に残りすぎてどうやってこの透明感を紙の上でだせるか・・・そんなことを真剣に考えていました。

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