第二章 地獄の番犬(3)


            3



 結局、明け方まで、隼はユルテ(移動式住居)に帰ってこなかった。

 レイがそうと知ったのは、翌朝、天窓から降り注ぐ光に目を覚まし、室内を見渡しても彼女の姿が無く、寝台に寝た形跡がなかったからだ。水汲みをしようと外に出た彼女は、ユルテの前に座っている鷲を見つけた。

 鷲は長い脚を投げだして腰を下ろし、遠くを眺めていた。伸びかけた無精髭が朝日に透け、彫りの深い横顔を金の光が縁取っている。

 オダ少年が神妙な様子で、彼の傍らに立っていた。


「おはようございます、ワシさん、オダ」

「おはよう、鷹」

「……ああ、おはよう、お姫様」


 鷲は振り返り、ちょっと驚いたように目をすがめた。オダより少し遅れて返事が来る。二人とも、表情は硬い。昨夜、彼等は、黙って隼を送り出したのだ。


「ずっと起きてらしたんですか?」

「ああ、いや」


 鷲は、微かに苦笑した。


「眠ったよ、ちゃんと。早く目が覚めたから、ぼうっとしてた。お姫様こそ、どうした」


 オダは元気がない。レイは、鷲と少年を交互に見て、声をひそめた。


「ハヤブサさんが、帰って来ていないんです。それで、私が水汲みに」

「ああ、そうか」


 鷲は平然としていたが、オダは、更に不安げに面を曇らせた。


「鷲さん。隼さんは、族長と、上手く話が出来たでしょうか」

「大丈夫だろ」


 鷲は、飄々と答えた。


「子どもじゃないんだ。それに、トグルが言葉が達者なことは、お前も知っているだろう?」

「はい。あの、でも。そういう意味ではなくて――」


 レイも、彼の返事は少年の意図から外れていると思った。わざとはぐらかそうとしたのかもしれない。

 当惑しているオダに、鷲は、苦々しく言った。


「お前が何を心配しようと、勝手だけどさ。心配するようなことは起きないと、俺は思うぜ」

「そうですか?」

「トグルは、そんな奴じゃない」


 断言する。口調は静かだが、レイは揺るぎない信頼を聴きとった。


「敵になっても、トグルあいつは隼を傷つける奴じゃない……。まして、互いに惚れているんだ。心配する必要はないと思う」

「でも、鷲さんは、心配しているんですよね?」

「……生き方が違うのは、結構、辛いからな」


 鷲は、綺麗に澄んだ若葉色の瞳で、少年を見詰めた。オダは、照れたように微笑んだ。


「解ります。僕も、族長と話をしていると、そう思いました。草原の人達は、みな、僕らと本質的には変わらない。なのに、民族が違うから理解し合えない、なんて……。隼さんに、僕を利用して下さいって、もっとちゃんと言うべきだったかな」

「そんなこと言ったのか、お前」


 オダがもごもごと呟いたので、鷲は片方の眉をひょいと跳ね上げた。少年は、頭を掻いた。


「族長は僕を相手にしてくれませんから、隼さんに仲介をお願いしたんです。隼さん、族長に会いにくそうでしたから。僕を口実にしてくれたらいいんですけど」

「お前は、それでいいのかよ」


 鷲は、愉快そうに言った。オダは、ますます照れて頬を赤らめた。


「隼さんが族長を好きなことくらい、観ていれば判ります……。族長のことは良く知りませんが、凄い人だと思っています。あんな人を敵に回すのは、嫌ですよ。隼さんと族長の仲が上手く行って、ついでに僕らも〈草原の民〉を理解出来れば、言うことないんですが」


『この子、そんなことを考えていたのか』 レイは微笑み、鷲と顔を見合わせた。鷲は、頼もしげに少年を眺めた。


「……大人になったなあ、オダ」

「そ、そうですか?」


 少年は真っ赤になり、身も世もなく照れた。鷲は苦笑して、あっさり付け加えた。


「そいつを口に出して言わなけりゃ、本物なんだけどな」


 オダが絶句したので、鷲は、くつくつ笑い出した。低い声を喉の奥で転がし、肩を揺らす。つられてレイも笑ったので、少年は抗議の声をあげた。


「鷲さん! 鷲さんだって、隼さんをけしかけたじゃないですか」

「俺は、あの二人がどうなろうと知ったことじゃない」


 意外に冷めた返事に、オダは拍子抜けして、瞬きを繰り返した。


「そうなんですか?」

「上手く行けばいいな、くらいは思ってる……。ただ、答えがどっちに転ぼうと、結論が出るまで奴等は苦しむし、出た後も苦しむことになるだろう。それを心配しているんだ」

「はあ」

「隼は、俺の妹みたいなもんだからな。トグルも……俺は、友人ダチだと思ってる。奴等に、俺の考えは伝えた。隼をけしかけたのは……腹が立ったからだ」


 鷲は、二人から視線を逸らした。眉根を寄せた横顔には、いかりより寂しさが窺えた。


「俺達は、子どもガキじゃない。トグルあいつの庇護を受ける立場じゃないんだ。それを、どう思っているのか……考えていたら、頭に来た」


 レイは、てっきり鷲は、氏族の運命を背負うトグルの生き方に腹を立てているのだと思っていた。そう言うと、彼は、眉尻を下げた。


故郷くにのない俺達は、どこへ行こうと異端者で、部外者だ。でも、トグルに関しては、そうじゃないつもりだ。何もかもあいつに任せて、平然としていられるわけじゃない」


 レイとオダは、彼の言葉の意味を理解するために、しばらく考えなければならなかった。

 鷲は、ぽりぽりと首の後ろを掻くと、地平線へ向き直った。


「俺達は天人テングリじゃない、生身の人間だ。自分てめえの好きな奴の側に居たいし、役に立ちたい……。なのに、トグルあいつが俺達を隔てるなら、何処へ行けばいい? 俺は、あいつの生き方が好きだし、認めてるよ。どうしたら、あいつの方は、俺達を認めてくれるんだろうなあ……」

「鷲さん」


 考えながら、オダはそっと声をかけた。鷲は、のほほんと少年を顧みた。


「んー?」

「鷲さんは、何を御存知なんですか?」


 晴れた空色の瞳を見詰め、鷲は頬をひきしめた。レイは、二人を順に観た。

 少年は言葉を選びつつ、ゆっくりと繰り返した。


「隼さんが、言っていました。鷲さんの方が、族長のことを良く知っているって……。最高長老とタオさんは、何かを隠している。鷲さんもですか? 何故、隼さんに、教えて差し上げないんですか」

「……俺からは、言えない」


 鷲は、慎重に答えた。


「トグルが黙っていることを、俺が喋るわけにはいかない。トグルが決めるだろう」


 少年は、不満げに眉間に皺を刻んだ。首をひねって考え、言い返した。


「僕には上手く言えないですけど……二人のことは、二人で決めるべきでしょう? 族長が、一人で決めていいわけじゃない」


 少年に向けた鷲の眼差しは、とても優しかった。そっと囁いた。


「俺も、そう思っているんだけどね……」


 鷲は、仕様がない、という風に肩をすくめた。


「隼は、物事を上手に訊き出すとか、やんわり説得できる性格じゃない。トグルも、優柔不断に見えるくせに、あの頑固さは只者じゃあない……。一度話をしたくらいで、どうにかなるとは思えないな。さて、どっぷり落ち込んで帰って来なきゃいいが」

「鷲さん」


 鷲の言葉に、オダの声が重なった。なだらかな丘の上に、葦毛にった隼が姿を現したのだ。

 馬は、速歩で帰って来た。出迎えた彼等を、隼は無言で見下ろした。


「よお。思ったより、早かったなあ」


 手綱を引いて馬足を止める彼女に、鷲はのんびり声をかけた。胡座を解き、片方の膝を立てて立ち上がる。朝露にぬれた草葉が、数本、長衣チャパンの裾に着いていた。


「どうした。トグルと喧嘩でもしたか? てっきり仲良くいちゃついてると思ったのに」

「……莫迦」


 レイはどうなることかと思ったが、鷲の冗談に、隼は苦笑した。落ち着いている彼女の声を聞いて、レイとオダは安堵した。


「奴等は、これから出陣だ。散歩がてら、偵察して来たんだ。オダ」

「はい?」

「トグルが待ってる」


 隼は、すらりと馬から降りた。紺碧の瞳が、ひときわ深く澄んでいる。きょとんとするオダに、冷静に告げた。


「お前のことを頼んでおいた。直接相手をするそうだ。この馬を貸すから、すぐに行け」

「え……ええ?」

「あいつのことを、知りたいんだろ?」


 目を丸くする少年を、隼は、怪訝そうに見返した。鷲が声を立てずに笑いだす。少年の意図は、完全に外れたらしい。オダは自身を指差し、ぱくぱく口を動かした。


「あたしに出来るのは、ここまでだよ。あとは、自分で何とかしろ」

「…………」

「大丈夫、とって喰われやしないよ。早く行かないと、置いて行かれるぞ。ユルテの場所は知っているだろう?」


 仕方なく、オダ少年は馬に跨った。隼が頷き、鷲が片手を振る。それで、少年は軽く一礼すると、危なっかしい手つきで手綱を引き、馬首を巡らせた。

 駆け去っていく背を見送り、隼は、両手を腰に当てた。肩をすくめ、曖昧に苦笑する。疲労の浮かんだ瞼を伏せ、頬にかかる髪を掻き上げた。


「……雉は、どうしている?」


 決まり悪そうに、彼女は訊ねた。


「寝ているよ、まだ」


 鷲は、胸の前で腕を組み、顎でユルテを示した。隼は、細い項に片手を当てて躊躇っていたが……ぽつりと告げた。


「ふられちまったよ、鷲」


 レイは、彼女に掛ける言葉がなかった。鷲は、淡々と頷いた。


「そうか……。で、どうするんだ? お前」

「どうしよっかね」


 他人事のように呟き、隼は唇を噛んだ。見ようによっては苦笑しているような表情で、首を振る。


「ひと眠りするよ。寝不足で、頭が働かない。このままじゃ、ろくなことを考えそうにない」

「それがいいな」

「昼まで眠らせて貰うよ。朝飯はいらない。……鷹、悪いけど、後のことよろしく。何かあったら、起してくれ」

「あ、はい」


 そう言うと、彼女は欠伸を噛み殺し、片手を振って歩き出した。すらりとした後ろ姿を見送り、鷲はレイを見下ろした。


「そんなにあっさり陥とせる野郎じゃねえか」

「ワシさん」

 おどけた口調に、温かな労わりを、レイはみつけた。隼の入って行ったユルテを眺め、鷲は眉根を寄せた。


トグルあいつの抱えたものが大きすぎて、俺達は追い付けない。その差をどうやって縮めるか、考える必要があるんだろうなあ」


 鷲は、面倒そうに空を仰ぎ、伸びをした。ぼきぼき首を鳴らしながらレイを見た瞳に、戸惑いが窺えた。


「それにしても……あいつらの心配しか、することがないってのは」


 彼の言葉が《タカ》に向けられたものだと、レイは気付いていた。オダと話をしていて、つい、そんな気分になったのだろう。

 返答に困るレイを、鷲は、照れ臭そうに見下ろした。それから、すこし寂しげに微笑んだ。



               *



 葦毛ボルテの背にると言うよりしがみつき、オダは、トグルのユルテ(移動式住居)を探した。周囲では、男達が出陣の仕度をしている。馬のいななく声、蹄を鳴らす音、くつわと剣のこすれる音などが響くなかを、少年は、唇を結んで進んだ。

 族長のユルテは見分けられなかったが、あるじの方は、すぐに判った。胸の前で腕を組み、両足をやや開いて立ち、彼はオダを待っていた。鷲に匹敵する長身を、見忘れられるものではない。

 オダが彼を見つけたのとほぼ同時に、トグルも少年を見つけた。傍らに、緊張した面持ちのタオもいる。馬を近づける少年を、トグルは無表情に迎えた。


 黄金の縁飾りの付いた黒の長衣デールに身を包み、同じ文様のついた帽子をかぶり、長剣を提げた姿は、荒くれた草原の男達の中にあって高雅だ。漆黒の髪が、精悍なかおを引き立てている。容赦なくこちらを見据える緑柱石ベリルの双眸に、オダは、痺れるような感覚を味わった。底知れないその深淵に、吸い込まれそうな心地がする。

 少年が馬を止め、びくびくしながら降りるのを待って、トグルは口を開いた。


「お前とは、切っても切れぬ悪縁があるらしいな……。その格好で行く気か?」


 隼は大丈夫だと言ったが――オダも、鷲にはトグルを認めるようなことを言ったが。やはり、本人を前にすると緊張した。小柄な身体を強張らせた少年は、トグルが少し当惑していることに気付いた。タオの表情は硬い。

 二人の視線につられて、少年は、自分の格好なりを省みた。


「いけませんか?」

「いけないと言うわけではないが――」


 トグルは唇を歪め、困惑気味に彼を眺めている。

 旅装とは言え、オダが身に着けているのは、どれも南国の麻や綿の織物で、〈草原の民〉の衣類とは生地の厚みから違う。裾広がりな上着の下に麻の脚衣ズボンを穿き、膝までの革製の靴を履いた少年の姿に、トグルは言葉を探している。

 タオが、兄に代わって、きつい調子の声をかけた。


「ハヤブサ殿は、何も仰らなかったのか?」

「急いで行けと、言われただけです。置いて行かれるから、と」


 トグルは苦虫を噛み潰し、オダから目を逸らした。口を開きかける妹を、片手で制する。やや呆れた口調だった。


「構うな、タオ。どうせ、身をもって知るだろう。*****、***」

「ラー。*****」


 トグルの言葉の意味が、少年はものすごく気になったが、黙っていた。タオは、じろりと彼を睨んでから踵を返した。ユルテへと歩いて行く。

 トグルは妹の背を見送ると、オダに視線を戻した。


「小僧」


 慌てて姿勢を正す、オダ。トグルの眸は、心なしか、面白がっているようだった。


「俺を知りたいと言ったそうだな。どういうつもりだ? お前、俺を殺すのではなかったのか」


 率直な問いに、少年は、咄嗟に答えられなかった。トグルは、彼を興味深げに眺めている。しかし、からかう風ではない。

 オダは、ごくりと唾を飲み、せいいっぱい虚勢を張って言い返した。


「そう言いました。今も、そのつもりです。でも、これは僕の使命とは別に、〈草原の民〉を知りたい。理解したいのです」

「…………」

「鷲さんや隼さんが、敵であるはずの貴方たちに、なぜ執着するのか――貴方に。その理由を知りたいのです。トグル・ディオ・バガトル。族長の貴方を理解できれば、貴方の部族も理解できるでしょう?」


 トグルは、わずかに眉根を寄せ、左手で鼻の下を擦る動作をしただけだった。骨張った手で口元を覆い、否定も肯定もなく少年を観る。

 オダは訊き返した。


「貴方こそ、どうして僕を呼んだんです? 無視して構わないのに。何故、僕を殺さないんですか」

「……ハヤブサが、そう言ったのか?」


 口元を覆ったまま、トグルは言った。独り言のような口調に、オダは戸惑った。


「はい?」

「取るに足らない相手だから、俺がお前を殺さずに居るのだと――そう思っている口ぶりだ。誰に、その様に吹き込まれた。ワシではなかろう?」

「え、ええ。ハヤブサさんです」


 トグルが何故そんなことにこだわるのか、オダには判らなかった。答えると、彼は顔を背け、舌打ち混じりに何事かを呟いた。横顔が、一瞬、拗ねているように見え、オダは驚いた。それは錯覚のように消えたが、意外さはすぐには消えなかった。


「……判ったラー


 些か決まり悪そうに呟いて、トグルは少年に向き直った。薄い唇に浮かんだ苦笑の名残を、オダは見逃さなかった。


「お前達がどのように俺達を見ているのか、察しがついた。我々遊牧民と、お前たち定住民の、考え方の相違も。――これで、答えになっているか? 俺もまた、お前達に対する理解を深めたいのだと言えば、信じられるか」

「…………!」

天人テングリは、関係ない」


 トグルが視線を動かしたので、そちらを見遣ると、タオが、手に黒い外套と革袋を提げて戻って来るところだった。

 トグルは少年に視線を戻し、単調に続けた。


「奴等に比べ、己が取るに足らない存在だなどと思うのは、止めろ。無用な考えだ……。俺達を理解したいのなら、覚えておけ。『使者は、その使命にって罰せられない』」

「使者は、使命によって――?」


 トグルは外套に袖を通し、タオが連れて来た黒馬の手綱を取り、頷いた。


「どんな使命を持って来ようと、使者に罪は無い。己の責務を全うしようとする者を殺すのは、騎士道に反する。――全ての遊牧民に、共通の礼儀だ。この礼に背く者は、死をもって罰せられる。逆に、使者を殺された者は、勝ち目がなくとも仇を報じなければならない」


 兄が言おうとしていることを察して、タオは目をまるくした。驚きのあまり声を出せずにいる少年と、ぼそぼそ言う兄とを、交互に見た。


「お前たち定住民は、すぐ、使者を殺す。その為に、過去、何度も避けられたはずの戦が起こった……。何故だろうと思っていたが。お前の様子を観るに、ニーナイ国の人間は知らなかったのだな。俺達にとって、それは、宣戦布告を意味する」


 トグルは、フッと嗤った。声を立てず、鋭く息を抜く。酷薄な嗤いは、少年の無知を嘲ると言うより、果ての無い虚無の淵を覗き込む慄ろしさを伴っていた。

 オダは、身体の芯がすうっと冷えるのを感じた。

 トグルの眼に、穏やかさが戻った。無表情に続ける。


「まだ、お前の国に、戦を仕掛けるつもりはない。そうであっても、お前を殺す理由はない……。使者は氏族全体の客人ジュチであり、客人を遇するのは、族長である俺の仕事だ。お前の自由と身の安全は、俺が保障する。――もっとも、」


 トグルは、地底から響くような声で付け加えた。


「お前に殺された後まで、お前の身を守る約束は、出来かねるがな」


 ふたことみこと妹に指示を出し、トグルは、黒馬に跨った。勇んで足踏みする愛馬を手綱でなだめ、少年に革袋を放った。


れ。お前は軽いから、それくらい、葦毛ボルテは平気だろう。お前の荷だ。……早くしろ」

「はい」


 名のとおり美しい青灰色の馬の背に、オダはよじ登った。

 少年のぎこちない動きをトグルは見守っていたが、鞍の上にオダが落ち着くと、黒馬を促した。外套と辮髪が仕草につれて揺れるのを、タオは、佇んで見送った。

 トグルは妹には一瞥もくれず、部下の待つ方へ馬を進ませた。後に従いながら、オダは振り向いた。いつもは敵意に満ちた視線を自分に当てているタオが、蒼ざめてこちらを見ていたのが印象的だった。


 タオは踵を返すと、見送りに来ていた長老達に向き直った。一度ふかく息を吸い、敢然と面を上げる。


氏族長会議クリルタイの指示により、本営オルドウを西へ移す。仕度せよ」




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