水森飛鳥と各ルートⅡ(東間未夜ルートⅡ・咲希へのプレゼント)


 東間とうま未夜みや

 桜咲さくらざき学園高等部の生徒会副会長にして、ヒロイン・桜峰さくらみね咲希さきの攻略対象の一人。

 基本的に真面目な性格ではあるが、楽しむときはきちんと楽しむと言った、その時々で切り換えるタイプ。また、腹黒い一面も持ち合わせており、容赦なく脅すことも厭わない。

 自分のやるべき事(生徒会の仕事等)を優先させるためか、他の面々とは違い、そんなに自分から咲希にアピールをすることは少ないものの、最終的に自身の想いに気付いた咲希とともにハッピーエンドを迎える。

 なお、正史では――……


   ☆★☆   


 さて、いつあるかも分からない桜峰さんと副会長のデートの下見というのが目的になったところで、横目で背後に視線を向ける。

 いつから居たのかは知らないが、こそこそ付いてこなくとも良かろうに。


「気になりますか? 後ろが」

「まあ、気にならないといえば嘘になりますが、ようやくお姉さん方がいなくなったな、と思いまして」

「ああ、確かに。いなくなりましたね」


 素知らぬ顔でそう返されたが、背後の尾行者たちに関しては、十中八九、この人が関わっていると思うのだが、私の気のせいか?


「とりあえず、ショッピングモールに来たわけですが……」

「じゃあ、咲希へのプレゼントを見繕いつつ、いろいろと歩きましよう」


 副会長がこういう場所に来たことがあろうが無かろうが、そんなの今は関係ない。

 桜峰さんが行きそうな場所を把握し、デート当日に実践、実行できるようにしておく。

 それが、今日の私のミッションである。


「それにしても、いろいろとありますね」

「こういう所は広いし、大きいですからね。昼食とかなら、飲食レストラン街で食べることもできますし」

「貴女も、こういう所にはよく来るんですか?」

「『よく』ではないですが、来ないことはありません」


 雑貨屋系の店や、いかにも女性がメインターゲットと言わんばかりの店を中心に見ていく。


「……そういえば、先輩」

「どうしました?」

「私、咲希と好みが違うんでした」


 考えれば、少し分かりそうなのに、何で気付かなかったんだろう。


「何、当たり前のことを言っているんですか、貴女は。貴女と咲希は別の人間なんだから、好みも違って当たり前じゃないですか」

「いや、そうなんですけど、そうじゃなくて。真逆とまではいきませんが、とにかく咲希と好みが逆なんですよ」


 可愛いものを好む傾向がある桜峰さんだが、私もそう嫌いではないとはいえ、そこまで好きとは言えない。


「説明にはなっていませんが……まあ、言いたいことは分かりました」

「なら、良いです」


 だが、どうしたものか。

 副会長なら桜峰さんが喜びそうなものを選べるとは思うが、私の意見で桜峰さんにそれを贈られて、彼女を困らせたくはない。


「……何です?」


 どうするべきかを考え込んでいれば、視線を感じたので、そちらに目を向ければ、副会長がじっとこっちを見ていた。


「いえ、普段口では文句などを言いながらも、何だかんだで貴女も咲希に甘いですよね」

「は……?」


 何言ってんだ、この人。


「もしかして、自覚なかったんですか? 貴女なら、察しているかと思っていたんですが」

「……自覚も何も、咲希を甘やかしているつもりはないんですが」


 確かに、彼女が困っているようなら、手を貸したりはしているが、今ではかなでちゃんや真由美まゆみさんたちも居るのだ。

 だからこそ、私一人の手を借りる必要などないわけで。


 だが、副会長は数回まばたきをした後、溜め息混じりに告げられる。


「『甘い』とは言いましたが、誰も『甘やかしてる』なんて言ってないでしょ。それに、貴女にそのつもりが無くとも、少なくとも僕たちにはそう見えてるってことですよ」


 何ですと……?


「でも、私は――って、文句はやめておきたいところですが、とりあえず一つだけ。あの子には厳しめに接しているだけです」

「いろんな条件を提示しながら、最終的に咲希と番号を交換した人の発言とも思えないですね」

「あの子の気持ちを無視したら、副会長たちが『何でしてあげないんだ』とばかりにプレッシャーを掛けてくるじゃないですか」


 だが、本人に自覚が有るのか無いのか、「そうですか?」と不思議そうにされる。

 いやまあ、この人は笑顔で脅すタイプでもあるんだろうけど。


「何もしていない人に、僕たちは何もしませんよ?」

「……」


 うわぁ、これだから自分たちの人気と影響力を分かっているようで分かっていないからやり過ぎるタイプの人は……


「……言いたいことがあるなら、聞きますが?」

「イエ、ナンデモナイデス」


 そして――やっぱり、この人は敵に回してはいけないタイプの人でもあるのでした。……はぁ。



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