水森飛鳥と各ルートⅠ(獅子堂要ルートⅣ・イベント終了)☆
さて、どうするべきか。
メリットとして、生存確率は格段に上がる。
デメリットは、せっかく逃げ出せた上に得られた武器を取り上げられ、監視が厳しくなることだろう。
私がこの先のやりとりを引き受けたとしても、会長のことを思うなら、部屋に引き返すべきだ。
(
声が出ない以上、使える異能は限られている。
想定内とはいえ、やっぱり異能のデメリットが大きい。
「あら、考えることかしら? 貴女、自分が私に勝てないと、直感で判断したんじゃないの?」
くそっ、バレてたか。
「それなのに、部屋に戻ろうとしないのは……監視が増えることと、せっかくこの場を脱出できそうな機会を失いかねないから。違う?」
ああもう、本当に恐ろしい女である。
――もうこうなったら仕方ない、か。
『それが事実だとしても、貴女は私たちをあの部屋に戻すために、立ちはだかるんですよね?』
人数が人数だから、“
「そうね。貴方たちに逃げられたら、私たちが困るもの。まあ、同じ女でありながら、あんな部屋に押し込められた貴女には同情するけど」
『……こちらとしては、同情してもらえるのなら、解放してほしいところですけどね』
もうね、本当そう。
「ごめんなさい。それは出来ないの」
『……』
「それにしても、貴方」
「女の子を戦わせて、自分は高みの見物とは良い度胸しているじゃない?」
「っ、」
「いくら彼女に戦う力があったとしても、少しは庇うぐらいの仕草を見せても良いんじゃない? ――人違いとはいえ、可愛い後輩なんでしょ?」
「それは……」
そもそも戦ってはいないし、翔子の言い分が間違ってるとか言うつもりはないけどさ、
……まさか、桜峰さんじゃないから、庇われたりしなかったとか?
『……せめて、後輩の部分だけでも肯定してくれるかと思ったんですが。私は後輩ですら無いわけですか』
「違っ……」
会長が中々答えないために、少しばかり翔子に乗っかって、
『まあ、どうでもいいんですけどね』
今更だが、
「あら、貴女。私の同情が欲しかったんじゃないの?」
『私は、一言もそんなことは言っていません。先輩に対する貴女の意見には、少しばかり賛同しましたけど』
「だったら……その剣を手放すか、その場に置いてくれないかしら?」
翔子の首筋に、私が剣の切っ先を向けたからか、彼女の視線がこちらに向けられる。
『でしたら、貴女の舎弟が動くのを止めさせてください。私とて、貴女相手にこんなことはしたくないので』
視線を翔子から会長の後ろへと、こそこそ動いていた
最初からこいつらの
「修人」
「っ、でも……!」
「いいから、下がりなさい。貴方が彼に何かをする前に、彼女が貴方に何かする方が多分早いわよ?」
先程の大音量が耳に残っているのか、翔子の言葉に修人は引き下がったので、私も剣を下ろす。
「……」
何か睨みつけられたけど。
それにしても、近くまで助けに来ているはずの連中が、まだ突入してこない。
まさか、やられてないよな?
「外が気になる? それなら――」
無事か全滅か。一体、翔子はどちらを言おうとしたのだろうか?
ただ、その続きが聞けなかった理由は――
「二人とも、無事ですか?」
にっこりと笑みを浮かべて現れた、我らが副会長様が盛大に建物の壁を破壊なさったからである。
☆★☆
「ねえ、
『……うるさい。ちゃんと聞こえてるから、耳元で叫ばないで』
溜め息を吐いて、先程のことを軽く思い出す。
副会長が強行突入したことで、確かに私たちは助かったが、翔子は「あらあら」と言いたげに、特に焦った様子は無かった。
その後、翔子は悪足掻きするかと思えば、まさかのまさか。あっさりと捕まった。
犯人たちに押収されていた携帯に関しては、
事情聴取に関しては、こちらを気遣ってか、また後日となった。
――で、今は鳴宮君と
「でも、声出せないんだよねぇ? メールとかで会話の返事打ってる間に、次の話題とかになってそうだし」
『まあ、早くても明日には出せるだろうから、今は我慢するしかないけどね』
私が昏倒させた人たちは、目が覚めただろうか。
でも、あの人たち。気づいたら逮捕されていたんだから、驚くんだろうなぁ。
「
茶化すことなく呼んできたので、鷺坂君の方に目を向け、「何?」と言いたげに首を傾げれば、
「
そう言いながら、穏やかな笑みを浮かべ、髪の毛を撫でられる。
『いや、大丈夫だけど』
「本当に?」
髪の毛を撫でていた鷺坂君の手が、指が頬に触れる。
『それよりも、君。何か変なものでも食べた?』
「えー、飛鳥先輩。せっかく助けたっていうのに、その態度って酷くなーい?」
『そこについてはお礼を言うけど、君に助けを求めた覚えはない。あと、一番活躍したのは副会長でしょ』
「むー」
不機嫌そうに、納得いかないと言いたげに、鷺坂君は唸る。
「でも、本当に無事で良かった」
右を向けば、鳴宮君が言葉通りの気持ちを乗せたような笑みを浮かべていた。
『……ご心配掛けました』
正直、来ない面々の方が多いかと思ったけど、生徒会役員みんな来るとは思わなかった。
……それが、たとえ私よりも会長を助けるために来たという、理由だったとしても。
ちなみに、この場に不在な会長と副会長、
副会長にも似たようなことを威圧するような笑顔で言われたんだけど……うん、怖いから従いました。
そして、鷹藤君からは同情的な目を向けられました。「お疲れ」って、どっちの意味で言ったのかなぁ?
「
『それは、分かってるんだけど……君は私の保護者か何かなの?』
思わず呆れた目を向ければ、笑って誤魔化される。
「んー? 飛鳥先輩も、咲希先輩と同じくらい、大切な先輩ってだけだよー?」
褒められてるんだか、貶されているんだか分からないが、何だか背後からの気がヤバいので、恐る恐る振り向く……うん、見なかったことにしよう。
「もー、
よしよしと、どさくさ紛れに抱きしめてくる後輩庶務に、鳴宮君の表情がどんどん変化していく。
「いいから、その手を離せ」
「えー」
「は・な・せ」
そんなに強く抱きしめられていたわけじゃないから、鳴宮君が私から鷺坂君の手を簡単に引き剥がす。
『……とりあえず、あそこに自販機あるから、二人で先輩たちの分も買ってきたら?』
「え?」
「でも……」
『お金なら、後日渡すから』
「いや、そういう問題じゃないんだけど……行くか」
二人が出て行ったのを確認し、背もたれに
そして、目を開き、
送信し終えれば、鳴宮君たちが戻ってくる。
『ありがとうね』
――助けに来てくれて。
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