水森飛鳥と短いようで長い修学旅行Ⅲ(一日目の夜)
「さて、お待ちかねの自由時間だね。何する?」
彼女の言う通り、宿泊場所に戻り、夕食を終えた今は自由時間である。
「トランプでもする? どうせ明日も一緒のメンバーなんだし、定番の恋バナは明日にしておく?」
「でも、答えを先延ばしにされたくはないからさ。今答えなくても、明日には答えてもらう方式にする?」
どうでも良いから、少し寝たい。
明日辺り、起きてないといけないし、向こうとも行き来しないといけない。
「
「何かずっと、ぼうっとしてたけど」
「ん、大丈夫……」
っていうか、こっちじゃ宿題が無ければさっさと寝て、向こうでゲームとかしてるからなぁ。
だから、起きていられないこともないんだけど、やっぱり疲れているらしい。
明日は
「じゃあさ、これだけ答えて」
「何かな?」
「
「
「恋愛感情とか無いの?」
その辺はそう言われてしまうと微妙であるが、多分、夏樹もそんなには意識していないと思う。
たとえ『あの時』以降は一緒に居るようにしているとはいえ、だ。
「
「え?」
「あんなに役員たちに囲まれているんだから、一人ぐらい良いなぁって思う人は居ないの?」
「そんなこと、無いよ。好きだって言ってもらえたこともあったけど、友達としてだろうし……」
もしかして、春のあの時の会話のことかな?
そして、これは副会長に教えた方が良いのか? 分かっていそうだけど。
「私たちから見れば、どこからどう見ても、役員たちは貴女が恋愛的意味で好きなように見えるけど?」
「そんなこと言われても……みんなを恋愛的な目で見れないし……」
けど、分かっていたとはいえ、この時期になっても何の反応も無いとは……少し、厳しくなってきたか?
神様からは、「逆ハーにならないようにしてくれ」と言われているわけだから、私たちとしても、この状況は良い方のはずなんだけど。
――何か、嫌な予感がする。
「飛鳥ちゃん、大丈夫? 私たちのことは気にせず、先に寝たら?」
「そうだよ。明日倒れでもしたら、大変だからさ」
「私も大丈夫だよ?」
三人がそう言ってくる。
今日一日だけで、桜峰さんと奏ちゃんたちは随分と仲良くなれたらしい。班決めの時よりも緊張はしていないみたい。
「ごめんね。先に寝させてもらうよ」
そのまま、
「……喉、
目を開ければ、真っ暗だった。
けど、喉が渇いたからお茶を取りに行く。
「……はぁ」
小さく息を吐いて、時間を確認すれば、一時だった。
いつもなら、まだ起きている時間だけど、明日のことを考えると大変だろうから寝なければ。
『――無理しちゃ駄目だからね?
「……」
聞こえてきた声を無視して、先程まで居た布団へと戻る。
――私は、
耐えられなくなるその時までは、貴女の出番は無いからね。
「だからまだ、ゆっくり待ってれば良いよ」
そのまま、目を閉じる。
残り時間は――四ヶ月半だ。
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