水森飛鳥と波乱の学園祭Ⅲ(二人で見据える未来)
「それじゃ、行こっか」
あの話の後、あのまま
彼女の隣には、
ああもう、せっかく二人っきりにさせようと思っていたのに、これでは意味がない。
「いや、行こっかじゃないし。腕掴まないでほしいんだけど」
とりあえず、桜峰さんの手を腕から外す。
「
「いや、
俺まで巻き込むなと言いたげな目を夏樹から向けられるけど、今は無視だ。
「じゃあ、私も手伝うよ」
「夏樹いるから、大丈夫だし。すぐ終わるから、ね?」
どうしても離れたくないらしい桜峰さんに言い聞かせるかのように言えば、不服そうにしながらも納得してくれたらしい。
「それでは、副会長。咲希のこと、お願いします」
「ええ、分かってますよ」
副会長に桜峰さんのことを頼めば、笑顔で頷いてくれた。
もしかして、気を使ったこと、気づかれた?
そのまま夏樹の背中を押して、その場を離脱すれば、ある程度離れた場所で二人して息を吐く。
「また、凄い嘘ついたな」
「あれ以上、食い下がられたら、正直危なかったけどね」
もし食い下がられていたら、あれが嘘だって、バレるところだった。
「私さ、桜峰さんは嫌いじゃないけど、ああやってグイグイ来られるの、苦手なんだよね」
「お前の性格からすれば、そうだろうな」
さすが幼馴染である。よく分かっている。
「ん、ごめんね。付き合わせて」
「気にするな。それに今更だろ」
そりゃそうだ。夏樹だって、転入して数週間は付き纏われていたんだから。
「それで、この後どうする? 一緒に回る?」
「そうだなぁ……」
夏樹が天井を見上げる。
「そうするか」
「じゃあ、行きますか」
その場に座り込んでいたため、二人して立ち上がる。
「どこから見て回る?」
「う~ん……なら、
「冗談でしょ?」
確かに、時間があれば行くとは言ったが、夏樹と二人の場合だと何か行きにくい。
体育祭準備の時の会話が良い例だ。あの時みたいに、またギスギスされては溜まったものではない。
「冗談だが?」
「……」
思わず頬を引きつらせる。
「ま、見に行けるところまで見に行こうよ。次の人次第では、桜峰さんと合流しないといけないし」
「ちなみに、桜峰と二人っきりにさせる予定の奴には誰がいるんだ?」
「さっきの副会長で、予想付いてはいると思うけど、三年コンビ。
「ああ、そういうことか」
ループしている限り、三年生が卒業することはない。
今後どうなるかは分からないけど、もし私たちの番でループが終われば、今後も三年コンビが桜峰さんと一緒に居られるのかは分からない。
「あー、よく考えなくとも、俺たちも来年は受験生なんだよなぁ」
「そのことなんだけど、前に鳴宮君とも話した。進学するか、就職するのかって」
「で?」
「上手く誤魔化しておいた」
そうか、と返しつつ、夏樹が息を吐いた。
「
「その辺も確認しないと駄目だね」
この騒動が終わった時のことを思えば、確認しなくてはいけない。
進路を決めなくてはいけないのは、あちらだけなのか、こちらでも進学及び就職先を探さなくてはいけないのか。
「……夏樹はさ」
「ん?」
「何かしたいことはあるの?」
「何だよ。いきなり」
夏樹が怪訝そうな顔をする。
「いや、さ。小さい頃はなりたいものとかあったのに、いざ将来を決めるとなったら、私たち迷ってるじゃん」
「いろいろ経験したからじゃないのか? 成長したともいえるが」
「かもしれないね」
そう同意しつつ、多くの声が聞こえてくる方に足を向けた。
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