水森飛鳥と波乱の学園祭Ⅱ(呼び出された、その内容は)


「で、来たメールの内容は?」


 私が携帯を確認した理由。

 それは、我が幼馴染、夏樹なつきから送られてきたメールだった。


『神崎先輩からのメールが来た』


 ただ、その一文だけである。

 こうなると、気になるのはその内容であり、私はあの場から離脱した後、以前、昼休みに使った空き教室を待ち合わせ場所とし、そこで待っているようにメールを送っておいた。

 で、今に至る。


「お前が、桜峰さくらみねたちから解放される口実を作ってやった自覚はあるが、そこまで清々しそうな表情をされると逆に引くし、桜峰を呼ぶぞ」

「ごめんなさい」


 夏樹の指摘通り、どうやら私は少しばかり舞い上がっていたらしい。


「で、だ。メールの内容、だったよな」

「うん」


 該当メールを探し、見つけたのか、夏樹が「ほら」と渡してくる。

 内容の冒頭はこんな感じだった。


『本当は、水森さんの方にも送りたかったけど、今は時間がないので、後で彼女にも見せて、情報の共有をしといてください』


 その下に、神様こと神崎かんざき先輩の言葉が記されていた。


『現在、そちらの時系列は学園祭当日だと思う。そこで、ちょうどいい機会だと判断し、君たち二人の、君たちより先にその世界に行った先輩二人と話が出来るようにしてみた。先輩二人には、場所と時間を含め、すでに連絡済み。問題の時間と合流地点は……』


「明日の、空き教室……?」


 はっきり言って、驚いた。

 まさか、神崎先輩がそんなことをしてくれるとは思っていなかったから。

 それに、空き教室なんて、文化部の部発表で使われているのを除けば、今居るこの場所を含め、数は限られてくる。


「明日が一般公開だって分かった上で、これ?」

「だろうな。仮にも神だから、こっちのこともそれなりに把握してるんだろ」


 確かに、そうじゃなきゃ辻褄が合わない。


「ん、ありがとう」

「ああ」


 とりあえず、夏樹に携帯を返し、改めて思案する。

 会うのは良い。話すのも、私の異能で洩れないようにすれば問題ない。

 もし、問題があるとすれば――


「妨害工作にどう対応するか、か?」

「うん。今の私たちはともかく、先輩たちには警戒も含めた目が届いてるはずだし」


 自分たちよりもこの世界について知っているはずだから、おそらく大丈夫だとは思うが、やはり貴重な味方を失いたくはない。


「大丈夫だ」

「え……」

「俺たちよりも、この世界をよく知る二人だ。きっと上手く機転を利かせてくれるはずだ」


 だから大丈夫、と夏樹は言う。


「それよりも、明日のことだ。質問内容を纏めたり、隠し連中が来たかどうかの確認もいるだろうし……」

「あと、本番」

「だな」


 そう、本番も明日なのだ。


「とりあえず、明日はお互いに頑張ろう」

「ああ」


 とにもかくにも、明日はやることが多い。

 気合いを入れ直して、無理しない程度に出来る範囲で、事を進めよう。

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