水森飛鳥と波乱の学園祭Ⅳ(文化祭二日目)
「ほら、本番までまだちょっと時間があるからって、油断しない。大道具小道具最終確認、舞台に立つメンバーは今の内に台詞の最終確認しておいて。最初からミスるわけにもいかないから!」
文化祭二日目。劇の本番となる午前ラスト――十一時三十分まで、まだ時間があるとはいえ、油断禁物とばかりに委員長が指示を飛ばす。
裏方で音響担当の私でも、ここまで来ておきながらミスするのは嫌だからね。
「委員長。音響関係は大丈夫みたいです」
「そう。ご苦労様」
「
委員長に報告すれば、横からいきなり飛び込んでくる。
「何かな?」
「楽器の
「その楽器がギターとかなら、私がやる必要もないだろうし、特に問題ないとは思うけど?」
「いや、まあ、それは……とにかく、一緒に来て!」
手を引っ張られたので、そのまま大人しく付いていく。
「あ、見つけた!」
「先輩。僕たちの楽器、調律してもらえませんか?」
「ちょっ、何で次から次に来るの!?」
思わず手を握って引っ張っていく彼女に尋ねてしまう。
「そりゃ、
「合唱部や吹奏楽部に頼めばいいじゃない!」
同じ音楽関係なんだから!
で。結局頼まれた調律をするために、あちこち走り回っていれば、劇開始ギリギリとなってしまったものの、何とか間に合った。
「ごめん、
「いいよ。間に合ってくれたんだから」
奏ちゃんはこちらでの友人で、以前話した中立の立場の子である。
ちなみに、
「……ねぇ。ここに来る前に、誰かあの子見なかった? 桜峰ちゃん」
嫌な予感、的中!!
まだ来てないのか!
「大丈夫?
「……大丈夫」
委員長が桜峰さんの名前を出したタイミングで、机に額をぶつけたから、かなり痛いのは当然だが、それよりも、だ。
「委員長。呼び出してみますから、少し待ってください」
とりあえず、委員長にそう言って、桜峰さんに携帯で確認を取る。
本当、交換しといて良かった。良かった。
そして、数回のコール音。
『……ピーッと言う発信音の後にメッセージを……』
やっと繋がったかと思えば、出ないどころか留守電だし。
思わず携帯を握りつぶしそうになったけど、そこは何とか耐えました。
「ねぇ、委員長」
「な、何かな?」
「桜峰さんの出番まで、大体で良いから教えてくれない?」
「あ、ちょっと待って……」
簡単に台本と時計を確認する委員長の返答を待つ。
「代理を用意したとしても……約二十五分ぐらいかな?」
「分かった。じゃあ、捜してくる」
「え、音響の仕事はどうするの?」
そう聞かれて、奏ちゃんを見れば、「大丈夫」と言ってくれた。
「そりゃあ、早めに戻ってきてくれた方が早いけど、三十分以内なら何とか乗り切ってみせるよ」
「本当にごめん。早く見つけて、戻ってくるから」
そんな彼女たちに見送られながら、私はこの場を後にした。
あのお姫様が今何をやっているのかは知らないけど、ちゃっちゃと見つけて表に引きずり出さないとね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます