???は高らかに嗤(わら)う


「うっふふふ」


 ああ、先程からずっと顔が緩みっぱなしな気がする。

 今の私は情けなく、気持ち悪いぐらいににやにやと笑みを浮かべていることだろう。


 ――だって今この瞬間、私にとっては嬉しいことこの上ないのだから。


 ちなみに、周りに人はいない。

 今いるのは、そもそも人が来るような場所じゃないし、私と一緒にいるなんて、奇特な人間はいない。


「うっふふふ」


 ああ、笑みが止まらない。

 何度も何度もしつこいぐらいに邪魔してくるあの男・・・


「ああっ、長かったっ……!」


 思わずそう言ってしまった私は、悪くないはずだ。

 あの男は私の邪魔をするためだけに、何度も何度も人を送り込んできたのだから。

 今回やってきた子だってそう。

 本編が始まる一年前から、この世界に・・・・・存在させた・・・・・上に、加護の重ね掛けまでしていたんだから、用意周到としか言いようがない。実際、私自身も今に至るまで、かなりてこずったし。

 でも、結局それは無駄足に終わったわね。あの子がいなくなった以上、あの男は次にどのような手段で来るのかしら?

 ああ、一体どのような手段で来るのかが楽しみで仕方がない。


「まだまだよ」


 シナリオはまだ、終わってはいない。

 悪役やライバル、隠しキャラやサポートキャラは全て、咲希あの子の引き立て役にして逆ハーレム要員でしかないのだから。

 それにしても――


「邪魔だったなぁ」


 攻略対象の一人が、サポートキャラと化していたあの子に近づいたのは予想外だった。

 さすがあの男が送り込んだ者なだけはある、とは思ったけど、このままでは咲希ヒロインが逆ハーレムエンドを迎えられないと気づいたら、彼女が邪魔になった。

 本来ならシナリオの持つ強制力などに頼ったり、使ったりすればいいのだが、さすがにそれが働くまで待つとなれば、いつまで待てばいいのか分からない。


 だから、今回は私の手で・・・・、ほぼ強制的に排除したのだ。


 『七夕祭』というイベントは終わった。

 ここからは、運命の分かれ道。

 これから迎えるであろう夏休みに、その後の二学期と様々な学校行事。


「個別なら分岐点が出てくる時期なんだろうけど……」


 私が願うエンドは逆ハーレムエンド。


「絶対に邪魔なんてさせない」


 そして、延々と続けるのだ。この愛に溢れた箱庭生活を――


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