第97話 ダンジョンマスターの存在をバラす
ワ国のギルドに所属する
若干タレ目気味である瞳の色は赤く肌の色は若干青みがかった白。笹穂状の耳はエルフの印。
そして首には魔道具らしい太いチョーカーを嵌めている。
ちなみに太いチョーカーの下には魚類のような鰓があり、水中でも息をすることが出来る。
彼女は水陸両用のエルフ。シーエルフと呼ばれる種族の女性が、手にした琥珀色の石を器用にお手玉しながら断層の向こうのフロアを眺めている。
琥珀色の石は、鑑定をかけると『ラージアントの匂い石』と鑑定できたので、これが新しいダンジョンへのキーアイテムだということが解る。
このダンジョンが初級・中級ダンジョンだという看板に偽りは無かった。
最下層に到達するのに3時間もかからなかったからだ。
問題は、ラージアントの匂い石を拾ったフロアにある弾倉の向こう側でいろいろな形のラージアントを相手に稽古をしている女の存在だ。
「なんだありゃ?」
もう何度この言葉を発しただろうか?
断層の向こうにいるのは耳が笹穂状ではないのでエルフではない。背が高いのでドワーフでもない。おそらく耳の形から
不意に断層の向こうの女がマスクを外す。マスクの下から現れたのは下顎の二本の牙。やはり
「ちょっと待ってろ」と女の口が動く。
「何だ?」
目を凝らした瞬間、女の姿が陽炎のように歪み消える。
「待たせたな」
不意に耳元で声がして、アリエルは本能のままに腕を上げる。
ぎゃん!アリエルの籠手と女の手にいつの間にか握られていたダガーのようなモノのぶつかる鈍い音が響き渡る。
「さすが
「鑑定された!?ならば・・・くっ。鑑定が基本のところしか通らない」
アリエルは自分のランクを言い当てられて驚くのと同時に女を鑑定する。しかし種族オークで性別が女。職業忍者しか判らない。
つまり対峙している女が自分よりレベルの高い厄介な相手であると認識する。
「しかも忍者だと?」
アリエルは叫んだ。
-☆-
「しかも忍者だと?」
目の前の
よし。
高レベル冒険者を相手にウチのダンジョンが情報偽装できるかどうか?こればっかりは高レベル冒険者を用意しないと確かめようがなかった。
伝手も依頼できる
「見せて貰おうか
腰のベルトに挿していた苦無を指で引っ掛け、アンダースローで肩口目掛け投擲する。
ぎん
ナイフによって苦無は弾かれるが、ナイフはその代償として大きく刃を欠けさせていた。
「武器を破壊するとか、本当に
煽ってみる。アリエルにとってナイフは得意な武器ではないにせよ武器を破壊されるのは不本意だろう。
「武器さえあれば!」
「おやおや。自分の不手際を愚痴るとはらしくないのでは?」
「くっ言い返せない・・・」
アリエルはエルフ特有の笹穂の長い耳がションボリ垂れる。意外に素直だな。
「そこまでへこまれるとなぁ・・・お前の得意武器はなんだ」
「短弓とウッドソードだな」
「エルフといえば
思わず聞き返す。エルフのお約束なら
「事前に鎧を着た人間が相手と判っていれば刺突武器も選択肢だが、モンスター相手に突くはないわー」
意外にまともな答えが返ってくる。
「ウッドソードってなんだ?」
「神聖樹の枝を削ってつくった模造剣だな。棍棒とか言う奴もいるがな」
アリエルは肩をすくめて笑うが、なるほど木刀か。魔法も行使するなら武器として鉄器は選択外か。
魔法を使うのにナイフは良いのかと聞くと、ナイフ程度では魔法の行使に影響はでないらしい。あとナイフは毛皮の剥ぎ取りや食材の切り分け用らしい。
それでも増長しすぎだと指摘したら、事前情報ならナイフで十分だと、イザとなれば逃げればいいと返される。
そういえばラージアントは倒したんだっけ・・・
「ちょっとまって・・・」
俺は思念を飛ばし
なるほど、ナイフで牽制しつつ風魔法のウインドカッターで足の間接部分を斬り飛ばして行動不能にさせたのか。いいアイデアだ。
「うん。大体わかった。出直しておいで。わっちは奈落からあっちが縄張りなんだ」
そう言って俺は奈落・・・ダンジョンに横たわる断崖絶壁の向こう側に転移する。
「貴女・・・このダンジョンのダンジョンマスターか?」
「ご想像にお任せする」
アリエルの問いにそう答えると
異世界でギルマス兼ダンジョンマスターになりました。 那田野狐 @nadanofox
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