第94話 閑話 サンタ88 中編
シン・カズマは異世界人である。
皇紀2599年4月に初飛行し皇紀2600年に正式採用された零式艦上戦闘機一一型のパイロットだった。
カズマはラバウルでの作戦に参加している最中に、気が付いたら雲の中にいた。
慌てて雲の上に出て、驚いた。
蒼穹の空の中、たくさんの飛行機が葬式のように列をなしているではないか。
やがてカズマの飛行機は飛行機の葬列に入り、門を潜る。
気が付いたら、カズマは自分の足で歩いていて、目の前に訓練中の事故で死んだハズの上官と対面する。
「ああ」と思わずため息をつく。カズマは自分が死んだことに思い至る。
「秦和真曹長。この書類にサインを」
上官が一枚の紙ではない書類を差し出す。
カズマは、上官が敵性語を使ってるなどと思いながら書類に自分の名前を書き入れる。
「秦和真というのか」
書類を受け取った途端、上官の姿がふくよかな樽型体形の総白髪の髭爺になっていた。
「儂の名はサキ・バシリ・トロロ。チュウカナ大陸天空基地サンタ88の司令官だ」
「はあ・・・」
カズマは思わず気の抜けた返事をしてしまう。
「ふん。今日からお前はカズマだ」
髭爺は書類に書かれた秦和真という文字に手をかざす。
すると秦和真という文字がバラバラになり、カズマという文字を形どる。
「これからお前は白金貨12枚(青銅貨1億2000万枚)の違約金を払うまで元の世界に戻ることが出来ない。しかも老いることも死ぬこともできない」
サキは羊皮紙をカズマにつきつける。
「お前の仕事はダンジョンから溢れるモンスターを狩ることだ。なに空からモンスターを撃ち殺すだけの簡単なお仕事だ」
それからシンはソリに乗って各地を巡回。ダンジョンでスタンピートが発生すると暴走するモンスターを刈っていた。
なので、鬱蒼とした森の奥深くに開いていたダンジョンの入口を見つけたのは偶然ではなく必然だった。
「スタンピート?」
シンはダンジョン入口でモンスターが出入りしていることに気付いた。
「厄介な・・・」
シンはメッセージの魔道具を起動させる。
「サンタ88管制塔。チュウカナ大陸、南西部大森林部。ポイントK3P19にダンジョン入口発見。こちらサンタ・ケルケロ隊カズマ」
『こちらサンタ88管制塔。ポイントK3P19にダンジョンは確認されていない本当か?』
珍しく管制塔が返事を返してきてシンは驚く。
「こちらサンタ・ケルケロ隊カズマ。間違いない映像を送る。視認でレベル3相当。フリッツXの使用許可を願う」
『こちらサンタ88管制塔。映像確認しました。レベル3相当確認。フリッツXを許可します。今日のシンのアイテムボックス封印解除コードは、わたしメリーさんいま貴方の後ろにいるの』
「こちらサンタ・ケルケロ隊カズマ。了解」
シンはソリをダンジョン入口に向けるとアイテムボックス封印解除の呪文を唱えスピードを下げる。
「ターゲットスコープオープン」
トナカイの角と角の間に照準器が現れる。
照準器に白い十字と4つの三角形が現れ複雑に動き出す。
「アイテムボックス。無属性魔法弾を装填」
ガコン
ソリの下に箱型尾翼とX上に配置された翼を持つ弾丸状の物が現れる。
「フリッツX・・・投下」
シンがボタンを押すとフリッツXと名付けられた物がソリから切り離されて空を滑空する。
やがて尾翼からフレア炎が発せられフリッツXはグングンとダンジョン入口を目指す。
ボム
グモッた鈍い音が響きダンジョン入口から炎が噴き出すと、ガラガラと音をたてダンジョン入口が崩れた。
「こちらサンタ・ケルケロ隊カズマ。ダンジョン入口を封鎖した」
『こちらサンタ88管制塔。破壊確認しました。金貨20枚おめでとう』
「ダンジョンコアは死んでないだろうが、調査隊を頼む。サンタ・ケルケロ隊カズマ以上」
『了解。サンタ88管制塔以上』
シンはメッセージの魔道具を切った。
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更新が遅れて申し訳ありません。そしてまさかの引き・・・次、なるべく早く更新します。
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