第91話 SIDEヤエ ラージアント討伐
ズズッズズッと鈍い音を立てながら、少しずつ少しずつ壁が横にスライドしていきます。人が一人やっと通れるかといった狭い通路です。
「隠し通路か…進むかい?」
シンさんの言葉に全員が頷きます。ここまで来て後戻りはできません。
ますシンさんを先頭に隠し通路を進みます。
10メートルほど通路を進んだでしょうか、唐突に道の先が広がっているのが見えます。
「扉はないのか」
ジリジリと通路の端まで進みます。
「うわぁ・・・ついに見つけたよ。ラージアントがいる。数は一匹」
ピカピカに磨き上げた鉄で出来た鏡で通路の外を覗いたフォングさんが唾をのんでつぶやきます。
あと、頭が大きいラージアント(たぶんシールド)のようで、通路の中に入ることが出来ないだろうと。
「仲間を呼ぶ前に倒す。ダメなら即撤退。いいですね」
シンさんの決断で部屋の中に飛び込みます。
「部屋には・・・他に扉あり。部屋の中間に断層あり」
「ラージアント3匹。うち2匹は断層の向こう。断層を飛び越えることが出来るかは不明」
事前に取り決めていたように周囲の情報が告げられます。
「わたしが攻撃を受ける4人は側面後方から攻撃。ヤエは回復と防御の支援」
「「「「「了解」」」」」
一斉に配置につくと、シンさんは
「昆虫は外殻で身を守ります。硬いので、継ぎ目を狙うか鈍器で殴るのが効果的です」
「「「「「了解」」」」」
わたしの指示に全員が応えてくれます。
「アンカーヘイト」
シンさんがヘイトを集中させるスキルを発動さるとラージアント(シールド)の視線がシンさんに向きます。
「硬化、クイック、
・・・
・・
・
30分ほどの激戦の末、ラージアント(シールド)が大きくふらつくところまで来ました。
こちらも満身創痍です。
それ以上に怖いのは、ラージアント(シールド)が呼ぶたびに姿を現した断層の向こうにいる10匹のラージアント。
「これで」
わたしは「どん」と足を踏み出し、床石を踏み抜き、身体を捻ってラージアントに背中をぶつけます。
「鉄山靠!」
どごん
凄まじい音が響き渡り、ラージアントの胸の外殻が大きく凹み壁まで吹っ飛ばされました。
「うおりゃあぁ」
マリさんが両手の盾をラージアントの頭に叩き込むと、ラージアントの全身がキラキラと光り出します。
やがて手のひら大の石とふたつの大顎、ひとつの頭部外殻が床に落ちます。
「勝ったのか・・・」
大顎のひとつを拾い、シンさんは口の端を吊り上げます。
「あ、あそこ床が光ってます」
マキちゃんが指さしたところの床が虹色に光ってます。
あれがユウさんの言っていたラージアントの巣と裏ダンジョンの接続地点に飛ばされる
「ラージアントの匂い石ってなんでしょう?」
マリさんが首を傾げます。たぶん鑑定レベルが足りなくて名前しか解らないのでしょう。
「あの床、踏んでみます?」
「いや、戻ろう。これ以上は準備が足りない」
フォングさんの提案にシンさんが頭を振ります。
初心者3人を連れてのこれ以上のアタックは割けるべきと判断したようです。
ラージアントの発見と討伐という称号がギルドカードに記されることになりました。
余談
「ヤエさん。本当にラージアントの匂い石でいいの?」
戦利品の山分けの結果にマリさんが申し訳なさそうな顔をします。
地上に戻ったわたしたちは次のようにアイテムを山分けしました。
シンさんは絶命の
マリさんはラージアントの盾。(頭部外殻に取っ手を付けただけですが)
マキちゃんはブルーアパタイトの解毒の指輪。
シべリくんとフォングさんはラージアントの大顎。
シべりくんは大顎を素材として売るそうでフォングさんはユウさんに短剣にしてもらうよう加工依頼をしていました。
そしてわたしはラージアントの匂い石です。
「ユウさんが、アリ除けになるだろって」
「へえ。ああ、もしかして石を持っているとあの謎床が安全に踏めるのかな?」
おお、なかなか鋭いですね。
「それはまた後日改めて調べよう」
シンさんが提案します。そうですねそうしましょう。
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