第90話 SIDEヤエ 隠し扉

パンパン


地下6階の祭壇の前で私たちは二礼二拍手一礼を行います。

よくみると入口が鳥居を模してますね。

異世界日本人ホイホイでしょうか?


祭壇に置かれたギルドカードが光り出します。

これでこのダンジョンを攻略したことがギルドカードに記されました。

どういう仕組み何でしょうか?


「ラージアント居なかったね」


「もう一周してみるか?」


マリさんとシンさんが何やら周回する方向で話をしていますが・・・


「ダンジョンが変質しています。情報を冒険者ギルドに上げる方が先ではないでしょうか」


ほかの三人ではこういう提案できないでしょうから私からします。


「ああ、そうだね」


シンさんが苦笑いをします。最初のラージアント討伐という栄誉が欲しいのでしょう。

まあラージアントさんも空域を呼んでくれますよ。多分。

祭壇のある部屋を丹念に調査したあと、6階に降りてくる階段がある小部屋に続く通路に向かいます。

地下6階は6階に降りてくる階段を出発点にぐるりと回る構造になっているんですよね。


「結局、地下6階は転移床以外は変化がありませんでしたね」


マリさんはコンコンと壁を叩きながらつぶやきます。

壁を叩いたときの反響音で、壁の向こうに空洞があるかどうかを調べているのでしょう。

レンジャーであるフォングさんも反対の壁で同じことをしています。

無論わたしもやっています。

そして地下5階に上がる階段まで戻って来たとき、わたしは教えて貰っていた階段を少し昇ったところの西の壁をそれとなく叩きます。


「マリさんフォングさんちょっといいですか?」


「「どうした」の」


先に階段を昇っていたふたりが、続いてシンさんとマキちゃんとシべリくんもやってきます。

わたしがコンコンと壁を叩くと、マリさんが視線を鋭くしました。


「階段途中に隠し扉?」

 

フォングさんは壁に指を滑らせ、なにかを感じたらしく、腰のポシェットからT字の金属板を取り出します。

ずっと、石の隙間に金属板を差し込み、横に少し引くと、階段を降りきる少し前の壁が横に僅かにズレます。


「普通、壁を叩きながら階段を降りるヤツも昇るヤツもいないよな」


「ヤエさんの斜め上の行動のお陰ですね」


痛い。5人の視線が痛いです。


「罠はありそうかな」


「ないね。開けるよ」


ズズと扉が開いていきます。


「固定された宝箱だ」


部屋の奥にある銅色に光る宝箱を見て、テンションが上がります。

なにしろ初級止まりのこのダンジョンでは、いままで金属製の宝箱は報告がありませんからね。

鑑定の結果、宝箱の罠は毒ガス。

確か罠の解除に失敗すると、中に仕込んであるヤドクヘビの毒袋が破裂して、気化。空中に毒ガスをバラ撒くのです。

ダンジョンはどうやってヤドクヘビの毒袋を手に入れているのでしょうか?


「罠は解除した。開けるぞ」


毒系の罠の解除は簡単です。宝箱の中で罠を発動させたあと僧侶系の呪文で宝箱の中を浄化するだけです。

毒は体内に入らなければそれほど怖く無いのです。


細剣レイピアと水色の石の指輪。貨幣が少々と鉄のインゴット」


「指輪はブルーアパタイトの・・・解毒魔法が使える魔法道具」


細剣レイピアは急所攻撃の確率アップね」


マリさんが鑑定した結果を伝えます。ユウさん大盤振る舞い過ぎではないでしょうか?

とりあえず細剣レイピアは、地上に戻るまでの期限限定でシンさんが持つことになりました。

たぶんシンさんが買い取ることになると思いますが。


「ダンジョンの宝箱は長時間のあいだ魔素に浸すとランクが上がると聞きました」


ユウさんが教えてくれたことを伝えると、シンさんが聞いた事があると頷き、肯定してくれます。


「しかしこんな隠し扉があったなんて、底意地悪いな。この分だと、この壁に隠し扉が・・・」


笑いながら壁を叩いたフォングさんの顔色が変わります。

ええ、ユウさんの底意地は滅茶苦茶悪いんですよ・・・


「まさか、そんな・・・嘘だろ・・・」


フォングさんは隠し扉を開けるときに使ったT字金具を壁の隙間に差し込みます。

ズズっと壁が横にスライドしていきました。






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