第89話 SIDEヤエ 地下6階は構造からして変わっていました
クスノキの表ダンジョン最下層である地下6階はいまのところ脳筋階層と認定されています。
罠なし。隠し扉なし。3回戦うと最奥の祭壇部屋に到達できて、祭壇部屋に安置されているアイテムを取ると地下1階までの階段が使えるようになる。
ただし、部屋に繋がる通路が一方通行なので、後戻りが出来ないというのが難易度を上げています。
慎重万全を期すなら、HP・MPともに全回復する
「「やはりおかしい・・・」」
シンさんとマリさんが地下6階の構造が変化したことに気付いたようです。
地下5階も罠の種類が変わっていたので覚悟はしていたのですが、地下6階の通路が一方通行ではなくなっているのを見るとやはり驚いてしまいます。
「わたしたちもマッピングしましょう」
「そうだな」
私の提案にシンさんは頷きます。
罠が変化しダンジョンの構造が変わる。冒険者ギルドではこの現象を「ダンジョンが育っている」というそうです。
「転移の床!?」
部屋の探索で先頭を歩いていたフォングさんが消えたのを見て、マキちゃんとシべリくんが叫びます。
どうやら転移の床は罠判定されないようです。
「拙いな。後を追うぞ」
シンさんが躊躇なくフォングさんが消えた床を踏みます。実に漢らしい。
「いくよ」
続いてマリさんが慌ててマキちゃんとシべリくんが続き、わたしは殿を務めます。
「治療はいる?」
「「「「「要らない」」」」」
転移した先で私の問いに全員から返事が返ってきます。この辺りは連携が取れています。
「転移の床って初級中級の難易度じゃないでしょ。どうなってるの?」
「ここは発見された時から地下一階に明かりがある特異ダンジョンだし」
シンさんの言葉を切って捨てるマリさん。
「で、どうしますか?撤退しますか先に進みますか?転移床以外はいつもの6階っぽいですが」
わたしの言葉に暫し腕を組んで考えるシンさん。
ユウさんの説明からすると転移の床以外の難易度は変わってないのよね・・・
「次の部屋のモンスターを見てからにしよう」
賢明な判断だとおもいます。
「どう?」
シンさんが、扉にある鍵穴に目をつけて中の様子を伺っている斥候役のフォングさんに声を掛けます。
「姿は見えない。気配もないね。たぶん
その場にいた全員が胸をなでおろします。
アンデットはレベルが高くても対策があれば数レベル・・・いえ1ランク上でも倒さなくてもいいならなんとかなるモンスターです。
幸いなことにわたしとシンさんはアンデットに特攻のある光と聖魔法が使えます。霊系でなければ火属性の攻撃も有効です。
「攻略本情報は?」
「
シンさんの問いにマリさんが答えます。ツーカーというやつですね。
Aさんが「つぅことだ」に対しBさんが「そうかぁ」と答えたというのが語源だとか。
本当でしょうか?
「
「まあダンジョンだし・・・」
シべリくんの疑問にマキちゃんが身もふたもない返しをしています。
「はい聖水。火気厳禁で」
アイテムボックスから聖水の入った革袋・・・聖水といっても宗教会のお偉いさんが成聖した水ではありません。
聖水って、簡単にいえば神の奇跡で清められた水。つまり純度の高い蒸留水なんですよ。
で、純度の高い水なら問題ないだろって、ユウさんが発酵済ブドウ汁を75回ほど蒸留して度数を96度にしたポーランドのウォッカ「スピリタス」級のアルコールを作ったのです。
「火気厳禁すぎる」
フォングさんが革袋の封を切って、中を匂って呆れてます。どうやら中身の正体を察した模様。
「では行きましょう」
マリさんが扉を開けて、シンさんが飛び込み、シべリくんとマキちゃんが後に続きます。
続いてフォングさんとマリさんが飛び込み、わたしも飛び込みます。
中にいたのはグールとゾンビが5体。
うえっ!グールが仲間をお食事中でした!味方減らして減らしてどうするの!!?
「聖水投擲!」
「「「「「応!」」」」」
封を切られた革袋が中身をまき散らしながらグールとゾンビに当たります。
どういう化学変化が起きているのか判りませんが、グールとゾンビたちが「ジュウ」という音と煙をあげています。
人間だとすーすーするだけなのですが・・・
「効くんだ!!」
フォングさんが失礼なことを言ってます。鑑定通りなら上級聖水に匹敵するんですよ。後でお値段も教えておきましょう。
「まず片足を攻撃して動きを鈍らせろ。だが油断はするな。足がなくても動くぞ」
シンさんが指示を出します。
ゾンビは身体がバラバラになっても攻撃してくるし、頭だけでも咬まれると麻痺する可能性があります。
数が少ないときはあまり脅威ではありませんが、今回は数がいます。
「減らしますよ」
わたしのいまの職業は
そのとき取得したのが、悪堕ちした
流石に威力は本職に敵いませんが。
「死者に女神リブーラさまの慈悲を」
首にかけていた女神リブーラさまのシンボルを模った首飾りを取り出しゾンビたちに翳して慈悲を乞います。
砂が零れるような音がして、3体のゾンビが灰になりました。
「相変わらず成功率が異常よね」
「よく教会が手放したもんだ」
マリさんもシンさんも言いたいように言ってます。
まあ私の場合、ある程度の神さまパワーが調整できるので・・・
「ヤエさん
マリさんとシンさんの言葉にマキちゃんが乗っかりシべリくんが肯定します。
いま戦闘中なのにいいのでしょうか?
「先に敵を倒そうよ」
フォングさんが良いこと言いました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます