第88話 SIDEヤエ ダンジョン。改変されてました・・・
ここクスノキのダンジョンは、地下6階構造で初心者から中級者が攻略するのに適切なダンジョンです。
地下6階のとある壁に秘密のドアがあって、アリの巣+地下5階の中上級ダンジョンに通じる道があるそうです。
今回私がユウさんから個人的に請け負った
あ、父をユウさんと呼ぶのは、普段使いしてないとボロが出るのでその防止策です。
少なくともこちらの世界の父は20歳の女性なのですから。
で、地下6階の秘密のドアの発見報酬は翡翠のネックレスとアメシストの指輪です。
毘沙門ブランドの宝飾品です。
実はシンさんのご実家が主宰される新年ブトウカイに招待されたので、そのための準備。
(ブトウカイがカタカナなのは何故だろう?)
ドレスはユウさん贔屓の服飾店に丸投げしていて目途はついていたけど、装飾品はね・・・
というのもユウさんが会頭を務める毘沙門商会はいま王都でも新進気鋭のお店です。
なかでも方解石を素材とした装飾家具や宝飾の品は人気赤丸急上昇中の商品です。
設定上は義理の親子とはいえ、毘沙門商会の会頭の娘として無様は見せられないのです。
・・・マリさんの御高説ですけどね。
で、その事をユウさんに相談したら、今回の
最初はお店の宣伝になるとかなんとか言って宝飾品のレンタルを申し込んだのですが、こっちの方が気合が入るだろうと。
当然ですが性格見抜かれてます。
なお、マリさんは
不思議に思っていたら、舞踏会は社交界でのお披露目の場ですが、年頃の人には婿取り嫁取りの合コンの場だと教えてくれました。
私の場合はシンさんとマリさんに丸め込まれました。
まあ、毘沙門商会の身内と知られてから物理的なモノも含めていろいろと誘いがあり、シンさんと懇意にしてからはそういった輩が減ったことへの恩返しだからいいんですけどね。
さて、ダンジョン攻略です。
このダンジョンは中級である黄色(C)級に上がるための試験が行われる難易度です。
目安は黄色(C)級の6人パーティが最下層6階に行って帰るのに朝一番に入って日帰り出来ること。
アイテムは、使用すれば30分ほど完全防御結界が発動する休憩用の結界石は1階につき3個、6階なら余裕をみて20個。
食糧は余裕を見て2日分。回復薬は体力用MP用毒消し用を各5個。回復薬が少ないのは2階以降のモンスターから普通ドロップするからです。
これに使用すれば半日は動けなくなるけど完全防御結界が発動しHP・MPともに全回復する
これ以上のアイテムを消費するようならレベルが足りていないという事になります。
わたしは規格外のアイテムボックスを持っているのでこっそり予備の武器やキャンプ、回復薬を用意していますけどね。
このことを知っているのは、ここでは固定でパーティを組んでいるシンさんとマリさんだけです。
私を基準にして貰っても困りますから。
1階は基本弱いモンスターしかいません。怖いのは動くだけの武器を持つスケルトンや短時間の麻痺を使ってくるゾンビです。
ただスケルトンやゾンビは出てきても1体だけなので対処は簡単です。
2階からは悪堕ちしたコボルトやゴブリンが出てきます。悪落ちした人属は目に瞳がなく赤いのですぐ判ります。
手ごわいのは武器や防具を装備している悪堕ちです。
たまにスケルトンとかと一緒に襲ってきますが、少し離れると同士討ちを始めるので慌てなければ大丈夫。
3階からは罠が1か所に複数、混ざるようになりました。飛んできた石礫が仕掛け矢の発射スイッチを押すとか優しいものです。
凶悪なのは、最近、磁石を持ってない冒険者がいたという事で導入したという十字路の真ん中が暗闇+回転床の罠です。
父は古典RPGからある伝統的な罠だと言ってましたが、実際にかかってみてその凶悪さを実感しました。
方向感覚が気付かないうちに強制的に狂わせられるのです。明らかに初見殺しですね。
「どう?攻略本の進み具合は」
フォングさんに声を掛けると、フォングさんはマキちゃんとシべリくんに視線を送ります。
このダンジョンが中級冒険者の試験に採用された理由に、時間と共に確認されていたモンスターや罠が変更されるという特異点があることです。
はい。ダンマスでもあるユウさんが、よそのダンジョンを参考にこまめに調整しているのです。
父が凝ると凄いというのは、母の惚気と着ていたというコスプレ衣装からも想像できます。
「モンスターの編成が微妙に変わってる。罠の位置や種類も」
マキちゃんが攻略本に書き込みをしながら僅かに顔をしかめて報告し、シべリくんが頷きます。
うんうん。まさか暗闇+回転床の罠が公式最新版の攻略本に書かれた配置から変更されているとは思わなかったよ。
マッピングしながら進んでいてよかった。
ちなみに攻略本というのは、紙に縦20マス横20マスのマス目が書かれたルーズリーフバインダー形式のノートです。
それまでは羊皮紙に穴を開けて紐を通したものが基本でしたが、父がこの形式を導入したそうです。
バインダーの表紙が硬くて下敷きとして利用できるのと、紙、押し出し鉛筆、消しゴムのセットが便利すぎるとこれまた評判だそうです。
「初心忘るべからずだな」
後ろに広がる暗闇空間を見てマリさんが苦笑いをしました。
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