第83話 獣慶にダンジョン3号店を創ろう


「さて・・・」


志々雄たちを追い出した俺は、手に入れた店の床板を引き剥がし、地面に手をつく。

岩石創成で土を圧縮しながら地下へと続く階段を作っていく。

「チートよね」とは俺の作業を近くで見ていた嫁さんの言葉。

否定はしない。

九十九折りに四〇〇メートルほど地下へと潜り、一〇メートル四方の玄室を作り上げる。


「わたしは、ちょっと予定が早いけど、一度王都の店に戻って、それからワ国に棚卸と仕入れに行ってくる。ゲート」


ひらひらと手を振りながら、嫁さんがスキルを発動させると、空間に黒い穴が開く。


「じゃあね」


そういって嫁さんは笑顔でゲートの中に消えていく。顔は笑っていたけど目が笑ってなかった。

デートを途中で邪魔された上に中止は多分確定だからなぁ・・・・

だけど、今回買う予定がなかった拠点を手に入れたのだから仕方がない。

嫁さんのフォローは必要だけど、秘密基地ダンジョンは速やかに行わないといけないからね。


俺はクスノキダンジョンの玄室との間に「ゲート」を開く。


「お帰りなさいませ」


出迎えてくれたオールバックの白髪にカイゼル髭。

黒いスーツというお約束な執事姿の老執事ダンジョンコアウブに獣慶で手に入れた道具や武器防具を渡す。


「魔素石をお願いします」


「うん」と頷いて俺は下腹部に手を当てる。

今までは魔素石を産んでいたのが、アイテムボックスのレベルがマックスになった後に進化した。

子宮の中である程度の大きさまで育った魔素石が、アイテムボックスから取り出すように取り出せるようになったのだ。

なんというご都合主義。

多分、この先、大型の魔物を産む為の進化なんだろうけど・・・


「よろしく」


ポコリンとしていた下腹部がすっきりと凹み、代わりに両手に乗った拳ふたつ分の魔素石を老執事ダンジョンコアウブに渡す。

老執事ダンジョンコアウブは魔素石に向かい、「コピー」と呟く。

これで、老執事ダンジョンコアウブが現在取得しているダンジョンコアとしてのスキルを魔素石に刷り込んだことになるらしい。


「これをダンジョンコアとして孵すには・・・丸一日でしょうか」


老執事ダンジョンコアウブの鑑定に小さくため息を吐く。

やっぱり、一日新しいダンジョンにお籠り確定である。


「ラージアント(ワーカー)を二体選出して。悪魔の指輪であちらに移動させます」


俺の指示に老執事ダンジョンコアウブは小さく頭を下げると、僅かな時間もかからず二体のラージアント(ワーカー)が姿を現す。

悪魔の指輪でラージアント(ワーカー)を指輪の中に納めると、老執事ダンジョンコアウブから魔素石を受け取り再びゲートを開く。

ダンジョンコアが設置できる転移床テレポートは、移動元と移動先が僅かでも空間として繋がっていないと発動しない。

また、俺と嫁さんが所有している「ゲート」というスキルは、いまの所、生物はスキル所有者しか移動できない。

この辺は、是非とも進化して欲しいところだ。


獣慶のダンジョン玄室に戻り、二体のラージアント(ワーカー)を召喚すると、ラージアント(ワーカー)にひたすら広い空間を作るように指示を出す。

このダンジョンのコンセプトは、ソウキ皇国四天王のひとり、単眼巨人キュクロープの悪韋さん(同じ異世界人ということで親密度アップした結果)が所有する農耕ダンジョンだ。

クスノキの裏ダンジョンにも耕作エリアは作っているけれど、どんなに気候をコントロールしても米の品質がイマイチなんだよね。

悪韋さんから耕作データが提供されたけど、原因を探る実証実験はこれから。

バケツ稲(五〇〇万石を栽培)の収穫が始まるまでに、ある程度の形にしたいところ。


つぎに魔素溜まりのためのくぼみを作り、その上に宝石生成で大理石の玉座を創る。

この大理石の玉座。王都の毘沙門本店のショーウインドーに展示しているネタ装飾品なのだが、地味に需要があったりする。

多分、肘置きとか脚が人骨の彫刻なのが厨二心をくすぐるのだろう。

まぁこちらもノリノリで作ったのだが・・・


アイテムボックスから座布団を取り出し玉座にセット。

ダンジョンコアになる予定の魔素石を玉座の下に置くと、どっしりと座り、肘置きに手を添え、大理石の加工を始める。

この椅子は地獄門っぽいデザインにしようか。

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