第82話 獣慶ギルドとの交渉
なにしろ、現状で俺の創る方解石の製品は、あればあるだけ売れている人気商品だ。
とくに蓄光するタイプの方解石製品は、転売目的で良く転がるという話は脇に除けておいて・・・
現状、非常に手に入りにくい状態だ。
で、そんなステキ商材を、貿易で栄えている獣慶が扱えていない、扱えても値段が高いという不満が商人たちの間で上がった。
「俺たちならもっとうまく売ることが出来る」と。
また、各地の特産品に付加価値を付けて売るという職人たちの間でも不満の声が上がった。
「俺ならもっと素敵な加工をすることが出来る」と。
前者はともかく後者は気になるな・・・
で、獣慶商業ギルドは全力で方解石が掘削できる鉱山情報の収集に全力を尽くした。
でも、どんなに頑張って俺の身辺を探っても、俺自身が方解石の鉱山なんだから、情報が手に入らなかったと。
「いや、獣慶商業ギルドの全力を持って調べさせてもらいましたよ。で、出された結論が、ユウさんが、方解石の精錬スキルの持ち主だと推論しました」
って、いきなり核心をついてきたな・・・
「はは、その驚き方が何よりの答えですな」
志々雄はガハハと笑う。
なんでも、生産系ギルドの
ただ、超希少スキルであり、発現したのもドワーフだけ、精錬できるのも錫、銅、鉄なので、最初は思いもよらなかったらしい。
で、ある日、職員から宝石も鉱物ですよねという発言があったらしい。
あとは、俺のダンジョンのドロップ品に方解石があって、俺が方解石を買ってないという事実を押さえれば、俺に方解石精錬スキルがあると推測できたと。
すごいな。そんな屁理屈で俺にカマをかける気になったその度胸に脱帽だ。
「店舗と方解石はこちらで用意しますのでどうかどうか」
志々雄は深く深く頭を下げる。
そろそろ転売ヤー問題はチョットは解決しないといけない頃だったし、獣慶に拠点が欲しかったことだし、ここは話に乗っておくか。
「判った。ただし・・・」
そういって俺は取り敢えずの条件を上げていく。
俺のスキルは獣慶商業ギルドで秘匿すること。(バレてもいいが、その場合は今後取り引きはしないと暗に警告しておく)
獣慶商業ギルドが用意する販売店舗は毘沙門が買い取る。
販売店舗は街の南端を希望する。
販売店舗の代金は獣慶で販売する毘沙門の売上で賄う。(数が欲しければ考慮して欲しい)
商品販売は不定期。大きさ、質、量の要望は聞く。
税金は既定の額を納める。
店員はこちらが用意する。(ゲートで頻繁に移動するので情報漏洩を防ぐため)
獣慶商業ギルドが持ち込む方解石を適正価格で買い取る。
追加の要望は双方の話し合いで決めるということで話を終わらせる。
その後、志々雄に案内された店で「これは店の頭金だ」と、ギルドが持参してきた小さな方解石を親指と人指し指の腹で粉々に圧し潰す。
そして、宝石生成で体積を15パーセントほど減らした、50センチ20センチで厚さ5ミリの純度の高い方解石の板1枚納品する。
見た目は若い女性である俺が、方解石を二本の指に挟んでゴリゴリとを擂り潰すという光景は、志々雄の心をへし折っていたというのは別の話。
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