第81話ギルド大会議はサクッと終わる

3日間に及ぶギルド大会議という名の慰安会が終わった。

参加するまでは、この世界のネット端末であるギルド水晶があるから参加する必要ないだろうと思っていたが、意味はあった。

ギルドマスターカードを重ねることで名刺交換をしたギルドマスターと鍵付きのやり取りができるようになったのだ。

これで他のギルド職員に知られることなくやり取りができる。役に立つはずだ・・・たぶん。

あと、ギルドマスターしか読めない裏掲示板の閲覧と書き込みが出来るようにもなった。

あとは、あとは・・・ごめん。やっぱり酒飲んでいいモノ食べてバカ騒ぎしただけだった。

多忙なギルドマスターのための慰安会の面目躍如だ。

で、ここで王都冒険者ギルドのギルドマスターの東風こちとはお別れ。

なんだかんだ言って彼は忙しいのだ。

閑散冒険者ギルド万歳。

俺と嫁さんは来たとき同様に宗倉しゅうそう殿の護衛として王都に帰る予定だ。

さて、このあとの買い物に期待しよう。素材とか、ダンジョン用の宝物に利用できそうな道具や武器とか良い出物があるといいなあ。


南晩州の州都である獣慶は、関翅公が執務を行う州都城が魔の荒野のある南側に建っている。

東から西にかけて大きな通りがあり、東はワ国、西はマッサチン公国。中央は劉国と千年樹連邦の品物を取り扱う商店が軒を並べている。

建物の建築様式が、グラデーションをかけるようにワ国風から劉国風、千年樹連邦風を経てマッサチン公国風に変わっていく。

この世界の風景を建物で再現してこの通りに集めてみました!というのは中々にカオスである。

この世界の食べ物がひとつの街で食べられるのは凄いと思う。


「目ぼしいものはあった?」


「ばっちり。ダンジョン的にも自分的にもワ国の店の品揃え的も良いもの仕入れた」


イケメンダークエルフ(中の人は嫁さん)が満面の笑顔で答える。

無銘の短剣や剣。小型の盾に革の靴。毒消しや低位の回復薬。

修理に持ち込まれるもゴミ箱行きとなった折れた長剣や大きく凹んだ鉄の兜に穴の開いた皮鎧といったガラクタも買い集める。

ダンジョン低層でドロップするアイテムにはハズレもないとけないからね。

アイテムボックスがなければ山のように荷物を抱えていただろう。アイテムボックス万歳。


「あ、いた。すみませーん毘沙門のユウさんですよね?」


後ろから声をかけられ振り向くと、そこには若干デザインは違うが一目で商業ギルドの職員と思われる蜥蜴人リザードマンの少年が立っていた。


「わたくし獣慶の商業ギルドの職員で蝶寧ちょうねいと申します。お時間は取らせないそうです。獣慶の商業ギルドまでご足労を」


ああ、そういえば、余裕があれば商業ギルドに顔を出してくれって根古ニャーにお願いされていたっけ。

とりあえず商業ギルドに向かうか。


獣慶の商業ギルドは木造二階建ての実にワ国らしい造りの建物だった。

嫁さん曰く、ワ国博多の商業ギルドは石積みのマッサチン公国風だったという事なので見得なんだろうと勝手に納得しておく。


「はじめまして、毘沙門ファミリーのユウさん。儂は獣慶の商業ギルドのギルドマスターで志々雄ししおうといいます」


たてがみが真っ白な獅子人ワーライオンの老人が呵々と笑いながら手を差し出すので握り返す。

うわっ手のひらに肉球があるぞ。

ライオンだからか老人だからかゴツゴツしていてあまり気持ちは良くないが。


「時間もない事ですし、簡潔に言いましょう。ワ国の博多にある商業ギルドのギルドマスターから聞いています」

「獣慶に毘沙門の支店を作ってください」


志々雄ししおうマスターは用件をズバッと言ってきた。

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