第80話ギルド大会議の始まり


ソウキ皇との不意討ち謁見はソウキ皇と悪韋公が異世界転生者という情報で大盛り上がりした。

ただ、ソウキ皇のいた地球では、大航海時代にイギリスが欧州を統一し、そのまま現在に至るまで分裂していないという世界。

アメリカとカナダも独立することなくイギリス連邦に名を連ねる国のひとつ。

で、悪韋公のいた地球では、約6604万年前にメキシコのユカタン半島北部ではなく朝鮮半島北部に小惑星が衝突したという世界。

小惑星が衝突したところは海となり半島は島になっている平行世界からの転生者だったけど・・・


で、お互いの世界での日本のサブカルチャーの情報交換をしたら喰いつかれた。

平行世界なだけあって、色々と似た文化が花咲いていた。


例えば海賊王になるというゴム人間の少年の冒険譚(ソウキ皇の世界では主人公が少女で逆ハーレム状態)。

月に代わって悪を懲らす美少女戦士の物語(ソウキ皇の世界では転生王子が天に代わってお仕置きする5人の戦隊ヒーローモノだった)

宇宙から飛来して地球の巨大動物と戯れる銀色スーツを着た巨人の物語。

悪の組織にバッタの怪人に改造されるも組織を脱走。悪の組織と戦う男の物語とかだ。

もっとも、女子高生が各国の戦車に乗り込み学園対抗で模擬戦をする物語はソウキ皇の世界にはなかった。

ソウキ皇の世界では、世界大戦が起きなかったからだ。


「いろいろとよろしく」


俺が自分の地球の情報にリアルタイムでアクセス出来るという話をしたら、前世は2次オタクだったというソウキ皇とのホットラインが繋がった個人専用ギルド水晶を頂きました・・・。

詳しい理屈は理解できなかったが、俺が従魔のアスタルテとの間で行える視覚同調を、俺とギルド水晶との間で行えるという。

しかも水晶に記憶させることもできるのだ。

異世界ユーチューバ―の爆誕である。報酬はこの世界での最強の後ろ盾。


蛇足だが、この技術を発展応用したのが王都の入管審査で犯罪履歴を覗けるという浄玻璃鏡じょうはりきょうらしい。

脳という記憶媒体ハードディスクから犯罪記憶という情報をファイルとして取り出せると・・・マジか。


ギルド大会議が始まった。

基本的に冒険者ギルドは、ソウキ皇国、マッサチン公国、劉国、千年樹連邦の王都に本部。

州都や郡都に支部。俺のようなダンジョン前などにある出張所がある。

ギルド大会議に出席できるのは、それぞれの国の本部と支部のギルドマスター56人と退任新任のプラスαだ。


冒険者ギルドマスター慰安会は毎夜3日間続くらしいが、昼間はそれなりに真面目だ。

午前中は王都冒険者ギルドのギルドマスターに連れられての挨拶行脚。

午後からは意見発表会となる。


「ユウ・メディチさまですね」


会場に入る前に、持っていたギルドカードがギルドマスターカードなるものに交換される。

これで俺も正式に名実ともにギルドマスターだ。


ちなみに俺のカードは、冒険者クラスの黄級D級と商人クラスの青級B級と出張所ギルドのギルドマスターを意味する銅色。

ギルドカードの3色持ちは珍しいらしい。

あと、金が本部長。銀が支部長。銅が出張所長を現すとか。


「クスノキダンジョン前冒険者ギルドのギルドマスターでユウ・メディチです」


「子隷の冒険者ギルドのギルドマスターで馬頭といいます」


名は体を表す、馬頭の馬人ワーホースが差し出す銀色のギルドマスターカードと俺のギルドマスターカードを重ねる。

こうしてお互いのギルドマスターカードを重ねることで名刺交換のようなものが行われるのだ。


「方解石の魔法灯の素晴らしさは北方辺境の子隷にも聞こえてきますよ」


馬頭の魔法灯を売って欲しいという遠回しのお願いだろうな・・・


「ここで知り会えたのも何かの縁です」


機先を制すべく、俺はカードケースからピッと一枚のカードを取り出して馬頭に渡す。


「これは?おおぉ」


「王都の店にお立ち寄りの際は、この名刺をお出しください。勉強させてもらいます」


俺が馬頭に渡したのは、「毘沙門」の銘と1割引きと書かれたカード。

ただ、このカードには罠がある。

速攻で使うような人はそこで縁を切る。

カードは見せるが、そこから値切るのを交渉する人は見込ありだ。

まあ、店員と顔見知りになったあと、乾坤一擲の買い物をする時にカードを使う人が一番なんだけどね。


こうしてギルド大会議1日目の幕が上がったのである。

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