第78話ブラックドック
「サラさん。東風さん。私に一匹は任せてくださいね?」
「ああ、捕まえるのか。任せろ」
嫁さんは俺の意図に気付いたらしい。
「解った」
東風も了解してくれた。
がさがさという音と共に茂みから4頭のブラックドックが飛び出して来る。
早い!
慌てて手の中に岩石創成でパチンコ玉大の礫を創り出すと、最近手加減を覚えた指弾を放つ。
ぎゃん
後続の2頭が血飛沫をまき散らしながら派手に吹っ飛ぶ。
爆散はしてない。素材を無駄にしないための特訓の成果。
あおおぉぉぉん
茂みの奥から空気を揺らすような遠吠えが響いてくる。
これだけの音量で叫ぶとなると、かなり大きい固体だな。
「ユウさんちょっと不味い。いまの遠吠えは特殊スキル同族招聘だ」
襲い掛かってくるブラックドックを斬り伏せながら嫁さんが警告してくる。
同族招聘は、群れで生活する魔物のボスが統率する群れを呼び寄せるスキルだ。
時間と共に仲間の数を増やし、数に応じて個々のステータスを
それは同時に、ブラックドックの群れがここにいる6頭がすべてではないことを意味している。
「アスタルテ。上空から挑発してボスのスキル阻害を頼む」
「あいあい」
アスタルテがふわふわと飛んでいく。
「ふたりは馬車の近くに、柵を作ります」
嫁さんと東風を下がらせると、ぱんと地面に手をつく。
「岩石創成」
ものすごい勢いで馬車の周りを囲むように石の柱が林立する。
うん。
距離を開けて石畳を設置するのとはわけが違う。
「無理しないように」
「了解。打ち漏らしの処理よろしく」
「それは任されて」
そういうと嫁さんは弓を背負い、僅かな取っ掛かりに指をかけてスルスルと馬車より高い所にある石柱の上に登っていく。
ロッククライミング覚えたんだ。
「へいへいぴっちゃービビってる」
アスタルテが放つこの世界では通用しないハズの言葉。
何故知っているのかと聞いたところ、俺と意識同調したときに俺の記憶から拾って来たという。
そして、アスタルテが言うには、挑発は魔力で相手を不快に思わせるスキルだから発する言葉に必ずしも意味は必要ないとのこと。
魔物を相手に人間の言葉で罵っても意味はないのだから当然と言えば当然か・・・
ただ、人語を解する相手なら言葉に意味を持たせるのもアリだというから奥が深い。
がうっ
咆哮とともに茂みの上にブラックドックがジャンプする。
群れを率いるだけあって一回り大きい。
ビシュ、ぎゃん
落下するブラックドックの喉に向かって指弾を打ち込む。
どんなに地上を素早く走る魔物でも、ジャンプしたあとの落下に逆らえるはずもなく、礫は難なく命中した。
致命傷ではないが、喉を潰されこれ以上の後続は呼べないだろう。
「おお、来た来た!数20匹」
アスタルテが嬉々とした声をあげる。
多いな。
たちまち姿を現す大小さまざまなブラックドックたち。
残念だったな。餌となる馬は石柱の中だ。
アイテムボックスの中から2メートルの木の棒を取り出す。
「ひゃっはぁー!」
一番近くにいたブラックドックの頭を目掛けて棒を突き出す。
ばきっという音と共にブラックドックの頭部が弾ける。
そこから囲むことを許さず一頭、一頭、確実にブラックドックを仕留めていく。
やっぱり犬系は統率されてなんぼだな。
オルトロス,ケルベロスも体は単体だが頭は複数あるし・・・
「おいおい。これ隔離される意味があったのか?」
群れのボスである一頭のブラックドックを残し殲滅させたことを暴れられなかった東風が愚痴るが、知らんがな。
俺はアスタルテが見張るボスブラックドックの元に向かう。
喉を潰されたボスは口から血泡をこぼしながらピクピクしており、瀕死状態だった。
「悪魔の指輪」
指輪の宝石部分が瞳孔が開くようにきゅっと模様を変える。
こつんと宝石部分をブラックドックにぶつけた次の瞬間、ブラックドックは光に包まれて姿を消した。
「行けた?」
「ばっちり」
アスタルテが良い顔をしてサムズアップしてくれる。
『ブラックドックを捕獲しましたステータスを表示します』
名前ブラックドック(ボス)
性別雌
年齢10歳
種族ブラックドック
総合レベル 9
体力2/70 魔力0/20
スキル
荒地踏破Lv.1(Max):山岳地帯での移動ペナルティなし。
同族招聘Lv.10(Max):遠吠えで近くにいる群れの仲間を呼び寄せる。
統率Lv.8:群れの仲間(種族問わず)のステータスをあげる。
備考:群れを重視し敵対する相手には容赦しない。
小さい時からきちんと躾を行えば友好的な関係を築くことが出来る。
人型の種族と行動を共にすることも多い。
機動力を生かして相手に噛みつく戦法を得意とする。』
女の子かぁ
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