第75話迷宮救助隊の萌芽
「ふむ」
マリーは腰に吊ってあった
柄のところを捻ると、ガチンと片刃をずらす。
バシッと、ダイナソーに見せるように、近くにあった木の枝を払う。
木の枝がくきりと曲がり、
「さて、始めますか」
マリーは、斜めに断ち切られた長方形・・・いや、直角三角形の盾を構える。
って一騎打ちを挑むのか?いいけど・・・
「うおおおおお」
ダイナソーが
その
ぎゃん
剣と剣がぶつかり、重量感たっぷりの金属音が辺りに響く。
1回2回3回・・・
剣と剣。剣と盾のぶつかる音が鳴り響く。
「その
「うっせい!負けたら賠償金で経済奴隷堕ちなんだよ」
ダイナソーが叫ぶ。
ちなみにこの世界では、奴隷が従事するような重労働はソウキ皇が提供するワーカースケルトンやゴーレムに取って代わられている。
コストではスケルトンのほうが効率ではゴーレムのほうが段違いに高い。
なので、借金などで経済奴隷に堕ちるということは、借金を返済するために最低限の生活で長期間の年季奉公を強いられるということだ。
なお、犯罪奴隷も刑の扱いは経済奴隷と同じである。
また、賠償金の返済が終わるまで、物理的に何百年でも拘束されるそうだ。
骨になっても利用される。ファンタジー世界恐るべしである。
「いずれにせよ、この勝負。ルール違反で貴方がたの負け」
「中立の審判は居ねえんだ。重傷を負わせなければ言い逃れできるだろ」
ダイナソーの開き直った発言。
って、何のためにゲーム始める前に契約で縛ったと思ってるんだろうか?
アスタルテとの視覚同調を外し、机の上の羊皮紙を見る。
羊皮紙は契約違反であることを示す真っ赤に染まっている。
うん。間違いなく
「アスタルテ。ダイナソーいやドラゴンテール全員の有罪、確定だ」
『あい。マリーに伝える』
視覚と聴覚を同調してアスタルテに思念を飛ばすと、元気に返事が返ってくる。
そしてマリーに向かってサムズアップからの首かっ切りポーズ。
「了解」
マリーは怖い笑顔を浮かべるとダイナソーとの距離を取る。
そして直角三角形の盾を左上腕に装着していた腕輪に装着する。
しゃき
しゃきしゃき、しゃきしゃき
剪定鋏だな。
「うをぉ」
ダイナソーが上段から
さすが神の防具。当たる前にすべって
この能力は鎧にも付与されていて、おかげでビキニな鎧に三角定規の盾であっても防御力に問題がないのだ。
七度目の斬撃でダイナソーの
「はい。ちょっきん」
ぱきん
乾いた音と共に、
「な、なんじゃそりゃあああああああああああああ!」
ダイナソーの絶叫が響き渡った。
後日談
駆け出しパーティー「ドラゴンテール」は解散した。
鎧を奪われ任務が失敗したことによる罰金。
大金貨1枚(青銅貨で100万枚)を返済するため、パーティー全員で冒険者生活を返上しなければならなくなったからだ。
ちなみにソロの冒険者の収入の平均だが・・・
俺の初級ダンジョンなら、一回潜ればドロップだけで大銀貨で3~4枚(青銅貨で三万~四万枚)を手に入れる。
(クエストを受けた場合の報酬は除く)
準備に一日、潜って一日、休息に一日の三日をサイクルとし、一か月で十回潜って金貨四枚を稼ぐことができる。
これが六人パーティーなら大金貨2枚から3枚が普通だ。
これから、宿泊や食費、保有する武器や防具のメンテナンスにヒーリングポーションや毒消し、携帯食といった消耗品の補充。
情報の収集や身体のケアといった必要経費を差し引くと、だいたい収入の半分が蓄えとなる。
これが、普通の仕事をする一般人だと、一月で良くて大銀貨二枚(青銅貨で三万~四万枚)の収入となる。
「ドラゴンテール」のメンバーは、これから俺の宿屋で住み込み食事込みで働く。
六人なら情報の収集や身体のケアといった必要経費を覗けば一月で金貨二枚は稼げる。
余裕を見て、半年で完済の予定だ。
そしていま、ギルドの外では、マリーに混じって元「ドラゴンテール」のメンバー。
臨時パーティー希望のソロの駆け出し冒険者が思い思いの自主練に勤しんでいる。
これが後に、
・・・そのつもり。多分。できればいいな。
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