第66話米の国の人マリー・スパロー
小説でギルドマスターというと、元高レベル冒険者で、いつも書類の処理に追われているけど主人公には積極的に関わっている人というイメージが強い。
俺の場合は、冒険者としては現役の駆け出しで、書類は・・・あ、いつも悪いね。
書類は判子が必要なもの、優先順位が高いものから置いてあるので、ちゃっちゃと押していく。
内容は
って、昨日の書類にはないな。
つぎに個人的に興味のある案件である持ち込まれたドロップ品をチェック。
王都からここに来るまでに手に入れたとかで、ここのダンジョン産ではないものが持ち込まれることがある。
あと、俺が個人でクエスト依頼してる貴石や毛皮とかの買い取りリストもチェック。
お、ホワイトエイプの毛皮が持ち込まれているな。鎧の裏地に欲しかった・・・ああ、これを素材に籠手を安く売って欲しいのね。了解。
貴石はある程度の大きさの奴は不純物を抜く、屑石は程度の大きさに再構成。
宝石生成というチートスキルはあるけど、0から造るよりははるかに楽だし、現物があるなら習得レベル以上のものも再構成ぐらいなら余裕である。
お、エメラルドの屑石がある。いいね。
こんこん
「はい」
ドアがノックされたので返事をする。
「カリマス。よろしいでしょうか」
銀髪灰色眼のエルフ女性ブルム・ベアさんが入ってくる。
彼女は本来は王都冒険者ギルドの受付係の係長さんだけど、いまは立ち上がったばかりの我がギルドで受付の助っ人をしてくれている。
「昨日までの書類で判子が座っているのはボックスにあるよ。あと、緑茶とオカキの食レポは別にファイリングしておいてね」
「ちっ、いつも処理がはやいですね・・・」
ブルムさんがチェック用に紛れ込ませたであろうレポートを指摘すると、ブルムさんは小さく舌打ちする。
ふっふっふっ。その辺に抜かりはないのだよ。
「で、なにか急ぎの用?」
「あ、そうでした。実はいま、冒険者登録に来た新人さんが、凄いんです」
ブルムさん目をキラキラさせながら「ふんす」とか言ってる。
これはあれか?異世界モノの鉄板、ステータスが凄い系の誰かが来たのか?
とりあえず受付カウンターに顔を出す。
・
・・
・・・
おう。ちょっとマテ。
受付にいたのは、きわどい赤のビキニ鎧に身を包んだ赤毛灰眼に雀斑が目立つ白人っぽい少女。
名前はマリー・スパロー。それはいい。
腰に吊った二股二刃の剣はどうみてもハサミ。左手にある盾は三角定規。背中の槍はコンパスか?
いろいろとツッコミどころ満載である。
ステータスは・・・高いな。スキルは大陸共通言語、剣術、槍術、盾術、筋力強化。いわゆる戦士型。
鑑定を発動させる。
隠しスキルはアイテムボックス。称号は異世界転移者(米)。なるほど、なるほど。(米)ってなんだ?ああ、米の国の人なのか?
「ウエルカムトゥギルド」
下手くそな発音の英語で語りかける。
「え?英語?ふぇ~ん」
途端にマリーはポロポロと涙を流しながらその場にへたり込んでしまった。
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