第64話SIDEサラ 毘沙門ワ国店 準備
王都に戻ると娘は既に寝ていた。明日も学校が早いらしい。
ふと、以前、月神アリグナクから、この世界は夢意識がどうこう言っていたのを思い出す。
聞いたときは、寝ているときにこちらの世界に来ているのかと納得していたが、後々考えると矛盾点が多いことに気付く。
三人の寝る時間、平均睡眠時間は一定ではないし、現実世界で徹夜したり途中で起きたらこちらで活動できないことになる。
・・・まあ今更だな。
さて、ワ国の話を嫁さんから聞こうか。
「サラさまがご要望される条件に合う貸店舗です」
ワ国の商業ギルド員である
春と秋の祭。それと年末年始の参拝客を相手に縁起小物を売る小屋です。
小屋と言っても木造モルタルの瓦葺きの平屋が横並びに五軒の長屋といわれる立派な建物。
小屋が立派なのは、すぐ側まで海というか河口が迫っているからかな?
ちなみに、いまの地球の博多住吉は埋め立てが進み完全に陸地です。
一軒の間取りは、一畳半の玄関である土間に商品を展示するための一畳半の板間。障子を挟んで寝泊りできる四畳半の畳部屋。
備品は土間と板間に展示用の台とお金を収めるレジスターのようなもの。
奥の部屋にはぺらぺらの布団と
トイレは外に共同のものがあって汲み取り式!お風呂とキッチンは無し。
お風呂は10分ほど歩いたところに公衆浴場が、食事は近所の川近くに屋台が出るそうです。
もっとも、トイレが汲み取り式でお風呂とキッチンがなくても問題ありません。
必要ならゲートで戻ればいいのです。
「いいね。借りるよ」
「ではギルドに戻って契約を交わしましょう」
卯月くんがニッコリ笑う。
「戻る前にちょっと待って」
わたしはアイテムボックスを開いて座標を確定させると、中からネコの石像を取り出す。
「それは?」
「俺のツレが創った
と、適当な説明。本当はただの置物です。招き猫ともいいます。
「便利ですね」
卯月くんの興味津々の笑顔が心に痛いです。
・・・
・・
・
「以上で契約は完了です」
卯月くんに代わって、不動産手続きを行ってくれた不動産担当の
「サラさんこれを」
卯月くんが、大福帳と書かれた表紙の付いた分厚い羊皮紙を束ねた横長の帳面を持ってきます。
なにかと尋ねると、売買の勘定を自動で取引順に書き流してくれる魔法の道具らしいです。
あれですね。脱税逃れをさせない便利アイテム。
恵比寿さまという神さまの名のもとに契約が交わされるのから、脱税はほぼ不可能って聞いたのですが・・・
ああ、この魔道具が恵比寿さまの御意思ということですね。
で、この大福帳が商業ギルドの販売許可証を兼ねていて、これが店頭の見えるところにないと通報されると。判りました。
わたしは常設市場の場所を聞いて商業ギルドを出る。
お土産を買わないとね。
・・・
・・
・
常設市場は商業ギルドのある太濠から東にある長濱という場所にありました。
ちなみにお店を借りた住吉は太濠から東南、長濱から南東の位置にあります。
市場では、味噌、醤油、梅干し、海苔、精米、あと、漬物を壺で仕入れていきます。
売っているお酒は白濁した
話を聞くと
確か炭とか灰で濾すと清酒になるんでしたっけ?
過去に転移・転生するタイプの小説の鉄板ネタ。
これはお土産でなくお店に置いて炭とか灰とか貝殻とかを混ぜて濾してみましょう。
大銀貨2枚(青銅貨で2万)ほどの物資を買い込み、次々とアイテムボックスにしまいこみます。
市場で食糧を買い込み住吉にある店に向かいます。
ゲートを使わず自分の足で移動するのは、掘り出し物を探すため。
途中、漆器を扱う職人さんの店があったので、自分好みの蒔絵の施された文箱や煙管。
刃が竹の漆器塗りの脇差もあったのでこれも仕入れておきます。
立派な脇差をもっている様に見えるという見得で買う人がそれなりにいるそうです。
あと、床の間に飾れるよう鹿の角で作った飾り棚というのもついでに購入。〆て金貨3枚(青銅貨で30万)の商い。
さて、住吉の店に戻ってそこから一旦家に帰りましょうか。
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