第63話地竜来たりて その2(確保!)

すっと、心を鎮める。

地竜は通路の真ん中にいる。

地竜の足元に穴を掘って埋めれば簡単なのだろうが、今回それはできない。

老執事ダンジョンコアウブに、地竜の攻撃や回避パターンの収集を依頼されたからだ。

第2第3の地竜が襲来したときの備えは大事らしい。

あと、生け捕りしてくれると物凄く嬉しいらしい。頑張ろう。


さて、通路は、地竜の太い尾による振り払い攻撃ができるほど広くない。

なら初手は突進からの体当たりか咬みつき。

俺ならダメージが大きく時間経過で追加ダメージが狙える咬みつきを狙うな。

咬みつきにヤマを張る。もし外れても体当たりなら問題は小さい。


先に動いたのは地竜。意外に初速が速い。

狙うのは突進する地竜の前足。


バッ


棍を地竜の右前足に叩き込むが、急制動で止まり、難なく躱される。

フェイントかはたまた偶然か。


がぁ


地竜の顎が俺の足を狙ってくるが、想定していたので僅かな動作で躱して棍を口の上に落とす。


ぐるるるるる


棍の直撃を受け、ぐもった声を上げながら高速で地竜が後退する。

急制動で止まったり高速で下がったり意外に器用だな。

取り敢えず追撃のため突きを放つ。


ごっ


地竜はこれも余裕で躱す。厄介だな・・・


一気に間合いを詰める。

が、不意に地竜の喉が膨らむ。

あ、いやな予感。

嘘だろ。ブレスを吐くとか聞いてないんですけど。


地竜の口が開き、霧状のモノが噴射される。


「危な」


なんとか避ける。まさか唾を吐くとは。

いや、単なる唾じゃないだろうな。毒霧であってもおかしくない。


見た目と冒険者ギルドの情報だけで地竜とコモドオオトカゲを完全同一視してた。

気を引き締める。


ぐっぐっぐぐ


地竜が奇妙な鳴き声をあげながら喉を膨らませる。

また唾を吐くつもりか?

防御姿勢をとる。


次の瞬間、地竜が猛烈な勢いで俺の横を走り抜けていった。

・・・ってうおぃ、逃げるんかい!

足が速いのは解っていたが、逃げ足はもっと早いな。

慌てて地竜を追いかける・・・必要は無い。


ぐわっ


地竜の悲鳴のような鳴き声が聞こえる。

ゆっくりと声のした方に歩いていくと、通路で宙ぶらりんになった地竜がいた。


よくみると地竜の身体を白い糸のようなモノがグルグルと巻きついている。

さらに目を凝らすと、地竜の首のところには体長1メートルのジョロウグモ・・・

トラップスパイダーが地竜の首に牙を突き立ててこちらを見ている。

麻痺毒注入完了と・・・了解。

事前情報以外に、何か吐く。意外に賢い。という情報しか手に入らなかったな。。


『ウブ。情報は余り取れなかったが地竜を捕獲した。ワーカーを寄こしてくれ』


『はい』


老執事ダンジョンコアウブに思念を送ると、数分も経たずラージアント(ワーカー)が数匹やってくる。

ラージアント(ワーカー)たちは大顎で地竜を咥えると、軽々と持ち上げ、着た方へと運んでいく。

このままこのフロアに残るというトラップスパイダーたちと別れ、老執事ダンジョンコアウブの部屋に戻る。


「あの地竜はどうする?」


「情報を収集したあと裏ダンジョンのどこかのフロアボスに据えるつもりです」


出迎えた老執事ダンジョンコアウブに尋ねると、即座に答えが返ってくる。

生け捕りで支配下に置いた魔物は、生態情報が欠損することなく得られるのは当然だが、

経験値をそのまま保持するので育成が1から育てるより遥かに楽なのだという。

そういうことは先に言おうよ・・・


「裏ダンジョン15階がまだ手を付けてなかったな・・・」


「はい」


老執事ダンジョンコアウブが頷くのを見て、裏ダンジョン15階を1部屋だけとすることを指示。

地竜系の闊歩するフロアとする事を決定する。

うん。魔素核の生産頑張るよ。目指せジ〇ラシックパーク。

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皆様よいお年をお迎えください。

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