第59話酒が出来た。味噌と醤油とお茶漬けセットもきた

ラージアント(タンク)。容姿は体長50センチほどのミツアリ。

専用スキルはタンク。色んな液体を腹部に230リットル、ワイン樽に相当する量を溜め込む能力。

そのミツアリが裏ダンジョンの一室の天井にぶら下がっている。

その数10匹。

どれも腹をワイン樽のようにパンパンに膨らましている。


今回、ラージアント(タンク)を使って造っているのはイチゴに似た果実とブドウに似た果実の発酵酒。

それと、ラージアントが夜な夜な集めてきた謎液体の発酵酒。

日本だと1パーセント以上のアルコール度数のある酒を免許なしに作ることは違法だからな。


しかし醸造酒自体は糖分と酵母さえあれば酒に変わる。(発見は木の洞に隠して溜め込んでいた柿が潰れて発酵し酒になったものが最初らしい)

今回、異世界サバイバルキットに入れてあったワイン酵母(日本でも売ってる)をラージアント(タンク)に投入したべさせている。

また、ブドウに似た果実は炭酸ガス浸漬という急速発酵で行われているので、醸造が終わったあとには砂糖を投入し、炭酸ガスを溶け込ませ発泡酒にする予定だ。


「飲ませてくれ」


陶器で作った大ジョッキをブドウに似た果実を溜め込むラージアント(タンク)に差し出す。

ジャバジャバと人がやるとレインボー案件な光景が広がる。

マーライオンだと思えば平気平気。


色は・・・ブドウを丸ごと取り込んでいるせいか、皮の色素も溶け込んていて十分に赤く濃い。


ぐぴっ


渋みや苦味は普通のワインより少なくないな。味わいもまろやか。


ずそ


テレビでソムリエがやってた香を楽しむのだという方法で匂いを嗅ぐと独特のバナナのような香りがする。

うん。ボージョレ・ヌーヴォーだこれ。


とりあえず10リットルほど吐き出して貰って壺詰め。詰めた端からアイテムボックスに放り込む。

酵母やら乳酸菌は生き物にカウントされないらしい。

ワインモドキはこれ以上発酵させないよう約60℃で5分間の加火入れ・・・おこなうのは給湯部屋でいいな。

遠心分離や細かい濾過で酵母や乳酸菌を濾す方法もあるらしいが今回はパス。


『マスター。サラさまがお戻りになりました』


老執事ダンジョンコアウブからの思念が入った。

ワ国に出向いた嫁さんが、ワ国で誰にも見られない場所に空間転移ワープゲートの設定を終えて帰って来たらしい。

これで勝つる。


「お帰り」


お互いにハグ。


「いい物件は借りられたかい?」


「スミヨシという神社の近くにある、祭事に縁起小物を売る小屋を一月借りてきたよ」


ニコニコしながら、嫁さんはアイテムボックスから30センチぐらいの壺を3つ取り出す。

ほう。ワ国の壺か。備前っぽい壺だな蓋もついてる。


蓋を持ち上げたとたん鼻腔をくすぐる懐かしい匂い。

味噌か?味噌なのか?

それが3つ?

急いで残りの壺の蓋を開ける。おう。醤油に梅干しじゃないか。え?海苔も漬物も精米も?

煎茶の葉っぱは在庫であったよな?和の朝食だお茶漬けいけるじゃないか。

王都にもそれっぽいものはあるんだけどそれっぽいもの止まりなんだよね。

よくやった嫁さん。愛してるよ嫁さん。


がしっ


壺の中身に歓喜していた俺は、不意に背後からハグされた。


「お礼をしてもらうわ」


背後から嫁さん、いまはダークエルフ男の声が耳元で囁かれる。

俺のお尻に嫁さんのあつい棒が押し付けられているのが判る。


「ワ国で腐心ふごころ刺激されちゃった。今夜は寝かさないよ~」


マズイ。じゅんときた。(※繰り返すが頭脳はオッサン身体は乙女である)

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