第58話迫撃!トリプルジャックオーランタン(南瓜)

ネタ全開回です

--------------------------------------

日が暮れて、ジャック・オー・ランタン(蕪)が給湯部屋に戻っていった。

一日中お湯を沸かしていているので、かなりの高い室温のはずだが平気なのだろうか。

そしてジャック・オー・ランタン(蕪)と入れ替わるようにジャック・オー・ランタン(南瓜)が出てきた。


先頭のジャック・オー・ランタン(南瓜)はロングソード(といってもジャック・オー・ランタン(南瓜)にとって、だが)を手に持ち、背中にはクロスボウを背負っている。

顔に取って付けたような髭があるガイア。


2番目のジャック・オー・ランタン(南瓜)はクロスボウを構えて、背中にはロングソードを背負っている。

隻眼のマッシュ。


3番目のジャック・オー・ランタン(南瓜)は3本爪の手甲を両手に嵌め、背中にはロングソードを背負っている。

一回り大きいオルテガ。


見た目には拘ったよ。うんうん。


「肺胞ー」


出てきて開口一番、ガイアが甲高い声のマウスから襲撃されそうな雄叫びを上げる。


「やめい!」


思わず叫んでしまう。


「おう。マスターの連れの人」


ジャック・オー・ランタン(蕪)は発音が微妙ひらがなオンリーだが、ガイアは普通にしゃべっている。


「危険なネタだ以後自重するように」


「アイアイ」


ガイアはビシッと敬礼する。


「警ら、宜しく頼む」


「了解しました」


三体の敬礼に俺も敬礼を返す。

明日の晩。宿の定食に肉料理が並ぶことを祈ろう・・・



げっげっげっげっげっ

ンモーンモーンモーイヤダモウンモーンモーンモー

けろけろ、けろけろ、けろけろ

ケッケッケッケッケッ

げっげっげっげっげっ

ンモーンモーンモーンモーンモーンモー

げろげーろ、けろ、けろけろ、けろけろ


溜め池や田んぼから、いろいろなカエルの合唱がギルド館にいても聞こえてくる。

若干謎な鳴き声も聞こえるが・・・魔物系のカエルか?


今日は日を跨いでダンジョンに潜っている冒険者がいないので、ギルドの営業時間は定時の18時で終了している。

ギルドを開けているのは、王都から来る宿泊予定の冒険者が到着していないからだ。


なお、ここのギルドに9時-18時の営業時間があるのは、ここが城壁もない森の中のダンジョン横の冒険者ギルドだから。

3体のジャック・オー・ランタン(南瓜)が、毎日畑を巡回する必要があるぐらいには魔物が出没する。



窓の外。田んぼの畝の上を、3体のジャック・オー・ランタン(南瓜)が一直線になってホバー走行をしているのが見える。

実際には浮遊しての移動だが、指導した甲斐があるというものだ。


不意にジャック・オー・ランタン(南瓜)が進行方向を変える。

魔物が出たのか?


ガイアは悲鳴のような声を拾った。

マスターの連れのひとが夜半に冒険者が来ると言っていたことを思い出す。

ここも開墾が進んで、野良魔物が駆逐されつつあることは知っているが、居ない訳ではない。

後ろのマッシュとオルテガについてくるよう思念を送る。


悲鳴が聞こえた場所についたガイアは周囲を索敵する。

程なく戦闘中らしい冒険者3人を発見。

襲い掛かっているのは白い毛並みの猿。


「ホワイトエイプか」


雑食で、たびたび作物を狙って畑に侵入する討伐最優先の魔物である。

冒険者は、行き掛けの駄賃として襲われたのだろう。


ガイアは背中に背負っていたクロスボウを引き抜き、冒険者の前の空間に狙いを定める。


ひゅおー


凄まじい音が空間を切り裂く。

これでホワイトエイプが逃げてくれれば・・・ダメか。どうやら空腹状態らしい。

逃げるどころかこちらも獲物と認識したようだ。

見た目だけなら大きな南瓜だしな。

クロスボウは再装填ができないから放棄する。後で拾いに行かねば。


ガイアはロングソードを片手だけで持ち上げる。


「オルテガ、マッシュ。ホワイトエイプにJ・S・Aを仕掛けるぞ」


「おう」


「いいぜ」


ガイアを先頭にマッシュ、オルテガが一直線になってホワイトエイプに立ち向かう。

ホワイトエイプは逃げない。


ぶん


ガイアはロングソードを振り下ろすが、ホワイトエイプはこれを余裕で躱す。

ガイアはホワイトエイプの横を駆け抜ける。後続のマッシュがクロスボウの引き金を引いた。


どす


クロスボウがホワイトエイプの左肩を射抜く。

マッシュもすかさず駆け抜ける。後続のオルテガがクローを横に振るう。


ざしゅ


クローがホワイトエイプの横腹をかすめる。


「すげぇ。あれってクスノキの畑の妖魔か?」


ガイアたちの連携攻撃に冒険者の一人が叫んだ。


「いける。もう一度J・S・Aだ」


再びガイアたちは一直線に並び、ホワイトエイプに突っ込む。


ガイアがロングソードを振り上げる。

ホワイトエイプはロングソードに一瞬視線を向ける。


光よライト


ガイアが光魔法を発動させる。

強烈な光がホワイトエイプを照らす・・・が、ホワイトエイプは小さくジャンプしていた。


どん


ホワイトエイプがガイアの肩に足をかけて乗り越える。


「お、俺を踏み台にした!」


思わずガイアが叫ぶ。


火よファイア


マッシュの手から火の塊が生まれ、ホワイトエイプの顔面に向かって炸裂する。


どん


ホワイトエイプとマッシュが激突しマッシュは吹っ飛ばされる。

もし某アニメならここでホワイトエイプを援護する何かが飛んでくるのだが・・・


「もらった」


オルテガが小ジャンプしてクローを振り下ろす。

ホワイトエイプの胸に6本の爪痕が走る。


火の矢ファイアアロー


吹っ飛ばされたマッシュの手から火の矢が飛び出してホワイトエイプに直撃。


「とどめ」


ガイアのロングソードがホワイトエイプの首を刎ねる。


「おお」


冒険者が驚愕の声を上げる。


「お前たちよくやった。完璧だ」


一部始終を見ていた俺はガイアたちに最大級の賛辞を贈る。


「おお、マスターの連れの人」


ガイアたちが俺のもとにやってくる。


「好きな防具をひとつ作ってやろう」


「ひゃっはー」


ガイアたちが喜びの舞を踊る。


「すみません助かりました。クスノキのギルマスですか」


「ああ、君たちが今日の宿泊予定者だね」


リーダーらしき戦士の冒険者が目の前にやってきて頭を下げる。


「怪我の治療は・・・おお、治療士とは珍しい」


仲間に治療魔法を施している女性が僧侶の衣装、護符シンボルを身につけてないことに気付く。

この世界での治療魔法は、神の使徒なら効果は抜群だが、必ずしも神の使徒専用ではないのだ。

あとでいろいろ聞いてみようかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る