第55話インプ、アスタルテ

朝、王都ギルドからギルド水晶経由で連絡が入った。

俺のダンジョンが王都の冒険者ギルドにより、白級卒業試験の検定ダンジョンに認定されたという。

5階の祭壇にギルドカードを5分間ほど置けば踏破したと認められ、黄級に昇格する資格を得られるのだ。


やけに速い指定だが、王都からの距離が近いというのは色々と都合がイイのだろう。

死に戻りで寺院に送られたとしても、王都の寺院でなら蘇生率も高いし、再挑戦する手間もそんなにかからない。


「よし。申請の第一号はわたしだ」


「え?マスターって白級冒険者だったんですか」


俺の宣言に書類整理をしていた三毛の猫人ワーキャットマリアが驚きの声を上げる。

あ、尻尾がボワボワになってる。どれだけ驚いているんだよ。


「わたしがギルドマスターになったのは実力じゃなく、国から貰った土地にダンジョンが出現したのが原因」


「そういえばそうでした」


マリアはうんうんと頷く。


そう。この土地は、いぜん王都近くで発生した大規模討伐依頼グランドクエスト最高殊勲者MVPである俺に対して与えられた報酬である。

与えた報酬をダンジョンが出現したからといって即座に没収では都合が悪いので、俺を冒険者ギルドのギルドマスターに据えて管理させるという体裁を取ったためだ。

そうなるよう宗倉しゅうそう殿を通じて裏から手を回したのは秘密だが、


「申請はしておきますが、ソロで潜るのですか?」


「実はね・・・ちゃららちゃらー青猫ロボット効果音。小悪魔の指輪」


お約束のBGMを口ずさみながらアイテムボックスからひとつの指輪を取り出す。

王都に行ったとき、蚤の市で売られていた文箱から出てきた目玉を模した宝石のついた指輪。

鑑定したところ、インプという子悪魔を使役できる指輪で、既にインプが一体封印されている状態だった。


「ああ、カリマスの部屋に置かれたイイ感じに年季の入った机が増えたのは」


「そう。指輪を買ったときにオマケに貰った古道具」


形的には、売り主がそのとき売っていた古道具一式を金貨5枚でお買い上げしたのだが。


「で、何ですか小悪魔の指輪って」


「召喚術士でなくても魔物を従わせることのできるアイテムだよ。これにはインプが囚われている。呪いのアイテムだけどね」


そう言って目玉を模した宝石のついた指輪を右手の人差し指に嵌める。


「大丈夫ですか?」


「大丈夫。装備している間、一定時間ごとにマジックポイントを消費するだけだから」


マリアの驚いている顔を横目に、指に嵌った指輪を鑑定する。

説明書がなくても鑑定すればある程度の内容が判るというのは便利だ。


『小悪魔の指輪。

真夜中の指輪リングオブミッドナイトの情報を基に作られた簡易版。

魔物2体の使役と収納。10キロまでの物質の収納が可能。

魔物を捕らえるには、目的の魔物が弱った状態でこの指輪をかざすこと。

召喚する場合は指輪に向かって召喚する魔物の名を呼ぶこと。

装備すると毎時10ポイントの魔力が消費される、一度装備すると解呪されるまで外すことは出来ない。』


装備すると毎時10ポイントの魔力が消費され、一度装備すると解呪されるまで外すことは出来ない。

普通の人間なら魔力を枯渇させられて昏倒する呪いのアイテム。

現在魔力1万ちょっと越え、最近、魔力回復スキルを習得した俺からすると実に都合のいいアイテムだ。


続いて封印されている魔物の鑑定をする。


『名前 アスタルテ(仮)

性別 女

年齢 不明

種族 インプ

総合レベルLv.7 

職 魔法使いLv.7 

能力:飛行(地形効果無視)

能力:魔法ダメージの減少(極小)

魔法:瘴気(魔力にダメージを与える)

スキル:挑発(狙われやすくなる)』


虎児たちのときと違って、鑑定スキルのレベルが上がったせいか能力とか魔法とかスキルも鑑定できてるな。


「召喚。インプ。アスタルテ」


指輪に向かって念じると、コウモリのような羽の生えた黝い肌の赤ん坊が姿を現す。


「新シイ主カ。今後トモヨロシク」


インプは空中でパタパタと小さな羽を羽ばたかせながら頭を下げた。

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