第40話王都に店を構えよう。

新商品の打ち合わせのため、王都の商業ギルドの根古ニャーの所に来ていた俺だが、バッグというドワーフのオッサンに捕まった。


バッグは商業ギルドの下部組織である職人組合のユニオンマスターだ。

無下にしようと思ったが、とてもお世話になってる布留織親方の紹介状と根古ニャーとその同僚の取り成しを受けて話を聞くことになった。


「スライム箱の増設、ですか?」


冒険者ギルドに設置した俺のゴミ箱は、いまスライム箱って呼ばれているらしい。


「そうです」


職人組合のユニオンマスターが持ち込んできた案件は都市にありがちなゴミ問題だった。

特に職人組合に所属している鍛冶師組合からの要望が強いらしい。

というのも他の職にくらべてリサイクルできずにゴミとして廃棄される量が多い。

当然のことながら処分にかかる費用も半端ではないらしい・・・


で、最近、スライム箱で壊れた武具防具の廃棄を受け付けていることを嗅ぎつけたという。

普通のスライムは金属を食べないので、俺の設置したゴミ箱が金属を処理するとは思わなかったのでスルーしていたらしい。

もっとも壊れた武具防具を食べるのはスライムではなくダンジョンなのだが、それは言わない。


「お話、承りました。設置場所の指定をお願いします。根古ニャーさん。冒険者ギルドと締結した契約書を雛形に契約書の作成をお願いします」


「契約料は」


「わたし冒険者ギルドにも所属してるので安くできませんよ」


「ぐぬぬ」


ぐぬぬって・・・


職人組合の建物の横にスライム箱のための縦穴と地下の玄室を造成したあと、かねてから要請のあった店の予定地に来ていた。


「ここがファミリー『毘沙門』の王都店。その予定地です」


根古ニャーが腰のポーチから鍵を取り出す。


建物は既に足場が組まれたうえに、粉塵が近所になるべく撒き散らないように布で覆われている(目隠しされているともいう)。

立地は王城からみて北西。商業ギルドからはそれなりに遠いが、宗倉しゅうそう殿の屋敷からは近い。

もっとも商業地としてのランクは低い。


ガチャガチャと根古ニャーが目の前の建物の扉を開ける。

建物は2階建てで、地下に食糧用の倉庫がある元宿屋。

少々傷んでいるが柱は丈夫そうだ。


「帰りにいま一度ギルドにお立ち寄りください。この建物の権利書をお渡しします」


根古ニャーはぺこりと頭を下げて立ち去る。


さてと・・・まず外壁は石膏ボードで覆って屋根は新しく粘板岩スレートでふきなおす。

1階は壁をぶち抜き、地下の倉庫は横に2倍。それと地下2階を新たに増設する。


2階はそのまま王都で勉強している娘の居住区。1階は窯業セラミックスの鎧を筆頭に壺や皿といった陶磁器類の展示スペース。

地下1階は方解石の魔法灯や貴石を使った装飾品の展示スペース。

地下2階は倉庫を予定。


そうそう。組合ユニオンで専門の知識を叩き・・・学びに来ていた娘だが、どうゆう手違いか王立学院に強制的に入学させられたらしい。

見た目子供が、異世界で日本の中学生レベルであっても数学の知識を披露したら、そりゃあ目を付けられるよね・・・

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