第31話SIDE三者 ルーキー狩りルーキー狩られ その3

ちょい残酷シーンちょっと注意

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ブルムさんに1時間ほど席を外すことを告げ地下にそこから直通の通路でダンジョン地下6階に降りる。


「マスター。現時点での不審者のデータです」


裏ダンジョン地下6階に着くと同時に白髪のオールバックにカイゼル髭。黒い燕尾服というこれぞ老執事というお約束な姿の老人が姿を現し、静かに頭を下げる。

彼はこのダンジョン・コアでウブという。

ウブがパンパンと手を叩くと、俺の前にウインドウが開き、不審者の鑑定結果が表示される。


名前 カシン・コジ

性別 男

年齢 50歳

種族 人間

総合レベル 35

職 暗殺者Lv.9 他2職


指定公開スキル なし


称号

殺人鬼


なんだよ果心居士って有名忍術士かよと、軽く心の中で突っ込んでおく。

そういえばこの世界は有名なご先祖さまの名前にあやかって同音異義の字を当てて同じ名前を名乗るんだっけ。

とりあえず鑑定の結果が職:忍者とかシノビとかでなかったこと、総合レベルが下だったことに安堵する。

職:暗殺者とか称号:殺人鬼とか洒落にならないものもあるにはあるが、忍者よりはマシだ。うん。逃避じゃないぞ。


窯業セラミックスの鎧を装備しその上にゆったりとした黒い陣羽織を着込む。

そして棚に置いてある、こういうときのために用意したモノを手にする。

金色の二本の角に瞳、金色の牙と歯。耳元近くまで裂けたような赤い口。

日本人が見れば10人中8人は般若と答えるであろう鬼面だ。


「今回は女侍大将にしよう」


「受け賜わりました」


ウブが欺瞞というスキルで俺の姿を未確定:鎧を着た女に偽る。欺瞞はダンジョンコア専用のスキルで対象物の見た目を曖昧にするスキル。

俺も改竄のスキルを発動して名前と職業を女侍大将に変える。改竄はレベル以下の鑑定に対し偽の情報を伝えるというスキルだ。

このふたつのスキルによって俺は、ダンジョン内で冒険者に遭遇したとき、未確定:鎧を着た女と認識される。

冒険者が俺を鑑定した場合、女侍大将と鑑定される。

人間、認識し鑑定して手に入れた情報が偽情報だとは思わないものだ。


三者視点


「やあ君たち」


いきなり背後から声をかけられ、亜紀たちは飛び上がらんほどに驚いた。

亜紀たちに声を掛けたのは軽装備に身を固めた、装備から斥候と思われる男。

顔は半分以上マスクに覆われていて良く解らない。


「ソロの方ですか。何か御用ですか?」


パーティリーダーである亜紀が代表して尋ねる。


「そうだな。その前に」


カシン・コジはすっと手を払う。


「がぁ」


阿蔵と吽蔵の兄弟とマサキが短い悲鳴を上げ、その場に倒れる。

よく見ると手や顔に微かな切り傷。

男3人が両手で喉を掻き毟るように、口から泡を吐きながらその場で悶える。

顔色は土気色に変化していた。


「な、解毒クリアポイズン


慌てて亜紀が呪文を唱えるが状態は一向に良くならない。


「効かないんだなぁ」


カシン・コジはすっと間合いを詰め、亜紀の鳩尾に拳を突き入れる。

そして、すかさずマムの横に詰め寄りマムの首筋に手刀を落とす。

あっという間に二人はくたりと地面に崩れ落ちる。


「き、きゃあー」


ミケは脱兎のごとく逃げ出す。

が、あっという間に回り込まれる。

すらりとカシン・コジは腰のショートソードを抜く。


「いけないなぁ。仲間を見捨てて逃げ出すなんて」


ぺろりとショートソードを舐める。


「ひぃ」


ミケは腰を抜かしたらしく地面にへたり込む。


「何故お前だけ残したと思う?」


どすっ


「ぎゃあー」


膝頭をショートソードで貫かれ、ミケは絶叫をあげる。


「そうそう」


阿蔵と吽蔵の兄弟とマサキの懐をまさぐり、彼らのギルドカードを抜き取る。


「これで冒険者ギルドと提携する寺院に転送はできないと」


そう。ギルドカードには死亡するのと同時に死体を提携する寺院に転送魔法が掛けてあるのだ。

お金がなければ経済奴隷落ちのリスクがあるが、死ぬよりはマシである。

しかしそんな奇跡もギルドカードを装備していればの話である。

カシン・コジが行ったように死ぬ前にギルドカードを奪われると話は別だ。

ギルドカードを奪われた場合、ダンジョンに吸収されるまでに助け出さないと消失ロストしてしまうのだ。


「俺は金が大好きだから、女を性奴隷として高く売る。が、それ以上に絶望に打ち震える女の悲鳴を聞くのが好きなんだ」


カシン・コジはゲラゲラ笑いながらミケの四肢をショートソードで滅多刺しにする。

ミケは致死に至るダメージを受けても回復魔法で回復され、絶叫が途切れない。

最早ミケはひゅうーひゅうーと空気が抜けたような呼吸音しか漏らしていない


「さてと」


かちゃかちゃと音を鳴らしながらカシン・コジはズボンのベルトを外しズボンをずり下す。

ぼろんとなんと立派なマーラー様。

ミケが身につけているローブをたくし上げ、色気の乏しいパンツをずり下す。

だくだくと流れる血に舌を這わして愉悦を浮かべる。


かしゃん。かしゃん。


不意に通路から金属のこすれる音が響いてくる。


「ちっ、もう一つのパーティか?」


カシン・コジは慌ててズボンを履きなおすと、ショートソードを構える。


影に入るハイドインシャドウ


カシン・コジはスキルを発動させて部屋の陰に潜む。


かしゃん。かしゃん。


やがて惨劇の場所に鎧の上にワ国由来の着物によく似た布のローブを着こんだひとりの女戦士が現れる。

金色の二本の角に金色の瞳。顔色は蒼白く耳元まで裂けた真っ赤な口から見える歯は鈍い金色。

鬼人。カシン・コジは直感でこのモンスターがこのダンジョンの上位モンスターであると判断する。


「ふむ」


腰に吊ってある瓢箪を手に取って栓を抜き、中身を虫の息であるミケに振りかける。

淡い光がミケを包み、空気が抜けたような呼吸音は安定したものに変わる。

中身は回復薬のようだ。


「こっちの3つは死体で、こっちの二人は気絶か」


女戦士はパチンと指を鳴らす。

やがて、カシャカシャカシャカシャという乾いた音が鳴り響き6匹のラージアント(ワーカー)が現れた。

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