第26話ファミリー登録 その1


布留織親方の所で服の採寸をしてもらい、冒険者ギルドに顔を出して嫁さんと娘の冒険者申請を済ませたところギルド職員に呼び止められる。


なんでも、ギルドマスターの権限で俺の冒険者ランクが3階級昇進させるので講習会を受講するようにとのお達しだった。


階級昇格に必要なポイントは権限で満たせるが、講習会の免除は出来ないらしい。

俺が白級冒険者になれば無級の嫁さんと娘でも俺の支配する初級ダンジョンに潜れるようになるのでこれは願ったり叶ったりだな。


講習会は、一級下の嫁さんと娘も受講可能だ。講習履歴はギルドカードに記録されるので先に受講する駆け出し冒険者も多いらしい。


「以上で、黒級冒険者の講習会を終わります。更新されたギルドカードは出口で職員から受け取ってください」


冒険者ギルドの職員が、ギルドカードの入った箱をドンと机の上に置く。

三十人ほどいた冒険者が席を立ち、職員に自分の名前を告げてギルドカードを受け取っている。

まるで自動車免許の更新・・・いや、講義内容からしても自動車免許の更新と大して変わらないか。


講習内容は、黒級冒険者から受けられる仕事クエストの狩猟・初級ダンジョン探索についての基礎知識である。

まずはダンジョンに籠るための道具。

例えば、夜営のときにモンスターを寄せ付けないための結界に必要な道具と結界の張り方。

時間の経過を教えてくれる魔法の水晶。

水を濾過する方法や飲料水をつくる生活上位魔法(習得するにはかなりお金がかかる)に、飲料水をつくる魔法道具の存在。

魔法の袋の種類やアイテムボックスという冒険者どころが商人垂涎のレアスキルの存在。


狩猟は、モンスターの血抜きから解体方法。高く売れるモンスターの部位。希望者は別途、有料で実習を受けることが可能らしい。

そして罠の設置から罠の探し方、簡単な解除方法。

なるほどこれは勉強になった。

そして受講する駆け出し冒険者が多いのも納得だ。

というか最初から教えて欲しか・・・いや、俺のデビューが派手過ぎて端折られたか?

高額賞金首の野盗殲滅だもんなぁ。

白級冒険者の講習会は、明日の朝からだそうだ。


商業ギルドに到着した俺たちを、担当の猫人ワーキャットの根古ニャーが手招きする。


「どうしました?」


「昨日、委託してくれてた魔法灯の売上がギルド既定の額を超えたのでランクが上がります。申請しますか?」


根古ニャーは、鼻の穴をピスピスさせながら尋ねてくる。

どうやら担当したギルド員が昇格すると担当職員にも恩恵があるらしい。

断る理由もないので申請書にサインする。


「で、今日はどのような御用で」


「うちの商店に二人ほど店子の登録をお願いします。二人とも冒険者登録はしました」


「あーはい判りました。カードの提出をお願いします」


根古ニャーは、三人のカードを受け取ると代わりに書類を差し出す。


いま手続しているのは嫁さんと娘を俺の商店所属の冒険者。店子ファミリーにすることだ。

こうすることで嫁さんと娘は俺が商業ギルドに登録している店の店子ファミリーになる。

ファミリーは最低でも2つの異なるギルドに所属する3人のメンバーから結成できる複合組織だ。


メリットば所属すれば俺から冒険者ギルドに出す仕事依頼クエストを優先的に受ける事が出来るようになる。

身もふたもない言い方をするなら、大家が手数料を払って店子のために冒険者ギルドのギルドポイントを買う。

素材をファミリーから安く手に入るし、ギルドの登録料は少しお得になるし更新のときの手続きが簡素化されたり10年間修める税金が優遇されたりもする。

ファミリー結成には結成を請け負う後見人と委託金を登録するギルドに納める必要がある。俺の場合はどちらも条件を満たしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る