第25話王都で合流


「では新しく発見されたダンジョンはユウ・アクイ・メディチ殿の管理下とすることで異議なしとします」


鹿のような角に艶やかで硬そうな顎鬚。額や喉といった急所や肩から手の甲にかけては硬そうな青くメタリックな鱗。

背中には大きな蝙蝠のような羽。英国執事のような濃紺の燕尾服に身を包んだドラゴンバトラーの宗倉しゅうそう殿が宣言する。

「では新しく発見されたダンジョンはユウ・アクイ・メディチ殿の管理下とすることで異議なしとします」


鹿のような角を持ち、額や喉、手の甲には髪の色と同じメタリックブルーの鱗が僅かに浮かんでいて、背中には蝙蝠のような羽。

顔は人族の特徴が色濃く出ているドラゴンバトラーの青年関平さまが宣言する。

すると、筋骨隆々で左目に眼帯をした虎頭の虎人ワータイガー。王都の冒険者ギルドのギルドマスター東風こちさん。

恰幅のいい白髪の人間。王都の商業ギルドのギルドマスターのスコッチさん。

東風には一歩譲るが逞しい筋肉を持つドーベルマンな風貌の犬人ワードックで王都の守護騎士団団長ゲパルトさんの3人が無言のまま頷く。

俺は大きく頭を下げて感謝の意を表す。


王都から来たモンスター討伐隊は、ダンジョン探索隊と名前を変えて、俺の創ったダンジョンに潜って行った。


ただ、通路や部屋など構造は立派なものの地下4階まで踏破しても遭遇したのはスライムや大鼠といった雑魚ばかり。

ドロップ率もドロップ品も悪く、かつて存在し、なんらかの原因で再生したばかりのいまのところ利用価値のかなり低い初級ダンジョンと認定された。(予定通り)

本来であれば、ダンジョンは国が所有し冒険者ギルドが管理ということになるのだが、国としては、褒美として与えた土地を取り上げて冒険者ギルドに委託するのは如何なものかと苦言が出た。

無論、俺が関平さんを通じてあれこれ裏から手を回してもらったのが原因だ。

また、下手に俺の機嫌を損ねさせて他国に出奔されては困ると商業ギルドから陳情もあったのも大きい。

こっちは根古ニャーさんに愚痴っただけでギルド長まで上がったので手を回すまでもなかった。


結局、書類上のダンジョン所有は劉国。ダンジョンの管理は冒険者ギルドが請け負う。

そしてダンジョン前に冒険者ギルドを作り、俺をギルド長に指名して管理を委託するという形になった。

土地の有力者を局長に家を郵便局にした大昔の郵政省(偏った情報)の手段だ。


そのため俺の肩書に王都冒険者ギルドの出張所の見習い職員(ひとりだけなので仮のギルドマスター扱い)。ついでに商業ギルドの見習い買い取り職員というものが付いた。

この肩書でダンジョンに入る冒険者の出退を名簿で管理して、ダンジョン産のアイテムを買い取ることが出来るようになったのだ。

ちなみに後者は鑑定スキルLv.3を保有していることを申告し確認されたのが理由である。


「なんか凄いことになってるのね、父さん」


目の前で甘茶の入った木のコップを啜りながら、緑色の瞳に赤みの強い金髪ショート。

明るい灰色の肌に短めの笹穂状の耳をもつハーフダークエルフと呼ばれる種族の少女が呟く。


「八恵ちゃん…父さんはやめてちょうだい」


隣りに坐っている黒い瞳に赤毛。青みを帯びた黒色・・・いわゆる黝い肌に長い笹穂状の耳をもつダークエルフのイケメンが苦笑いしながら嗜める。


「女言葉が端々に見える、サラも人の事は言えないけどね」


俺も一応、嫁さんに対して釘を刺す。

そう。今日、俺たち家族は王都で感動の再会を果たしていた。

そしてこの世界に転移してからの苦労話のお披露目会が終わったところである。


「で、設定はどうするの?」


こういう世界にはまったく縁のなかった娘の八恵が尋ねてくる。


「家族でいいよ。下手に繕っても仕方ない。まぁ、見た目の関係で俺は旦那サラの後妻で八恵は義理の娘が無難だろうけどな」


八恵の視線が冷たいが無視する。

夫婦と実子の設定だと小児性愛者のエロフと未成年での妊娠経験者。その愛の結晶という特殊な薄い本案件になってしまう。


「この後は冒険者ギルドに冒険者申請と商業ギルドに店子登録だな」


あとは布留織親方の所で服の採寸をしてもらって宗倉しゅうそう殿のところにアポ取り。

やることが多いがひとつづつ潰していくしかないな。

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